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122.炎覇《えんは》の日記4

今日もまた雷覇らいはと二人で日記の続きを読み始める。



『〇年〇月〇日

今日の天気は雨。外で子供達は遊べないので部屋の中で遊ばせている。

二人とも歩く時のスピードが速くなってきた。

目を離すとどこかへ行ってしまうから気を付けないといけない。

食事も徐々に固形物が食べれるようになりフォークやスプーンを使って

上手に食べれるようになってきた。ついこの間まで赤ん坊だったのに…。

子供の成長は驚くほど速い。きっとあっという間に僕よりも大きくなるだろう。

楽しみでもあり寂しくもあった』


『〇年〇月〇日

今日は僕の姉上達が遊びに来てくれた。雷覇らいは水覇すいはも緊張していた。

姉二人は子供達を可愛がろうとしてくれているが、なかなか懐かない。

雷覇らいははわかるが水覇すいはまで嫌がるとは珍しい。

まぁ僕の姉はちょっと個性があるから子供にとっても未知の存在で怖いのかもしれない。

姉たちは気にしている様子もなく、好き勝手可愛がって去って行った。

本当に嵐のような人達だ…。子供達を相手にするより疲れる。

夏輝かきは姉の虹珠こうじゅと気が合うようで戦の話で盛り上がっていた。

恐ろしい二人だ。姉は結婚して引退したが、現役時代は相当強い軍人で

戦場の女豹せんじょうのめひょうと呼ばれるほどの人物だった。

僕にとってはいい姉達だ。小さい頃から僕の事を可愛がってくれている。

有難いことだ。姉達も元気で過ごしてくれていると思うとうれしかった』


『〇年〇月〇日

最近の雷覇らいは水覇すいはは良く話す。簡単な言葉だがおおよその意味が分かる。

まんまからご飯と言ったり、おとしゃからおとうさんと言えるようになって来たり

本当に微笑ましい。彼らと一緒に会話できる日も近いだろう。その日が楽しみだ。

雷覇らいはは剣に興味があるらしく最近、夏輝かきから貰った

おもちゃの剣でよく遊んでいる。夏輝かきも喜んでいた。

きっと強い軍人になるだろうと。

水覇すいはは興味がないらしくよく本を読んでいる。この子は賢い。

字もすぐに覚えて書けるようになるだろう。そしたら僕や夏輝かきに手紙を書いてくれるだろうか?

今からとても楽しみだ』


『〇年〇月〇日

雷覇らいは水覇すいはが産まれて3年。

手先もさらに器用になり、ハサミを使ったり、折り紙で簡単な三角や四角を折ることができるようになった。

凄いな…。こんな小さな手で道具が使えるようなるんだから。

遊ぶ内容も小さい頃に比べて大きく変わってきた。二人とも何かを想像して作ったり

ごっこ遊びをして楽しそうにしている。

雷覇らいは夏輝かきにもらったおもちゃの弓矢が気に入ったのかそればかりで遊んでる。

水覇すいはは、絵をかいたりすることが好きなようだ。色えんぴつをあげたらとても喜んでいた』


『〇年〇月〇日

今日の会議はとても辛いものだった。また戦が始まることが決まった。

夏陽国かようこくを守るためとはいえ辛い。

どうして他者から奪う事しか考えられないのか?他の国はなぜ

五神国ごしんこくのように生きることが出来ないのだろう…。

同じ人でありながら国や人種が違うだけで価値観が大きく変わってくる。

居た堪れない。毎回同じことの繰り返しだ。奪い奪われ、恨み恨まれて永遠に終わらない負の連鎖。

それをどうにか断ち切りたい。僕のなすべきことは夏陽国かようこくを強い国にすること。

それだけだと思った。誰も手出しができない、手を出そうと思わないくらいの強さ。

恐れられるくらいがちょうどいい。そうなりたくはないが皆を守るためだ。

夏陽国かようこくが攻略されてしまっては、五神国ごしんこくが危ない。

他の4国と協力してこの危機を乗り切ろうと思う』


『〇年〇月〇日

今日は子供と夏輝かき達が過ごす最後の日だった。

戦が決まった日、夏輝かきが最前線に赴くことになった。

彼女は強い。死ぬことがないとは思うがやはり心配だ。

生きた心地がしなかった。約束の1か月間は僕が子供達の世話をすることになった。

今日も戦へ行く準備をする夏輝かき。子供達の寝顔を見ながら必ず帰ってくると誓ってくれた。

どうか彼女が生きて帰ってきてくれますように。僕は急ごしらえで用意したブローチを

彼女に送った。無事を願うブローチだ。本来なら女性から渡すが

夏輝かきの場合ならいいだろうと思った。

彼女も喜んで受け取ってくれた。』


『〇年〇月〇日

今日はいよいよ夏輝かきが旅立つ日。

子供達はいつものように預けられているだけと思っているため

泣いたりはしなかった。迎えに行ったとき夏輝かきがいない事に気が付き

二人とも大泣きして大変だったが、友人夫婦が上手にあやしてくれたおかげで何とかなった。

こんな時僕は何の役にも立たない。普段、子供達と接する時間が増えていれば

もっと子供達が懐いてくれたんだろうか?でも、泣き言は言ってられない。

夏輝かきがいない分、あの子達をしっかり守らなくては』


『〇年〇月〇日

今日も友人夫婦に預けた。雷覇らいははまだ夏輝かきを探しているが

水覇すいはは理解したのか今日はいつもより大人しい。

寂しいのだろう。珍しく僕から離れようとしなかった。

また我慢をさせて熱が出ないだろうか?注意深く観察しなくては…。

それから夏輝かきに無事を願う手紙を書いた。

早すぎると怒られそうだがそうしていないと僕も不安だった。

戦は何があるのか分からない。突然死に直面することもある。

父もそうだった。戦で目の前で死んでしまった。

あっという間だった。そのときの事は今でも忘れられない』


『〇年〇月〇日

夏輝かきが出発して1週間がたった。子供達もようやく夏輝かき

いないことに慣れてきた。今では僕に懐いて夜寝る時も一緒に寝ている。

そればかりはとても嬉しかった。いつは夫婦の寝室で寝ているが

子供達がなかなか寝ないと侍女達が言ったため一緒に寝ている。

子供は温かい。二人に挟まれると熱いくらいだ。

でもとても幸せな時間だった。二人の寝顔を見ながら夏輝かきの無事を祈る。

彼女が変えてくるまであと3週間。まだまだこれからだ。

今の所、戦はこちら有利で順調に勝ち進んでいると報告を受けた。

安心した。夏輝かきの活躍は僕の耳にも入ってくる。

誰よりも先に先陣を切って突き進んでいく。素早い動きで次々に敵を倒しているらしい。

そのうち彼女にも異名がつきそうだ』


『〇年〇月〇日

今日は雷覇らいは水覇すいはを迎えに行ったら二人とも泥まみれだった。

庭で遊んでいて汚れたらしい。二人とも今日あった出来事を僕に教えてくれる。

とても楽しかったようだ。二人と一緒にお風呂に入り泥を落とす。

普段は侍女に任せているが今日くらいは二人と一緒に入ってもいいだろう。

お風呂から上がると雷覇らいはが僕に「おかあさんがいなくてもだいじょうぶ」と言ってきた。

水覇すいはも同じだった。僕に心配かけまいと言っているのだろう。

涙が出そうになる。子供はどうして大人の事まで考えることが出来るのか?

本当に優しい子達だ。他人の事を思いやることができる。すばらしい子供達だ。

僕はとても誇らしかった。でも、本来なら僕が子供達を励まさないといけないのに…。

くよくよしてられない。僕がしっかりしないと思った日だった』




この部分を読んでわたしは少し泣いてしまった。

子供は大人が思っている以上に周りをよくみている。

きっと炎覇えんはが元気がなかったから励まそうとしたのね…。


雷覇らいは水覇すいは殿もえらいわね…。小さいのに」


「そうだな…。記憶にはないが子供は本当に賢いな」


「そうね…。大人よりもよく見えているかもね…」


「ああ。怜彬れいりん、何か飲み物でも飲むか?」


「うん。頂くわ…」


少し読み進めたところでまた休憩することになった。

炎覇えんはも忙しいのによく日記を続けられているわね…。

ところどろ日付が飛んでいる日もあったが、ほぼ毎日書いている。

マメな人だと思った。そう言う所は雷覇らいはと似ているかも…。


怜彬れいりん、セイロンティだ」


「ありがとう。雷覇らいは


雷覇らいはが冷たいセイロンティを持ってきてくれた。

とてもひんやりしていて美味しかった。


怜秋れいしゅうもね、小さい頃は…本当に我儘言わない子だったの」


「そうだったのか。きっと怜彬れいりんを気遣っていたんだろうな」


「そうだと思うわ。今やっと反抗期って感じだけど、それまでは何でもいいよって頷いていたわ」


「聞き分けのいい子供だったんだな」


「そうね‥。今思うと我慢してたんじゃないかって思うわ…」


小さい頃の雷覇らいは達を見ていると、怜秋れいしゅうは本当に

物静かで聞き分けのいい子供だった。駄々をこねて泣いたこともない。

本当に色々我慢してきたんだろうな…。

今となってはこの前の我儘くらい、言ってもいいんだとさえ思えてくる。


『〇年〇月〇日

今日はとうとう夏輝かきが帰ってきた。

本当に安心した。最前線で戦う夏輝かきはとてもすごかったと評判だった。

夏輝かきも満足していた様子だ。これでしばらくは大人しくしてくれるといいんだが…。

今度は僕が戦場に立つ。明後日から家族とはお別れだ。

早く終わらせて帰ってこよう。必ず生きて帰ってくる。

毎回、戦に行くたびに思う。今日が最後かもしれない。と

でも、あんなに小さくてかわいい子供たちを置いては逝けない。

自分以外の誰かのために戦う事がこれほど、勇気になるとは…。

活力ややる気と言ったエネルギーが体中から集まってくる感じだ』


『〇年〇月〇日

今日は家族と過ごす最後の日。4人で朝から過ごした。

一緒に起きてご飯を食べて、散歩してお昼寝して…。

本当に何の変哲もない一日だったが、とても幸せな時間だった。

こういった一日を過ごすと、人の幸せは日常にこそあるのではないか?と思う。

当たり前の様に日々を過ごせる。家族と一緒に笑い合える。

それを夏陽国かようこくの国民が全員がそんな日々を過ごせるなら

この国はもっともっと豊かで素晴らしい国になるだろう。

その為には守らなくては。皆が平和で暮らせる、日常を送れるように。

大丈夫。五神国ごしんこくは一枚岩だ。他国にはない絆がある。

絶対に負けない。そう自分に言い聞かせた』



そこでまた、日記は途絶える。炎覇えんはが戦に参加しているためだ。

本当に、この時期は戦が多い。わたしも話には聞いたと事がある程度だが

炎覇えんはの日記を読むとどれだけ過酷で、壮絶なのかが伺える。

毎回、自分を奮い立たせるように思えた。

炎覇えんはも本当は戦いたくないのだろう。苦手だと以前言っていたの覚えてる。



「戦は本当に辛いわね…」


「そうだな…。親父の代は特に侵略が多かったと聞く。それを全て勝利して防いできたから今の平和がある」


「うん。五神国ごしんこくが平和なのも、その時戦ってくれた人達のおかげね…」


「ああ。先人たちのおかげだな」


炎覇えんは炎覇えんはのお父さん、そのまたお父さん達がずっと守り続けてきた。

もちろん彼らだけの力ではない。五神国ごしんこくが一枚岩で支えてきたから今がある。

わたしはこの国に生まれて良かったと感じた。



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