クラリーチェと図書室の君
今回は短いです。そして10話で終わるつもりが終わらないことに気づきました。
「すみません、本の返却をお願いします」
私は背を向けてなにやら作業をしていらっしゃる方に向かって話しかけました。
「はい・・・ああ、君だったんですね。どうでしたその本」
振り向いたのは前回貸し出しの処理をしてくださった男の方でした。彼は私に本の感想を聞きながら手際よく手続きをしてくださいます。
「とても切なくて私、胸が締め付けられる思いでした」
「そう、君はそういった話が好きそうですね」
そうですね。心温まる物語もドキドキハラハラの冒険物語も好きですが、切なくて涙が溢れる恋愛物語が一番好きですね。実際に体験したいとは思いませんが。
「なら、この話がお勧めですよ。僕もこういったものが好きなんです・・・男が恋愛ものを好きだなんて変だと言われますけどね」
「どうしてですか?誰がどんなものを好きかなんて本人の勝手ではありませんか。それに、沢山の恋愛を見ていれば誰かを好きになったときに役立ちますよ。相手を傷付けないですみますから」
私は彼からお勧めの本を受け取りにこりと笑います。彼は一瞬目を見開いた後、柔らかに微笑みました。
「そういう考えもあるんですね。ありがとうございます、お陰でなんだか胸がすっきりしました」
私はなにもしてませんが、胸にあったものがなくなったのなら良かったです。
「その本の感想を、今度聞かせてください。まだまだ貴女に見ていただきたい物語は沢山あるので、またここに来てくれるのを待っています」
「ありがとうごさいます。楽しみにしてますね。ちゃんと感想も考えておきます」
また一人お友達ができました。彼のお勧めの「魔法使いと願い事」という本をしっかりと胸に抱き、私は図書室から伸びる廊下を歩きました。
そういえば折角お友達になったのにお名前を聞いていませんでした。次に会うときにお聞きしましょう。
次回は図書室の君から借りた「魔法使いと願い事」をお送りします。ええ、ただ書きたいだけです。




