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魔王はリア充を滅ぼしたい  作者: 藤原ゴンザレス
第3章 産業革命編 頑張ったけど街が消滅しちゃった……もう自重しないもんね
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被害者 → 武器屋

 パレードで晒し者にされるという羞恥プレイに耐えたあと、王様との謁見しました。

 といっても義父(予定)ですのでカジュアルな感じです。


「隣の領地あげるよ。好き放題育ててね。ついでに今日から君はセシル伯爵ね」


 なにそのテキトーな話。

 しかも領地を地図上で確認したらひ、広い……100万へタールはありそうです。


「うんとねー。仲の悪い隣の国との境だから、わざと魔物と犯罪者だらけにしてるんだけど」


 魔物さんで防壁とか。

 さりげなく黒い。

 鬼か!

 ちなみにこの場合の魔物というのは有害鳥獣とほぼ同じ意味です。


「最近関係改善してね。それでいざ交易しようと思ったら魔物どうしようって話になってね。そしたら領内の魔物被害をゼロにした領主がいるじゃない。誰かなと思ったら婿(予定)のアレックス君だったわけ」


 うちの領地の魔族さんは採掘や建設の現場、運送それに自動車学校などで大活躍してます。

 大型車両や工事車両を華麗に扱う彼ら。

 もともと気性も穏やかで腰も低いため、うちの領地ではあっという間に受け入れられ、誰も疑問に思うものなどいません。

 給料も満足に与えられているので人を襲う必要もありません。

 (もともと山奥で細々と農業してただけの連中ですけど)


 ですので有害鳥獣だけを駆除すればよったのです。

 大きいカニとか。大きいカマキリとかです。

 方法はシンプル。

 オリハルコンで軽く磨いたバンパーをトラックに装着。

 (念のため上から塗装しときます)

 魔物を見かけた瞬間にアクセルベタ踏み。

 数十トンの重量を持つトラックが時速80キロオーバーで突っ込んで来ると。

 大抵死にます。

 倒した魔物の死体は専門の回収業者が回収。

 工場で綺麗に解体して領地の卸問屋に売却します。

 強いやつとか、レアモンスターも容赦なく跳ね飛ばしてるため、周辺の都市からの買い付けが殺到してるそうです。

 ドライブレコーダーに討伐を記録するようにしたので、回収業者の手数料を除いた討伐分がドライバーさんのお小遣いになります。

 サブちゃんクラスだと給料の半分が魔物の討伐だったりします。

 

 ゴミのように跳ね飛ばされる魔物を見て、盗賊さんたちは真面目に働くことを決意。

 それを見てもやめないダメな子はキャタピラ的なものがついた草刈機(農機)で一晩中山の中を追い回したら全員が投降いたしました。

 こうして街道における犯罪発生率もゼロになりました。


(ちなみに、今回の王都遠征では、王都の人を驚かせるとマズイと判断、サブちゃんには全身に鎧を着てもらってます)

 

 領地が増えること自体は大歓迎です。

 試験操業中の黒わんこセシルの配達網が増えるだけですから。

 トラックなんて真似しようと思っても作れるの私と部下のドワーフさんだけですし。


 特に断る理由も見つかりません。

 地政学的な戦争リスクも攻める人手はありませんが、防衛だけだったらなんとかなるようにしましたし。

 こうして王様との謁見は領地貰っただけで終了しました。


 で、余った時間で殴りこみかけました。

 どこに?

 もちろん武器屋組合です。

 そもそもの原因を作ったのはこいつらなのです。

 コイツらさえいなければ農業から初まるスローライフを楽しめたのです。


 全員ぶん殴って全裸正座させて土下座させてやります!


 意気揚々と武器屋の扉を蹴破った私がそこで目にしたもの……

 それは見事な見事な土下座でした。


「あ、アレックス様! いつもいつもアナタ様の黒わんこ便にはお世話になっております。げへへへへへ。いやこの色男!」


 哀れな生き物がいましたとさ。

 もちろん予想通りです。

 めでたしめでたし。

 


 話はセシル消滅直後にさかのぼります。

 そのとき私たちは金がありませんでした。

 家財道具を運び出したので生活費は存在したのです。

 ですが特別な支出、いわゆる復興費。

 それを捻出する必要がありました。

 オリハルコンとエメラルドはいくらでもあるんですけどね。 

 ちまちま換金するのも面倒ですし。

 被災した私の足元を見るクソ商人どもにはムカつかせて頂いてますし。

 ここでエメラルドを換金したら舐められて、その後の商売に影響が出ます。

 ですので何処からともなくお金を用意する必要があったのです。

 どうしようっかなと考えた末、ある決断を下しました。


 『オペレーション武器屋死ね』のはじまりです。


 では作戦をば。


 まず銀や銅、それに真鍮などを用意します。

 これはローレンスさんに用意してもらいました。

 私の自腹で……


「アレックス様、今度は何をされるので?」


「うふふふふふ。いいですよ。教えてあげます。ごにょごにょ……」


「……それは死罪ぃッ!」


「シーッ! ブラックメンに盗聴されてたらどうするんですか!」


 なんてやり取りのあと、私はグハハハハと笑いながら工房を覗きます。

 マナが使い放題になった私は生産活動に勤しむのです。


 銀貨や銅貨を何十倍もの価値に引き上げる最強の手です。

 実は金貨と銀貨もそれに銅貨も同じデザインです。

 何がしたいのかというと、通貨偽造です。

 贋金です。


 バレね?


 大丈夫です。

 ちゃんと地金にも金は入れます。

 乱世の小国から謀略と贋金の力で世界を獲ったことがありますので、偽造には自信があります。

 勇者に速攻で殺されましたけど。

 あークッソ! 嫌なこと思い出した!


 つかYOU金を作っちゃえよ!


 賢者の石作ろうと思えば作れますよ。

 同じ量の金より高くつきますけど。

 エメラルド掘ったほうがマシです。


 で、ここからが重要です。

 ほとんど金が入っていない地金に金メッキします。

 メッキは金色ですがキラキラしてるのですぐにばれますね。

 ですので、一手間加えて人の手を通ったという信用を演出します。


 で、具体的にどうするかという話ですが、セシルの山の方にアルカリ温泉があります。

 そこにメッキをした硬貨を数日沈めます。

 すると湯錆やミネラルの付着などにより、まるで古い金貨のようになるのです。

 

 これで準備は完了です。

 

 まず、欲しいもので換金可能なものを考えます。

 鉄やら真鍮やら大理石などはいくあっても足りません。

 ですので贋金で手に入れます。

 鉄や真鍮などを元手に数倍の量の材料を手に入れると。

 まあ、要するに詐欺です。


 仕返しをかねてますので、ターゲットは武器屋組合関係のマテリアル業者。

 支払いは現金一括払い。

 全て贋金です。

 あ、大丈夫ですよ。

 贋金は流通してもわからないクオリティです。

 クオリティの低い贋金と比べればちゃんと地金にも金入ってますし。

 比重に関しても元の金貨自体が年式やロットによって比重がまるで違います。

 国の経済状況でコロコロ混ぜ物の比率を変えているものですから。

 水に沈めて比重を計る程度ではわかりません。

 試金石による試験も元がこれだけいい加減だとほぼ不可能です。

 まあ、このレベルで複製できるのは贋金作りの豊富な経験のある私くらいですがね。

 念には念を入れて、貴族や商人のつてを複雑に巡って誰が紹介したかわからなくなった紹介状も作りましたし。


 そして支払った後に後始末をしなければなりません。

 だって通貨がたくさん増えちゃったらまずいし。

 ばれるし。


 実は彼ら、武器屋組合の子会社です。

 いえもっと立場の低い営業所的なポジションですね。

 循環取引や契約料名目で利益をほぼ全部吸い上げられているのを確認しました。

 あ、彼らの名誉のために言いますが合法ですよ。

 世界は「循環取引なにそれおいしいの?」って感じですので。

 

 で、お金はうまい具合に組合へと。

 私の贋金も一度は組合に集まるわけです。


 あとはタイミング見計らって密告すれば完了です。

 で、同時に『武器屋はアレックスちゃんと仲悪いぷー』という噂を流したわけです。

 贋金、竜殺しのアレックスちゃんとの確執。

 あとは坂を転げ落ちるように没落するだけでした。


 今回の作戦はエリザベスの意見も参考にしています。

 武器屋組合は議会議員も名を連ねる巨大組織です。

 一気に潰すと世間様に影響が出ます。

 ですので電撃作戦で殺すのはやめました。

 罠にはめて船の底に穴を空け、乗員が逃げ出すように仕向けたのです。

 組合はいくつもの組織に分断。

 後は小さく動かしやすくなった彼らを私が買収しまくると。

 いつの間にか、私たちは旧組合傘下の武器屋の7割を手に入れてたわけです。

 私の個人所有では色々とまずいので、表向きはネオセシルの各種職種別組合(ギルド)や王都青果卸売組合、王都宝石商組合などの共同所有ですがね。

 これで力の大部分は削ぎました。


 あとは逃げ遅れ、囚われてるドワーフさんを開放し、同時に私の腹の虫を収めるために殴れば終了です。

 

 と、いうわけで最後の手順。

 『殴りこみ』です。



「死にたくなければうちの領地からさらって来た連中出せ」


 私はニコニコとしながらそう脅しました。

 差し出して欲しいのは私の舎弟のドワーフさんたちの親御さんです。

 大部分は逃亡したそうですが、まだ幾人かは残っているはずです。

 これだけはケジメをつけなければなりません。


「だ、出す!出すから助けてくれえええええ!」


 情けない声で鳴きました。

 脅しで一発蹴ったのがマズかったのかもしれません。

 ついイラッとしてしまったもので。


 守備兵団の精鋭が組合の奥に乗り込んで行きました。

 そして助け出したのは身長は低いけど体格の良い集団。

 ドワーフさんたちでした。


「あなた方を我が領地で保護します。お子さん達が待っていますよ」


 そう言うとドワーフさんたちが涙を流しながら平伏しました。


「このご恩決して忘れません。永遠の忠誠をお誓いいたします」


 これでようやく亜人さんの保護二件目です。

 先はまだ遠い……

 世界には逃げ出して行方知れずのドワーフさんがまだたくさんいます。

 彼ら全てを保護しなければなりません。

 私は全てのドワーフさんを保護するまで諦めません。

 いえ。全ての亜人を保護するのです!

 私は自分に誓いました。


 こうしてドワーフさんの救助が終わり、初日の予定が完了したわけです。


 ……と、思った私が甘かった。



 建物を出て、バスの到着を広場で待つ我々の背後で爆発音が響きました。

 それはドカーンッ!という音でした。

 窓は割れ破片は散らばり、人々は逃げ惑います。


「ぬおおおッ!」


「な、なんなのだ!」

 

 音が出たのは武器屋組合の建物です。

 建物に火がつき煙がモクモクと出ています。


「守備兵団とドワーフさんたちは全力で周辺住民の救助!怪我人は広場の奥に運んでください。ヒールします!」


 脊髄反射で指令を出してしまいました。

 うちの領地じゃないのに。

 私たちは災害に馴れすぎていたのです。


「いいのかアレックス!!!」


 レイ先輩が怒鳴りました。

 心から心配してくれてるのだと思います。


「仕方ないです! やります!」


 私は歌い始めます。

 癒しの歌を。

 例のごとくマナの翼が現れ怪我をした人々を癒し始めます。


 神を讃える美しい歌。


 ですが歌っている最中にも私の頭の中では、ドゴドゴというブラストビートに合わせてデス声でデーストローイとかファッカとかキルという声がこだましてます。



「みじめな子羊をお救いください親愛なる神よ。神は太陽のように輝く永遠に」


脳内


「ドゴドゴドゴドゴ! ♪ヴォオオオオオ、オギャアアアア、ゴァアアアアァーー!!」

(反吐よりも汚ねえ神をぶっ殺せ!殺せ殺せ殺せ!暴力が俺の生き様!神すら殴る!) 


 おっとヘッドバンギングしそうになった。危ない危ない。

 皆さんお気づきでしょうが、私の好きな音楽ジャンルはデスメタルです。


 ここまで壊滅的に気持ちがこもってなくてもヒールは発動します。

 便利な体質になったものです。

 私は光翼を出しながら歌いまくるのです。

 あー疲れる。


 私が歌っていると、ガッシャーンという音とともにレイ先輩が組合の建物から出てきました。

 組合長のジェイソンを背負っています。

 さすがレイ先輩。

 やればできる子です。


「おっしゃ! アレックス! これで最後だ」


 他の従業員はドワーフさんたちと共同して助けたようです。

 私は、腰から秘密兵器を出します。

 ドワーフさんを出したくなくて暴れた場合を想定して持ってきたのです。

 それをレイさんに投げ渡します。


「っちょ! アレックスこれって!」


 マナ手榴弾。

 この世界では魔法使いが極端に少ないため、歩兵用に私が開発した新作兵器です。

 中には私の魔法が入ってます。

 ちなみにシルヴィアにマナ手榴弾作らせたら、投げた人間が確実に死ぬレベルの威力でしたので、155ミリ自走式マナ榴弾砲の弾として使ってます。


「あークッソ! 知らねえからな!」


 ピンを外し、レイ先輩が手榴弾を放り込みます。

 パリーンという音が響き、風が巻き起こります。

 それは爆発でした。

 しかし、全てを凍らす吹雪の爆発です。

 そう。私は爆裂魔法ではなく氷属性のマナを詰め込んできたのです。


 だって放火すると後が大変なんだもん。

 王都は木造家屋多いし。

 たしかに爆破は消化効果ありますけど、うまくやらないと炎が広がりますし。

 良い子は殴りこみかけるときは周りに迷惑かけちゃダメですよ。

 暴力と借金は計画的に。

 アレックスちゃんとのお約束です。


「氷魔法も用意してたのか……さすが……アレックス……」


「こ、これは?」


 ドワーフさんたちが度肝を抜かれています。


「あー。お子さん達とそこの領主の共同制作ですよ」


 えっへん!


「ッすげえ! 羨ましい! 俺たちがクソつまらないもの作ってる間にこんな面白いもん作るなんて! 悔しいー!」


 ドワーフさんたちは子供のようにキラキラと目を輝かせてます。

 私は歌いながらサムズアップ。

 私 + 子供ドワーフさんでも世界のバランス崩しまくってたのにそこに熟練工がやってきました。

 もう誰にも止められません。


 ぬはははははははははははーッ!


 頭の中で高笑いしながら私は歌いまくるのです。

 でーすとろーい!

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