表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
*完結* Dearest  作者: Terra
In Full Glory ~完全なる開花~
81/133

16




 片や、受付スタッフは、記者を名乗る男性と話していた。相手は少々強引で、自ずと身構えてしまう。



「どうかアポを取って出直しを。取材の場合、そういう規則です」



「それは申し訳ないと思ってる。でもご存知でしょう、この病院の医師が姿を消した。今や、彼の家族は世間に広く捜索を求めてる。我々も、新たな糸口になりそうなものがあると、それを掴まないはずはない。失踪中の彼のためにもね。それが仕事なんで」



 ぐずぐずしていられないでしょうと、記者はカウンター奥の内線に視線を流した。しかし受付スタッフは、記者から目を離さなかった。



「ここは患者様優先の場所です。ビジネスということであれば、別で設けている番号がある。こちらにかけて、出直しを」



「ステファン・ラッセルの検査の件で、言えないことでもあるんですか?」



「しつこいぞ」



 受付スタッフの態度を見た途端、記者は薄ら笑みを浮かべると、声を荒げるのかと、静かに煽った。その時――誰かに肩を取られた。

 記者が振り向いたそこに、ステファンの恩師と、ゾーイから通報を受けた看護師がいた。



「病院ではお静かに。記者であれ何であれ共通ルールでしょう。警察を呼びますよ」



 咳払いをした記者は、受付スタッフを横目に見る。



「先に騒いだのは誰かな」



 彼はいやらしい笑みを引っ込めると、再び前の2人に向く。恩師は僅かに記者を睨むと、淡々と告げた。



「直接来られたのなら、案内ができていなくて申し訳ない。お求めの件なら、当院は記者に直接話しをするつもりはない。必ず警察を通じてやりとりするとしている。お引き取り願う」



「いなくなった医師が森をうろついてると仮定した場合、どう考えます? 本当に検査に異常はなかったんですか? オペミスは?」



 構わず問い質す記者の腕を、恩師は溜め息混じりに掴むと、エントランスまで引っ張った。それでも、記者は止まらなかった。



「今朝、彼の自宅が落書き被害にあったんですよ。あれは、なかなかデカかった。そこには“獣”と書かれていた。貴方がたや警察は、他に何をご存知で?」



 恩師は記者を突き放すと同時に、睨みつける。



「大きな声が好きなら、原っぱに行くか。ほら、リードは外してやったぞ。誠意があるなら、アポを取って別の担当者を寄こすんだ。そしたら適した場所をやる。どうだ、まるであんたが好きな獣みたいで、いいだろう。何を言っても無駄だ。とっとと帰れ」



 恩師が立ち去るのを、記者はそれ以上引き止めず、その姿が見えなくなるまで目を光らせていた。








Instagram・Threds・Xにて公開済み作品宣伝中

インスタではプライベート投稿もしています

インスタサブアカウントでは

短編限定の「インスタ小説」も実施中


その他作品も含め 気が向きましたら是非



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ