183.香水とお箸
結婚式の準備もひと段落した今日。
わたしは久しぶりにリヨウとスバルのところへ行き庭作りをすることにした。
前々から約束していたものの、秋唐国の誕生祭があったり
キーサ帝国問題があったりで延び延びになっていたのだ。
ずっと気になってはいたのよね~。
結婚式したらしばらくはここにはいないし。今日がチャンスだわ!
わたしは意気込んで彼女たちのいる仕事場へと足を運んだ。
到着すると既に二人は外で待っていてくれて、元気よく出迎えてくれた。
「怜彬様~!久しぶり」
「元気にしてた?っていうかもう体調は大丈夫なの」
「リヨウ、スバル!久しぶりね。わたしは元気よ」
相変わらず可愛いリヨウと、綺麗なスバル。
今日もキラキラ輝いているわ!!眩しいくらい。
「結婚式の準備は大丈夫なの?」
「大丈夫よスバル。今ちょうどひと段落したところなの」
「楽しみだな~!怜彬様が作るお庭♡」
「ふふふ。楽しみにしててね。リヨウ」
「私達も何か出来る事ある?手伝うよ」
「ありがとう。じゃあまず荷物を運ぶの手伝ってくれる?」
「りょうーかい!さっやるよ!リヨウ」
「はいはーい♪」
リヨウとスバルに手伝ってもらいながら依頼されていた庭作りを始めた。
久しぶりの庭作り!!ああ。すっごく楽しいわ♪
このところ全然土に触れてなかったもんな~。
わたしはウキウキしながら土をならすところから始めていた。
「そう言えば怜彬様。結婚式は四季国でするんですってね」
肥料をまいている時にスバルに話しかけられた。
とっても興味津々と言った顔をしている。
「そうなの。雷覇がどうしてもって言っててね」
「すごいな~!私行ったことないからさ…。神様がいる神殿でやるんでしょ?」
「ええ。実際に見てきたけどとても綺麗で神秘的な場所だったわ」
「そうなんだ!ドレスとかももうできてるの?」
こちらも興味津々な顔でリヨウが尋ねてきた。
彼女はどちらかというとドレスの方が気になるようだった。
「昨日マダムベリーに仮縫いの状態を見せてもらったけど、すっごく綺麗よ」
「いいな~!絶対可愛いだろうな~」
「ふふふ。当日は楽しみにしていてね」
「うん!絶対行くよ。ね?スバル」
「もちろん!怜彬様と雷覇様の結婚式だもの。行かないわけないわ」
「ありがとう。二人とも」
やっぱり…この二人と話していると元気になるな~。
もっと早くこっちに来てればよかった。
二人とも生き生きとしながら、結婚式について話をしている。
それを見てるとわたしも何だか楽しみになってきた。
3時間ほど作業をしたところで、ある程度形が出来てきた。
大きな木はもう植えてもらっているし、後は細々した草花を植えたら完成ね。
少し下がって全体像を見ながら確認していた。
すると後ろからリヨウとスバルに声を掛けられた。
「怜彬様!!」
「なあに?」
「結婚おめでとう!!」
二人声をそろえて、わたしに可愛い包に包まれた箱を手渡された。
これって…。もしかして。
「私達二人からの結婚のお祝い!」
「ぜひ結婚式で雷覇様と一緒につけてね♡」
「うわー!!ありがとう。開けてもいい?」
「もちろん!」
わたしは近くにあったベンチに腰かけて包を開けた。
すると綺麗なガラスの器に入った香水が入っていた。
さっそく蓋を開けて匂いを嗅いでみる。
「わぁ…。とってもいい香り~」
「でしょ?私とスバルの自信作よ」
「かなり材料は配合にこだわって作ったの」
「それは匂いで分かるわ。とっても複雑な香りだけど爽やかさもあって…とっても落ち着くわ」
「さっすが怜彬様!わかってる~」
「ハーブと数種類の柑橘系の香りをブレンドしているよ」
「ほんとうにいい香りだわ。ずっと嗅いでいたい!」
こんなに爽やかな香りなら結婚式につけていても嫌な感じはしないだろう。
きっと二人はそこも考慮して作ってくれたに違いない。
でも…本当いい香り~。
あとで雷覇にも教えてあげようっと!
それからまた2時間ほど作業をして、庭を完成させた。
二人の希望通り木陰があって仕事がしやすい空間になっている。
「怜彬様!ほんとーに。ありがとう」
「これならもっと素敵な香水を作れるわ」
「喜んでもらえて良かったわ!」
「早速、三人でお茶しない?」
「いいね!すぐに準備するよ」
さっと後片付けを済ませてわたし達はできたばかりの小さな庭でお茶をする事にした。
風が心地よく吹いていてとっても清々しい気持ちになる。
リヨウとスバルはよっぽど気に入ったのか、さっきから庭の話ばかりしている。
二人が喜んでくれて良かったな~。
わたしも久しぶりの庭作りで楽しかった~!いいストレス発散だったわ。
「外で飲む紅茶は格別ね」
「でしょ?リヨウ。わたしと雷覇はしょっちゅう中庭でお茶してるわよ」
「あの雷覇様がね~。人は変わるものだね」
「スバルったら…。雷覇は優しいわよ。わたしの好きな事に付き合ってくれてるもの」
「それがびっくりだよね~。いや~その雷覇様もとうとう結婚か…」
「なーんか感慨深いよね~」
しみじみとしながら二人が今までの雷覇を振り返って話をする。
小さい頃から剣術しか興味がなく、無愛想で女の子には冷たかったという雷覇。
今の雷覇からは想像もつかないけど、そんな彼が今やわたしと一緒に庭作りをするまでになったのだ。
それは感慨深くもなるだろう。虹禀殿も似たような事言ってたしね…。
ひとしきり雷覇の話で盛り上がった後、二人に別れを告げてわたしは別邸に戻った。
気が付けばもう日が傾いていて夕飯の時間になっていた。
「今日は楽しかった~」
「良かったですね…。お嬢様」
「うん。見て!リンリン。二人にお祝いでもらったの」
「素敵な香水ですね」
「ええとっても。香りも凄いいい香りなの」
「お嬢様…。ほんとうにおめでとうございます」
「どうしたのリンリン。改まって…」
急にリンリンが真剣な表情になってわたしの手を握ってきた。
彼女がこうしてくるのは珍しい事だった。
「私はずっとお嬢様の傍でお嬢様の事を見てきました…」
「リンリン…」
「あの…辛そうな顔をしていたお嬢様が今…とっても幸せそうにしている…。それだけで私は幸せです」
「ありがとう…リンリン。ここまでこれたのも…あなたがいてくれたからよ」
わたしは思いっきりリンリンを抱きしめた。
リンリンもわたしも抱きしめ返してくれた。
無口であまり感情を出さない彼女だけど、今日はにこやかな笑顔だった。
そんなに…喜んでくれていただなんて…。
初めて彼女と会ってから今日までずっとわたしの傍で支えてくれてたリンリン。
ズバッと真っ二つに切るような物言いだけど、とっても優しい。
どんな時も冷静でいつもわたしの後ろをついてきてくれた…。
彼女の支えなしではわたしは生きてこれなかっただろう。
「お嬢様…。絶対に幸せになってくださいね。今度こそ…」
「うん…うん…」
胸が詰まってそれ以上言葉が出てこなかった。
今度こそ…幸せになって。
彼女がそう言うと言葉に重みが出てくる。
きっと今までわたしの事を考えてみててくれたから…そう言ってくれてるのね。
わたしはリンリンを抱きしめながら、幸せになると誓った。
彼女にわたしの笑顔を届けることが恩返しできることだろう。
「お嬢様…。あまり泣いては目が腫れてしまいますよ」
「ううう。リンリンが嬉しい事言うからよ…」
そう言って優しく涙を拭ってくるリンリン。
言葉は少ないけれど、彼女の温もりや思いやりは伝わってくる。
わたしの…大切な人。
「リンリン!大好きよ。これからもよろしくね!」
「はい…。お嬢様…」
その時…今までに見たことないくらい眩しい笑顔になったリンリン。
今日の笑顔はずっと忘れないだろう。
そしてこれからも‥‥。
その後、リンリンから結婚のお祝いにと綺麗な刺繍の入ったハンカチと
雷覇とお揃いのお箸を貰った。
今日はとってもいい日だわ!
わたしは綺麗な香水とお箸を眺めながらそんな事を思っていた。




