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110.建国祭~ブローチを渡す意味~


「うわー!すごーいっ!」


わたしは思わず前のめりになってパレードを眺めた。

沢山の種類の戦車や銃器、騎馬隊、それに軍人達がそれぞれ真っ直ぐ整列し

一糸乱れぬ動きで音楽に合わせて進んでいく。

パレードと言うだけあって大きな旗を掲げたり、煌びやかな装飾品を付けている。

色とりどりの衣装に身を包んだ軍人達の行進は目を引くものがあった。

今はお城から馬車で1時間くらい、離れたところにある大きな広場でパレードを見ている。

観客席の上から全体が眺められるから、全体を見渡せる。

初めて見る光景にわたしはとっても心が弾んだ。


「楽しそうだな。怜彬れいりん


「ええ!とっても楽しいわ。スケールが凄いんですもの」


雷覇らいはと横並びに座って話す。膝の上に座ってという彼の要望は全力で却下した。

怜秋れいしゅう珀樹はくじゅ殿もわたし達のすぐよこで一緒にパレードをを見ている。

二人もとても楽しそうだった。


雷覇らいははこの後模擬戦でしょ?まだ行かなくて大丈夫?」


「ああ。あと少ししたら行くよ」


「頑張ってね!ここで応援しているわ」


「ありがとう!全力を尽くすよ」


雷覇らいはに手の甲に優しく口づけされる。

さっきのこともあって、ドキドキが止まらない。首筋に口づけされる感触が蘇ってきそうだった。

居ても立っても居られなくなって話題を雷覇らいはに振った。


「そういえば…。模擬戦ってどんなことをするの?」


「そうだな、まず俺と水覇すいはが大将になって100人の部隊を作るんだ。武器はレプリカでお互いの体に印をつける。色は俺が赤、水覇すいはが青だ」


「じゃあ、色が多い方が勝ち?」


「そうだ!多くの敵を倒したことになるからな」


嬉々として戦術について話す雷覇らいは。とっても楽しそうで生き生きしている。


「ただ最後の大将戦で勝敗が決まる。いくら多く倒されても大将が生き残っていたら勝ちだ」


「そうなんだ!雷覇らいは水覇すいは殿の一騎打ちも見ものでしょうね~」


「あいつとは互角だからな!毎年勝敗が分からない。…でも今年は絶対に勝つよ」


「うん!雷覇らいはなら勝てるって思ってる」


肩を抱き寄せて頬に口づけされる。ドクンと心臓が大きく鼓動する。

はぁ…。今日は一段と緊張するな~。やっぱり告白するって決めてるからかな?

雷覇らいはを見上げると自信に満ちた瞳があった。カッコいい…。思わず見とれてしまう。


「どうした?怜彬れいりん。顔に何かついてるか?」


「な…なんでもないっ!」


雷覇らいはの顔が近くなったから思わず反対方向を向いて逸らしてしまった。

恥ずかしい!!ちょっとまって!今までこんなに恥ずかしいって思ったことあったっけ?

触れられてないのに…。隣に座っているだけで落ち着かない。

逃げ出したいけど、雷覇らいはの隣にいたいととも思う。ううう…。複雑だわ。


「大丈夫か?怜彬れいりん…」


「うん…。平気」


「ほんとうに?怒ってないか?」


「怒ってないわ…。ちょっと恥ずかしくなっただけ…」


「クス…。そうか。なら良かった…」


蕩けた笑顔で雷覇らいはに見つめられる。今までこんな目で見つめられてたっけ?

ああ!どうしよう…。今日の雷覇らいははいつもよりカッコいいし何か色気もあるような気がする!

衣装のせい?それともパレードをみて高揚しているの?

普段からカッコいいとは思っていたけど、今日の雷覇らいはは5割増しくらいカッコよく見える。

雷覇らいはの雰囲気がいつもと違っているからなのかな…。

わたしを見る視線、触れる仕草、息遣いそれら全てがわたしを好きだって言っているように感じる。

わたし…。自意識過剰なのかしら…。


雷覇らいは!そろそろ、模擬戦の準備するぞ」


豪華な衣装を身にまとったサイガが雷覇らいはを迎えに来た。


「ああ…。そうだな、じゃあ怜彬れいりん。行ってくるよ」


「うん!気を付けて…。怪我しないでね」


「大丈夫だ!最後まで見ててくれ!」


そう言って雷覇らいはは立ち上がってサイガと一緒に去って行った。

勝利への確信があるようだった。勝つといいな…。


「はぁ…。死ぬかと思った」


あと少しサイガか来てくれなかったら、大変なことになりそうな気がした。

自分でもよくわからないけど…。まだドキドキしている。頬も熱い…。

わたし、顔が真っ赤じゃないのかしら?


怜彬れいりん様!お久しぶりです」


一人で悶々と考えていたら、水蓮すいれん殿に話かけられた。

振り向くと煌びやかで露出の多い衣装を身にまとった水蓮すいれん殿が立っていた。

え…。水蓮すいれん殿、凄く色っぽい…。

胸元が大胆に空いているトップスに、くびれがくっきりと分かるスカート。

綺麗な薄紫色の生地で作られた衣装は水蓮すいれん殿によく似合っていた。

明るい金色の少し癖のある長い髪を高く結い上げている為かいつもよりも大人っぽく見える。


水蓮すいれん殿!お久しぶりです」


「隣に座ってもいいですか?一緒に模擬戦を見れたらって思いまして…」


「ええ!ぜひ。雷覇らいはがいなくて少し寂しかったの」


「ふふふ。私も同じですわ。水覇すいは殿も模擬戦の準備で行ってしまいましたから」


水蓮すいれん殿の今日の衣装、凄く素敵ね。とっても綺麗だわ」


「ありがとうございます!怜彬れいりん様もとっても可愛らしいです」


にっこり天使の笑顔で微笑む水蓮すいれん殿。衣装とは正反対だわ…。

水覇すいは殿はこんな衣装が好みなのかしら…。


水蓮すいれん殿は模擬戦を見るのは初めて?」


「はい!水覇すいは殿が戦っている所を見るのも初めてですわ」


「そうなんだ~。じゃあとても楽しみね!」


「はい!そう言えば、怜彬れいりん様は雷覇らいは様にブローチを渡されましたか?」


「ええ。ここに来る前に渡したわ」


「まぁ!!本当ですか?」


身を乗り出してわたしの手を握る水蓮すいれん殿。いつにもましてグイグイ来る感じがする…。


雷覇らいは様…。とっても喜んでいらっしゃったでしょうね」


「うん。真っ赤になって喜んでくれてたわ」


「そりゃそうですよね!女性から男性にブローチを上げることは愛の告白を意味しますから!」


「えっ‥‥?あい‥‥?」


水蓮すいれん殿の言っている事が、一瞬理解できなかった。愛の告白って何?


「まぁ!怜彬れいりん様ご存じなかったのですか?夏陽国かようこくでは、未婚の女性が未婚の男性にブローチを渡すことは結婚の申し込みを意味しています。戦から帰ってきて私をお嫁にして下さいっていう意思表示なのですわ!」


「えぇっ!!そうなの!!」


わたしは思わず大きな声を出してしまった。嘘!どうしよう…。そんな意味があっただなんて。

だから、ブローチを渡したときの雷覇らいははおかしかったんだわ!


「私…。てっきり怜彬れいりん様がご存じで渡しているとばかり…。すみません」


「あ…。水蓮すいれん殿、気にしないで!知らなかったわたしがいけないの」


しょんぼりする水蓮すいれん殿を慌てて慰める。

水蓮すいれん殿が悪いわけじゃない。でも、なんでリヨウもスバルも教えてくれなかったのかしら?


雷覇らいは様は何か仰っていましたか?」


「‥‥。そう言えばブローチを渡す意味を知っているかって聞かれて、無事を願う意味でしょって言ったわ」


「そうなのですね。雷覇らいは様ショックでしたでしょうね…」


「そうよね…!どうしよう…。雷覇らいはに謝らないと。まだ好きって言ってないのに渡してしまって…」


「それなら、ブローチを渡す意味を知らなかったことを説明した方が良いですわね…」


心配そうに話す水蓮すいれん殿。きっと雷覇らいははわたしが好きじゃないって誤解してるわ。

ブローチを渡す意味で合っている。あなたが好きですってちゃんと伝えなきゃ…。


「模擬戦が終わったら雷覇らいはにちゃんと伝えるわ。ありがとう。水蓮すいれん殿」


「そんな…!私は何も…。怜彬れいりん様ならきっと大丈夫ですわ!」


「そうかな…。雷覇らいはを傷つけたかもしれないし、嫌われてないかしら…」


怜彬れいりん様を嫌うなんて!さっきお二人が話している姿を見ましたけど、とても仲睦まじい様子でしたわ!」


「そう?…良かった…」


雷覇らいは様が、怜彬れいりん様を見つめる瞳は真剣そのもの…。愛してるって感じでしたわ!」


相変わらず熱心に語ってくれる水蓮すいれん殿。なんか…。気を使わせて申し訳ないな…。

でも、他人の目から見て仲良く見えているなら嫌われていないかな…。わたしはホッとした。


「ありがとう。水蓮すいれん殿」


「はい!私は怜彬れいりん様と雷覇らいは様を応援していますから!」


言い終えて水蓮すいれん殿がにっこりと微笑む。

彼女の笑顔にほっこりとしたのも束の間、パレードが終わる合図の音がした。

次はいよいよ、雷覇らいはの模擬戦が始まる。

わたしは両手を握り締めて広場に視線を向ける。雷覇らいはが勝ちますように…。

そう祈りながら雷覇らいはが登場するのを待つのだった。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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