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私の物語のはずなのに・・・

最後、アリッサ視点です。うまく纏まらなかった。

私は小さい頃から不思議な夢を見ていた。それはとても不思議な・・・



夢の中の私は可笑しな服を着ていた。あんな短い・・・足を露にした格好で人前を歩くなんて有り得なかったけど、周りを見ればみんな同じような格好をしていた。夢の中にも学校があって私はそこに通っているようだ。でもその私は誰とも仲良くなくて一人で本を読んでいた。その本は俗に言う恋愛小説で、とりわけよく読んでいたのは所謂トリップ小説や転生小説だった。可愛い主人公が美しい男性達に愛され幸せになる物語に私は夢中になった。私もこんなふうにたくさんの男に囲まれて暮らしたい。夢の中の私はそんなことを日々思いながら生きていた。



そんな現実に生きているようで生きていない私はとある1冊の本に出会う。そのタイトルは霞んで見えないけど、表紙だけははっきり覚えてる。4人の美しい男に囲まれる美少女・・・挿し絵ではそれぞれの美しい男に迫られるというなんとも羨ましい光景が描写されていた。この少女に・・・私はなりたい。そしてこの男達を侍らせて幸せになる。ここで夢は終わった。




夢から覚めれば私はただのアリッサになった。孤児院暮らしの可哀想なアリッサに・・・



「私に養子縁組の話が?」



孤児院の院長が私に、ある子爵家の当主が私を見初め是非にと言ってきたと伝えた。そこで私は気づいたの。夢で見たあの小説にそっくりだって。あの小説の内容はこうだった。幼い頃から孤児院で育った主人公はとある子爵家に引き取られ子爵家令嬢として学校に通う。そこで4人のヒーローと出会い恋をする・・・



まさに私の今の状況と同じだった。そこで私は気づいたの。あれは夢ではなくて前世の記憶だって。前世でこの世界に生まれたいと願ったからきっと神様が叶えてくれたんだと。もうそうだと思い込んでしまった私は小説の通りに喜んで子爵家と養子縁組をした。父親になった子爵家当主は私を甘やかしてくれたわ。可愛いものや綺麗なものをたくさん与えてくれて、もともと可愛い私はもっと可愛くなった。そう、あの小説の主人公のように。父親に学校に行ってみないかと言われたときは二つ返事で返したわ。だってそこに行かないと私は彼等と恋ができないもの。



学校に通いだした私は勿論彼等を探したわ。だって私の恋のお相手だもの。学校でも一際目立つ彼等はすぐに見つかったわ。だって私と彼等は出会う運命だから。私は小説の通りに行動したの。彼らが好きそうな言葉を並べて私に興味を持たせるように仕向けたわ。そうしたらやっぱり彼等は私にある程度の好意を寄せてくれた。だから私は満足してリュート君を除く3人を公平に・・・違うわね。取り分け爵位の高いアルフォードを優先して接したわ。でも大丈夫、ロッシュもナルガも私を好きだから少しくらい構わなくても気持ちはどこにもいかないわ。それがただの自惚れだと気づかされた。クラリーチェ・アストロフという、一人の名だけの登場人物によって・・・私は、まさか小説に名前しか出なかったクラリーチェ・アストロフにすべてを奪われるなんて思いもしなかった。ここで主人公の私に出会って冷めた心を溶かすはずのリュート君は最初から彼女にしか見向きもしないし、アルフォードはいつの間にか彼女を愛しげに見つめているし、ロッシュは距離があったようにも感じたしナルガに至っては私のことはただのおもちゃにしか見ていないなんて・・・可笑しい・・・こんなはずではなかった。いつから・・・上手くいかなくなったのだろうか。



「私がこの小説の主人公だったのよ・・・これは私の物語なのに」






私の思い描いた結末に似た幸せに囲まれた彼女を遠くから眺めながら、悔しさから唇を噛み締めた。


たまに夢がリアルすぎて現実と区別できないことはありませんか?アリッサも夢がリアルすぎて本当に体験したと思い込んでしまったクチです。子爵家からの養子縁組打診→これどこかで見たような→夢で見た小説にそっくりじゃね?→じゃあこれってあの小説なんじゃ→もしかして私転生した‼→私はヒロインだ!!の流れですねはい。ちょっと無理がありますがリアルはこんなもんです。夢って自分に都合がいいものばかりですからね。これにて本当に完結です。ありがとうございました。

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