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COYOTE Harvest Moon [1][2]
時を駆け、季節を通過していく。その最中、動物達は知らせ続けた。なくならない侵入――違法狩猟の存在を。
現れる者から立ち込める臭いに、憤りを感じてきた。血の騒めきは治まることを知らず、猟銃を構えて卑しい笑みをする彼等を捉えては、声と光を使って脅し続けた。
だが、いつからか、身体は一線を超えようとしはじめた。周囲の動物達に襲わせるよりも先に、自らの手が出るようになっていた。森に鋭く漂う、嘘と強欲の臭い。夜を迎えた頃にだけ、彼等は仮面を外してやって来る。狩った命の数だけ、世間体と地位を引き上げるのだ。
まるで糸で操られるように、首が勝手に向き、彼等をすぐに捉えた。確実に噛みつくために、狙いは自ずと、銀の眼光で定められていく。全ては肉体が――細胞が、滑らかに誘導していた。
影になりすまし、木々を縫いながら、臭いものを放つ存在を追った。そして、照準を合わせようとした瞬間、威嚇で怯ませた。その後、導引していた動物達が一斉に、彼等を襲いにかかる。噛みつき、啄み、引っ掻き、その肉体を壊し続けた。
手放された憎らしい猟銃を目にしては、2度と使わせまいと踏み潰してきた。その重さや硬さに触れるにつれ、手が、腕が、脳が囁くようになった――穴を開けてやれ、と。
この手で消してやりたい――胸に熱く渦巻く感情に、口角が上がった。その場が、苦痛の叫びと血の臭いに満ちていくにつれ、快楽が体毛を煌びやかに逆立てた。
ところが、いざ手を下そうとすると、何かが身体を縛り、動きを遮って来た。
“殺さないで”――そんな呟きが、耳のずっと奥から不意に聞こえてくる。それが当たり前になっていった。
それからも、自らの意志を引き継ぐように、動物達はこの眼光と声を聞きつけ、違法者達を狙い続けた。夜の森に一時的に生まれる光――銀の瞬きが地上に集まり、地上に銀河を描くようだった。
鹿や熊までもが手を下すようになると、猟師達はいよいよ命乞いをする。負わされる傷口から、欲の臭いが血に混ざって流れ出る。その光景に、胸の奥が悦びに疼いた。それが、生きるということだった。
身体に獣の声が馴染み、もはや、人間であったことすら曖昧になりはじめた。胸で燃え上がる何かは、常に全身を巡り、獣としての生き方を擦りこんできた。
しかし、それに抗える瞬間が訪れるようになった。ふと吹く風のように、唐突に。
ある日、動物ではない声――否、あらゆる“音”が、香りを絡めながら漂うのを感じた。木々や芝生、風そのものが立てるものではない、聞き慣れない妙な音だ。それに何故か耳を惹きつけられ、足は、とある公園に誘い出された。
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