126.まだまだ知らない事が沢山ありました!
『姉さんへ
お元気ですか?僕は無事、秋唐国に着いたよ。
僕はとても元気です。姉さんに色々打ち明けたからかな?
身も心もとっても軽くて仕事も順調です。
珀樹殿との打ち合わせも順調に終わり、今は各地を視察して
どこに発電機を設置するのが一番いいか検討してます。
姉さんがこちらへ来る頃には決まっていると思うからその時にでも報告するね。
あと雷覇殿が秋唐国の誕生祭に参加したい旨承知致しました。
こちらでも受け入れの手配を整えて姉さんと一緒に帰ってくるのを待ってます。
できれば3日前までに倒着してくると助かります。
それから、五神国会議でも議題に上がっていた、他国との貿易について進展がありました。
なんでも、うちの宝石をぜひ輸入させてほしいとの申し出でした。
詳細は別紙に記載しておきます。
姉さんに相談したいのでまた、帰国した際には宜しくね。
帰国の際は道中くれぐれも気を付けて。
怜秋より』
秋唐国へ帰国した怜秋からの手紙が届いた。
良かった…。怜秋は思ったよりも元気そうだった。
文面を見る限り、前回の事を引きずっている気配はない。
それに、雷覇の誕生祭の参加も許可してくれて安心したわ…。
結婚に猛反対された後の申し出だ。拒否される可能性だってあったが怜秋はすんなり許可してくれた。
誕生祭まであと2か月。それまでに雷覇の仕事のスケジュールを調整して
秋唐国へ一緒に行けるようにしなくちゃ!
そうと決まれば早速、水覇殿に交渉しに行く必要がある。
あと、怜秋が送ってくれたうちと貿易したいと言っている国…。
これについても相談しておきたかった。五神国会議で上がっていたと怜秋は言っていた。
わたしはその会議には体調不良で参加できていない。どんな話だったのか直接聞きたかった。
それに…。なぜ秋唐国に興味を持ったのかも気になる。
今までまったく交流がない国だった。夏陽国の情報網なら何か情報を掴んでいるかもしれない。
「秋唐国へ行く件は、以前兄から聞いているので問題ないですよ」
拍子抜けするほどこちらもあっさり許可が出た。何かお小言ひとつでも言われるかと思ったけど…。
わたしの心配し過ぎなようだった。
なんでも、今は仕事が分散化されて、かなり水覇殿と雷覇の負担が減ったようだった。
それもこれも、わたしや黒綾殿のおかげだと大絶賛された。
書式を統一した書類が功を奏したようだ。後はわたしの後を引き継いだ人達もうまく機能しているそうだ。
ちゃんと仕事しておいてよかった~。わたしはひとまずほっと胸をなでおろす。
「ありがとうございます。あとちょっとご相談なんですけど…」
「もしかして…キーサ帝国との貿易についてですか?」
「さすが…お耳が早いですね。水覇殿」
「ふふふ。これでも軍事国家の当主ですからね。五神国の情勢はある程度把握してます」
にっこりといい笑顔で水覇殿に告げられた。
この感じだとうちの内政も筒抜けって感じね…。
「なら話が早いですね、正直どんな国なのか分からないので教えていただきたくて…」
「まぁ簡潔に言えばあまりいい相手とは言えないですね」
「そうなんですか…どうしてですか?」
「もともとキーサ帝国は五神国に侵略しようとしていた勢力の一つで、侵略国家です」
「侵略国家…」
「はい。昔は他国の資源や土地をむしり取り自国の物とする‥・。仲良くしたくない国ですね」
「そうなんですか…。じゃああまり深くかかわらない方がいいですね」
「そうですね。五神国会議で議題に出たのも、どう対処するかでして…ひとまずは、侵略するそぶりはない事から穏便に貿易だけはしようとはなりました」
「なるほど…。うちみたいな小さな国のどこに興味をもったのかしら?」
「秋唐国なら、資源は沢山ありますしそれに、名産品の宝石も魅力でしょう」
「宝石くらいなら、よその国でもありそうだけれど…」
「とんでもない!秋唐国の宝石はどれも一級品で、他国の物とは比べ物にならないですよ!」
「そうなの…?」
そんなに貴重なものでもないし…。むしろわたしにとっては身近にあるものだから何とも思っていなかった。
元々宝石に興味がない事もあるけど。貿易に関しても五神国との取引だけで十分利益は出ているし
無理に他国と新たに貿易して利益を求めるほどでもない。
むしろ、侵略国家なら下手に関わらない方が良い。秋唐国を皮切りに
五神国に侵略してこないとは限らないし…。
「後は…秋唐国で最も魅力的なものといえば、一つしかありませんね‥・」
「魅力的なもの?それっていったい何なんですか?」
「ズバリ!怜彬殿です!」
「へッ?わたし?!」
驚くようなセリフを水覇殿に言われて思わず変な声が出てしまった。
秋唐国で魅力的なものがわたし?なんで?
「そうです!怜彬殿ほど魅力的な女性はいないでしょう!傾国の美女。宝石の妖精とまで謳われた方ですから」
「いやいや!それは昔の話で…。今はそれほどでもないと思うんです。それに【死神姫】っていう異名もありますし…」
「それも魅力的な部分の一つでしょうね。怜彬殿を妻に迎え入れて誰かが亡くなっても呪いのせいにできる訳ですし」
「なるほどー…って、それってまずくないですか?」
「まずいですね。すべての罪を怜彬殿に着せて殺した人は無罪放免なんてシナリオもなくはないでしょう」
「うわー…。完全に侵略の糸口にされそうですね…」
「それも然りですね!」
にっこり満面の笑みで水覇殿に微笑まれてしまった。
夏陽国のような大国にとっては取るに足りない事なのかしら…。
それにしても、雷覇がいない時に相談して良かった…。
雷覇がいると話し合いがややこしくなるから席を外してもらっていた。
ちょうど、ラカンと話したいことがあるからと言っていたし…。
最近ちょくちょくラカンと会ってるのよね…雷覇。そんなに仲良かったっけ?
まぁとにかく、この場にいないことは有難かった。今の話を聞いたら血相を変えるに違いない。
「まぁ、怜秋殿が送ってくれた資料を見る限りでは、貿易したいだけのように感じますね」
「うーん…実際に会ってみないと分からないってことですよね?」
「おっしゃる通りです。今まで何の縁もない秋唐国にいきなり貿易ですからね。胡散臭いにもほどがある」
ニヤリと背筋が凍るような笑みを浮かべる水覇殿。
でました!腹黒い水覇殿!久しぶりに見たわ…。
「とにかくできる限りこちらでも情報を集めて対策を練っておきましょう!」
「はい!ありがとうございます。水覇殿」
ふー。本当に水覇殿だけは敵に回したくないわ…。
頭の切れる水覇殿の事だ、どんな手を打つべきか。はもう分かってるんでしょうね…。
触れるのが怖いから何も言わないでおこうっと!
わたしは執務室を出て、庭園へ向かった。雷覇と待ち合わせているためだ。
ちょっと早く来すぎたかもしれないけど…。二人でお昼ご飯を食べてその後散歩する予定だ。
黒爛殿は今日の夕方に夏陽国を出発する。
それまでは黒綾殿と二人で仲良く過ごしているそうだ。
二人が仲良く過ごせているのが嬉しい。想像するだけでほっこりした気持ちになる。
やっぱり家族とは仲良くした方が良いしね!
あとは…。これを雷覇に渡せば今日のミッションは完了ね!
フィタをそっと手に取り出して眺めた。昨日思いついて早速作ったものだ。
リンリンに頼んだらすぐに糸を用意してくれたため、半日で作ることが出来た。
雷覇…。喜んでくるといいな…。
色は雷覇の髪の色の銀色の糸に、瞳と同じ色の金色の糸。それから…
わたしの瞳と同じ薄紫色の糸…。ちょっとストレートすぎるかしら。
今さらながら、恥ずかしくなってくる。他の色でも良かったのだが、雷覇に気持ちを
分かってもらうために作ったものだし…。ストレートなくらいがちょうどいいと思った。
えーい!もう作ってしまったし、サラッと渡してしまおう!うん!そうしよう!
わたしはまたそっと服のポケットにそれをしまう。
そのタイミングで雷覇に声を掛けられた。
「怜彬!遅くなって済まない」
「大丈夫よ!今着たところだから」
雷覇が嬉しそうにこちらにかけてくる。毎回の事だけれど…。
本当にわんこみたいでかわいい。雷覇の後ろに尻尾があるように見えるし。
早速、雷覇に車椅子を押してもらいテラスへ向かった。
久しぶりに二人で取る昼食だった。自然と笑みがこぼれる。
雷覇と二人並んで椅子に座る。
ご飯を食べようとして、雷覇に止められてしまった。
「雷覇…。わたしもう自分で食べれるわ」
「まだ完全に怪我が治った訳じゃないだろう?ほら、どれが食べたい」
そう言って、お箸を取り上げられてしまった。
どうも、雷覇はわたしを甘やかすことに夢中だった。
元々お世話好きなのかしら?逆らってもメリットがないのでここは大人しくしよう。
「うーん…じゃあ、そのお野菜が食べたいわ」
「よし!これだな」
一口サイズに取り分けて口に運んでもらう。
わたしが言い出したこととはいえ…。恥ずかしい。怪我はもう治ってるしもう十分なのだけれど。
でも、雷覇がニコニコしながら食べさせてくれるので強く嫌とも言えない。
以前、それとなく止めるよう言ってみた結果、この世の終わりのような顔をされてしまった…。
大袈裟だと思う。それに前に甘えていたのは両想いになる前だ。
想いが通じ合った今なら何もしなくても問題ないと思うんだけどな~。
「怜彬、お茶はいるか?」
「うん。もらうわ」
ユノミを手に取ってゆっくり飲む。ふー…。お腹いっぱい。
色々考えているうちにご飯を食べ終えてしまった。
雷覇は今、自分の分の昼食を食べている所だった。
よーし…。そろそろ、渡すタイミングね!
わたしは服のポケットからフィタを取り出した。
「雷覇…。これ、良かったら貰ってくれないかしら」
「怜彬の物なら何でも貰うよ!」
雷覇が嬉しそうにこちらを向いて手を差し出す。
わたしは雷覇の手にフィタをそっと置いた。
「これは…。フィタか?」
「雷覇…。知ってたの?」
「前にサイガがリンリンに貰ったと言って、物凄く自慢してきたから覚えてる」
「そうなのね…」
目に浮かぶわ~。サイガが悔しがる雷覇を前にして自慢している姿を想像した。
それにしても…リンリンもサイガにプレゼントしていたのか…。ふふふ。いい感じね!
「秋唐国では一般的なお守りだろう!嬉しいよ」
「よかった…」
さっそく手に付けて眺めている雷覇。どうやら気に入って貰えたようだった。
「いい色だな…。この薄紫色は怜彬の瞳の色か?」
「え…?うん…そう」
やっぱり気が付くよね…。ストレートに言われると恥ずかしい‥‥。
わたしは、思わず顔を伏せてしまった。
すると雷覇にクイっと顎を持たれて顔を上げさせられた。
「ありがとう!怜彬。すごく嬉しいよ‥‥」
そう言っておでこに口づけが落ちてくる。
「よかった‥‥喜んでもらえて」
ふふふ。恥ずかしいけど思い切って私の色にしてよかったな…。
ふと視線を上げると雷覇が、恍惚とした表情でわたしを見つめてくる。
わたしも、じっと雷覇を見つめる。愛おしい気持ちが胸いっぱいに溢れてくる。
気が付いたらわたしの方から、唇を近づけて重ねていた。
雷覇が受け入れてくれて、後頭部を支えられながら、深く口づけを交わす。
鼻から抜ける息の香りが、さっき飲んだリョクチャの香りがした。
「ん‥‥」
雷覇の胸に当てていた左手をぎゅっと握り締められる。
指と指が絡まって、より近くに雷覇を感じる。
早鐘のように心臓が脈を打っている。ああ…。頭がぼんやりする…。
「ふっ…んぅ‥‥んんっ‥‥」
‥‥!!
急に唇の隙間から何かがにゅるりと入ってきた。これは…何?
びっくりして思わず雷覇から身を離そうとしたけど
雷覇に頭を抑えられてるため無理だった。
わたし自身の舌が柔らかい何かに絡めとられてる。
今までの口づけとは明らかに種類が違う。息をすることも忘れるような口づけだった。
そして気が付いた‥‥わたしの舌に絡まっていたのは、雷覇の舌だった。
うそ!そんなことまでするの…!!
それに気が付いた途端、体中が火照って指先が麻痺したかのように痺れてくる。
雷に打たれたくらいの衝撃だった。
「んっ‥‥ら…いは…」
「ごめん…驚かせて。嬉しくてつい…」
やっと唇を離してもらい、雷覇がそう言って、またわたしの唇に軽く触れる。
す…すごかった‥‥。あんな口づけがあるなんて…。驚きのあまりしばらく方然としてしまった。
「大丈夫か?怜彬…」
「だ…だいじょうぶじゃないかも…」
だって…。あんな口づけがくるなんて思いもしないじゃない…。
今までの口づけがかわいいと思えるくらいだった。
「怜彬。嫌ならもうさっきのような事はしない…」
「い…嫌というか‥‥びっくりして…」
「本当に?もう触れたくないとか、思わないか?」
心配そうに雷覇が尋ねてくる。
「それはないわ…。あんな口づけもあるのね‥‥」
「ふっ…そうだな‥‥。恋人同士の口づけだ…」
「えっ?あれが?」
嬉しそうに緩んだ顔で微笑む雷覇。
だったら、今までの口づけは何だったんだろうか?世の中には知らないことがまだまだ沢山あるのね…。
雷覇は余裕そうだな…。今まで沢山あんな口づけを経験してきたのだろうか。
そう考えるとちょっと複雑だけど、過去の事だから言っても仕方がない…。
「まだ…怜彬には刺激が強すぎたみたいだな…」
「う…。ごめんなさい…何も知らなくて」
「いいさ。これから俺が教えていけばいい」
サラッとすごい事を言われてまた口づけされた。今度は普通の‥‥。
さっきの衝撃が凄すぎて、今している口づけが普通に感じる…。
なんてこった!と自分にびっくりした日だった。
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