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天然令嬢、自称ヒロインと対決するその2

続きです。安定のアリッサの虚言癖。アリッサは転生者ですか?いいえ、彼女は普通の人です。

「まず、アリッサさんはアルフォードさん、ロッシュさん、ナルガさん、リュートを好きということで間違いはないでしょうか」


まずはここですね。


「当たり前よ。なに馬鹿なこと言ってるの?」


アリッサさんに鼻で笑われてしまいました。


「では次です。アリッサさんはこの4人の殿方の誰かとご結婚を望んでいるのですか?」

「そうね。できればアルフォードがいいわ。彼は公爵家次期当主だし」


ではとりあえずアルフォードさんを本命ということにしましょうか。


「例えばの話です。アルフォードさんとアリッサさんが見事結ばれたといたします。そうすれば他の殿方は勿論アリッサさんと結ばれることは叶わなくなり他の貴族の令嬢と婚姻を結ばれることでしょう」

「それは駄目よ」


ここで私とアリッサさんの見解に差が生まれました。


「駄目と言うのはどういうことでしょうか」

「だって彼等は私を好きなのよ?私以外と結ばれては駄目よ。そうね、側妻くらいなら許してあげるけど」


私はアリッサさんの発言に軽い目眩がしました。


「アリッサさん・・・もしアルフォードさんとご結婚されたら貴女は他の方に情を移すことはしてはいけないのですよ?それはアルフォードさんへの裏切りです。それに例えその関係が赦されたとしても側妻の立場になるのはアリッサさんです。世間がそれを赦すとは思いませんが」


特に貞淑を重んじる公爵家は彼女のその考えを絶対に赦さないでしょう。彼女だけではなくご実家までも取り潰しは目に見えています。


「アリッサさんが本当にアルフォードさんをお好きなら、他の殿方ははっきりと見きりをつけるべきです」



本当にアルフォードさんを愛していらっしゃるなら容易いはずです。しかしアリッサさんには通じていないようです。


「貴女の言ってることが理解できないわ。好きなら好き、それでいいじゃない」



駄目です。どうしても分かっていただけません。確かにお互いが好きで結ばれることはとても幸せでしょう。それが1対1であればです。ですがアリッサさんの場合は1対4で進行していようとしているのです。


「私が幸せなら皆も幸せ・・・それでいいじゃない」

「それが幸せには私は見えません」


どうしても誰かが不幸になる未来しか見えません。どうしてアリッサさんはあの4人に拘るのでしょうか。


「貴女の言いたいことは結局、私が彼等に相応しくないって言いたいんでしょ?」

「そんなことは一言も言っておりません。ただアリッサさんの言っていることは彼等を不幸せにするのではないかと思っただけです」


私がはっきりとそう言えば、アリッサさんは怒りで顔を真っ赤にしました。


「酷いこと言わないでよ!!分かったわ・・貴女悔しいのね!!私が彼等に愛されてることが。そうよねぇ、あんな素敵な男は滅多にいないもの」


そういえばいつの間にかアリッサさんの発言に矛盾が生まれています。最初は私のせいで彼等が離れたと怒っていたのにいつの間にか彼等はアリッサさんを愛していると言うことに刷り変わっています。うっとりとしているアリッサさんにどう返答しようか迷っていると、閉められたドアが開いて渦中の人物が入ってきたのです。


「ちなみに僕は君のことなんてこれっぽっちも好きじゃないよ。天地が引っくり返っても君と結婚なんて有り得ないから」

「リュート君!!」


ぐいっと私の腕を引いて自分の方へ引き寄せるリュート。やはり言葉がかなり酷いです。



「話は聞いてたよ。なにがどうなったら僕が君を好きなのかまったく理解できないよ。あれだけ逃げられて本当は照れてるだけなんて・・・勘違いもいいとこだよ。鳥肌立っちゃうじゃない」


ぶるりと震えるリュートの首が総毛立ってます。本当に嫌だったのですね。


「それにさ、あのいけすかない公爵嫡男と結婚したいとか言いながら他の男も手放さないなんてどれだけ自信過剰?大体、子爵家が公爵家と婚姻を組むなんて奇跡がおきない限り無理でしょ。ほとんどが男爵、よくて伯爵だよ。まあ、実力があればのしあがれるのが世の常だけれど、今現在君の家にはそこまでの価値はない。君の家が公爵家にとってよほど利益があるならまだしもねぇ・・・やはり現実を見ると無理だろう」

「リュート君!!愛に家柄は関係ないわ!!愛さえあればアルフォードもリュート君も幸せにしてみせるわ!!」


えっと、アリッサさん・・先程貴族の娘は家の為に嫁ぐ方が常識的なことを仰いましたよね?私は展開の早さについていけません。



「なら更に駄目だね。だって僕はこれっぽっちも愛しちゃいないんだから。家に利益も与えない、愛情もない、僕に君と結婚する必要まったくないよね?他の彼等がどうかは知らないけどね」


痛い・・・痛いです。アリッサさんに言っている言葉がズキズキと私にも刺さります。



「君はどうなんだい?彼女は君と結婚したいそうだけど」

「アリッサ、申し訳ないが俺は君と結婚するつもりはない」

「アルフォード!!」


アルフォードさんまでいらしてたのですか。このぶんだとロッシュさんとナルガさんもいらっしゃるのでしょうか・・・


「どうしてアルフォード!!私のこと可愛いって言ってくれたわよね?それって私を好きってことでしょう?」

「確かに可愛いと言ったことはあるが、それは女性に対する誉め言葉で深い意味で言ったつもりはなかったんだ・・・」

「う、嘘よ!!」



アルフォードさんの言葉にショックを受けるアリッサさん。男性が女性を誉めるのは確かに社交辞令です。ですがアリッサさんはアルフォードさんが自分に好意を持っているから言ってくれていると思っていたのです。それ故にその衝撃は大きいのでしょう。


「アリッサのことは確かに俺の周りにいないタイプで興味は湧いたがそれと結婚は別なんだ。俺は次期当主として家の為になる相手と結婚しなければならない」

「でもそこに愛はないんでしょ?なら私が・・・この際側妻でも構わないわ!!私が貴方を愛してあげる!!」


ピクリと、アルフォードさんの眉が上がりました。


「この俺に醜聞を晒せと言うのか?そんな世間体の悪い関係を俺が望むと・・・本気で思っているのか?もしそうなら俺のアリッサへの評価は間違いだったんだな」


凍りついてしまいそうなほどその視線は冷たく、あのアリッサさんも若干震えています。



「アリッサ・・・君に過度な期待を持たせたのは俺にも非があるのだろう。それは謝る。だが曲がり仮にも子爵家令嬢の君はその辺りの常識を知っておくべきだった。そうすればあの2人のどちらかが君の夫となることもあったかもしれないのに・・・」

「2人?」


ロッシュさんとナルガさんのことでしょうね。そうですね、家柄でもアリッサさんを迎え入れるのにほとんど障害がないと言っていいでしょう。


「君は多くを望みすぎている。よく周りを見てその考えを改めてくれ。」

「・・・・・」


ふるふると肩を震わせるアリッサさんにアルフォードさんは優しく語りかけます。それは彼女を傷つけてしまったアルフォードさんなりの誠意なのでしょう。これでアリッサさんがちゃんと自分を見つめ直してくれることを私は切に願います。



「・・・そう、分かったわ。ごめんなさいアルフォード、それとリュート君。私が間違っていたみたい。次は気を付けるわ」


愛らしく笑って資料室を出ていくアリッサさん。その笑顔が私には少し怖く見えました。



「なんだろ・・・すごく嫌な予感がするんだけど」

「分かってくれなかったか・・・」



この時のリュートの嫌な予感は当たっていました。まさかアリッサさんがあんな行動を起こすなんて、さすがのリュートも気づくわけありませんでした。

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