91.怜秋の来訪
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僕は非常に怒っていた。雷覇殿に対して・・・・。
沸々と怒りがマグマの様に腸の底から湧いて沸騰してドロドロしているくらいに・・・。
誰かいに対してこんなに怒りを覚えたのは初めてだった。
今、秋唐国で流行っているロマンス小説で雷覇殿と姉さんが結婚する。
そんな噂で巷は持ちきりだった。姉さんの手紙ではあくまで、雷覇殿の婚約除けで
意図して流した噂であって、本当に結婚するわけではないと書いていた。
絶対に嘘だ!わざと噂を流して後に引けないようにしてるんだ!そうに違いない・・・。
僕は、心の中で叫んだ。
夏陽国へ向かう馬車に乗りながらその事ばかりを考えていた。
きっと姉さんが上手くまるめ込まれたんだ・・。単純で人を疑う事を知らないから。
姉さんは雷覇殿を好きだと言ってるから、この結婚自体は問題ないと
思ってるんだ!僕はまだ雷覇を認めてない!
そもそも婚約を阻止するためってなんだよ?すでに姉さんと婚約しているのに
まだ他の女にも手を出しているのか?雷覇は!
おまけに・・・だ。姉さんにまで怪我をさせて!
申し訳ないの手紙だけよこして!!ふざけんな!
姉さんは不注意と言っていたけど、そんな筈はない!
いくら姉さんが天然でもドジではない。勝手に転んで怪我をするほど馬鹿じゃない。
姉さんが怪我をする何かがあったとしか考えられない・・・。
「怜秋様。どうか落ち着いて話をされてくださいね」
冷静にラカンに注意された。彼はこんな時でも冷静だった。
「分かってる・・・。今回はあくまで姉さんを連れて帰ることが目的だからね」
「それなら良かったです。雷覇殿と・・・ひいては夏陽国と喧嘩しようなどと、努々思わないで下いね」
「僕もそこまで馬鹿じゃないよ。でも雷覇殿の思う通りにもならない」
「怜秋様が冷静ならば問題ございません。余計なことを言いました」
釘を刺される形でラカンに諭されてしまった。
そうだ・・・。冷静になろう。怒っていては大事なものを見失う。
まだ、雷覇と結婚すると決まったわけじゃない。つい先日、婚約期間を
延長したいと申し出があったばかりだ。絶対に雷覇が原因で伸びたに違いないと
僕は考えていた。
あんなに結婚を熱望していたのに、延長したいと申し出てくるほうがおかしい。
そうなると、申し出たのは姉さんに違いない。
延長したい何かがあったんだ・・・。きっと。絶対に良くない理由で・・・。
でないと、もう結婚してもおかしくはない。姉さんは雷覇を好きになったと言っていた。
姉さんが告白したら、喜んですぐにでも結婚していたはずだ。
まあ・・・。姉さんが結婚したいと言っても反対するけどね!僕が!
それに・・・。僕が反対しなくても、結婚はできない・・・・。
そんな状況ではなくなってきた・・・。姉さんには申し訳ないけど。
僕はそんな事を考えながら窓の外を見つめた。
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リンリンがサイガに話をしてくれて、夏陽国に到着したら先に
知らせてくれるように取り計らってくれることになった。
お城に到着したらまず、雷覇にその事を伝えて応接室に雷覇を呼び出す。
その隙に、怜秋にはわたしの部屋にこっそり来てもらう。
雷覇には、怜秋が体調が悪いので少し待っていてもらうよう伝える。
という、手はずだった。
良かった~。これで先に怜秋と話をすることが出来るわ!!
予定通りに来れば今日、夏陽国の国境に入ると言っていた。
あと数時間もすれば怜秋が到着する。何としてでも先に会って口止めしとかないと!!
わたしはソワソワしながら、怜秋の到着を待った。
「怜秋!久しぶりね!」
「姉さん・・・。怪我は大丈夫なの?」
怜秋が心配そうに駆け寄ってくる。
わたしは椅子に座って、怜秋と対面した。
なんだか・・・。すごく身長が伸びた気がする。久しぶりに会ったからかしら?
「怜秋・・・。心配かけてごめんなさい」
「本当にびっくりしたよ・・・。なんで怪我なんかしたのさ?」
「色々あってね・・・。それよりも怜秋に話したいことがあったの!」
「何?話したいことって?」
わたしは怜秋の手を力強く握りしめた。
怜秋の目を見つめて意を決して伝える。
「わたしが雷覇を好きだって事、雷覇には言わないで欲しいの!」
「はっ・・・?」
「まだ、好きだって言えてないの。中々二人きりになる時間がなくて・・・それで、怜秋がうっかり言っちゃわないか心配で・・・」
「ああ。そんな事か。大丈夫だよ、姉さんに断りもなく言わないよ」
「本当?怜秋・・・」
優しく手を握り返してくれる怜秋・・・。ああなんていい子なのかしら!
「勿論だよ。そもそも、姉さんが伝えてるって思ってなかったよ」
「え?そうだったの?」
「当り前だよ。姉さんが好きだって言ってたらとっくに結婚してるだろ?」
「確かに・・・。でも!わたしは好きだと言ってもすぐに結婚する気はないの」
「そうなの?なんでさ?」
「だって・・・、怜秋が認めてないでしょう?雷覇のこと・・・」
「まぁ・・・。そうだね。認めてないというか嫌いだしね!」
ああ!そんなハッキリと・・・。でも・・・。仕方がないわ!
雷覇のやり方は最初から印象が悪い事ばかりだったもの・・・。
ある意味、自業自得だし・・・。雷覇には周りを顧みるいい機会かも。
「そうよね・・・。だからわたしは結婚は急いでないの。だから怜秋。そこは心配しないでね!」
「ああ。わかったよ。じゃあそろそろ僕は行くね!」
「ええ!ありがとう!怜秋。また後でね!」
そう言って怜秋は部屋を出て行った。
ふぃー。何とかわたしの危機は脱した・・・・。よかった~。
ほんとうに冷や冷やしたわ・・・。
わたしは脱力してソファに突っ伏してしまった。
それにしても・・・。怜秋はやっぱり雷覇のこと嫌いなのね。
あんなにはっきりと嫌いって言うなんて・・・。ちょっとショック・・・。
あんなに優しくて穏やかな子なのに・・・。
雷覇・・・。なんとか今日の面会で印象を回復してくれるといいんだけどな~。
わたしはわずかな望みを抱いて応接室に向かった。
応接室にはすでに、怜秋、雷覇、水覇殿が来ていた。
わたしは何食わぬ顔で、怜秋に挨拶をする。
「怜秋!!久しぶりね!元気にしていた?」
「姉さん。久しぶり。僕は元気だよ・・・。それよりも怪我は大丈夫?」
「ええ。平気よ。もうちょっとで歩けると先生も仰っていたわ」
わたしは努めて笑顔で対応した。部屋中の空気はピリピリしてるけど・・・。
怜秋もさっき会っていた事は微塵も感じさせず自然に対応している。
さすが!!我が弟!
「怜秋殿。遠いところはるばるようこそおいで下さった」
雷覇が丁寧に挨拶を述べる。
それに対してあくまでにこやかに対応する。
「雷覇殿。こちらこそ急な訪問にも関わらずご対応頂きありがとうございます」
「怜彬の弟君なら当然だ。どうぞ。おかけください。」
雷覇と、怜秋が向き合う形で椅子に座る。
わたしは怜秋の隣に座った。
「今回僕が訪問した理由は二つです。1つは姉の怪我の事。もう一つは今後の婚約についてです」
「怪我についてはこちらの不注意だ。本当に申し訳ないと思っている」
「それに関してはこちらは大変、遺憾に思ってるんですよ。雷覇殿。何せ秋唐国の王女を傷物にされたわけですから」
「おっしゃる通りだ。わたしの目が行き届いていないばかりに、お預かりしている王女を傷つけた」
「雷覇殿。一旦姉を秋唐国へお戻し頂きたい」
「分かった。怜秋殿の言う通りにしよう」
「ご理解頂き感謝いたします。まぁ・・・。巷ではもうすぐ結婚すると騒がれてますが・・・。婚約期間を延長されたくらいですし結婚はないと思ってもいいですよね?」
「ああ・・・。すぐに結婚するという事はない」
怜彬はにこやかな笑顔で淡々と話を進めていく。
雷覇も今のところ冷静に対処している。
「怜秋殿。それで二つ目の婚約期間につての話とはどういった内容ですか?」
こちらもニコニコしながら水覇殿が怜秋に訪ねてきた。
うーん。二人とも笑顔が怖い!黒いオーラが出てるわ!!
「婚約期間をなしにしていただきたい」
「それは・・・つまり・・・・」
「婚約を解消して頂きたいです。水覇殿」
「えっ?」
「どういう事でしょう?・・・」
わたしはびっくりして思わず声を出してしまった。
まさか怜秋がそんな事を言い出すなんて!どういつもりなの?
「元々、この婚約は突然押しかけてきた雷覇殿を納得させるためあえて合意しました」
「そうですね・・・。それについてはお詫びのしようもない」
「雷覇殿が納得し帰国されるならと僕も婚約に同意していた。だから姉を除いて婚約に同意していたのはこの時点では三人となりますよね?」
「そうですね・・・。では怜秋殿・・・」
「お察しの通りです。水覇殿。僕はこの婚約には反対です。よって賛成しているひとが秋唐国には一人もいない。今日この場で解消して頂きたい」
「ちょっと待って怜秋!そんないきなり・・・。相手にも失礼だわ」
わたしは思わず割って入ってしまった。何がどうだっていうの?
いきなりなんで・・・。解消なんて。
「姉さん。僕は信頼して夏陽国に姉さんを預けていたんだ・・・。でも今回怪我をした。下手したら死んでいたかもしれないんだよ?そんな人に姉さんを預ける事なんてできない」
「それはそうだけど・・・。でも怪我をしたのはわたしの不注意よ」
「姉さん・・・。こちらは怪我してしまう状況下にあった。という事を問題視してるんだ」
「そんな・・・」
「怜秋殿。怜彬を怪我させてしまったことはお詫びする。どうか考え直してくれ」
雷覇が頭を下げて頼み込んだ。
それを怜秋は冷ややかな目で見つめている。
「雷覇殿・・・。頭を上げてください。いくら謝って貰っても今回の件で僕はあなたを信用できなくなった。それに・・・。元々、姉も結婚には反対してましたし丁度いい機会でしょう?」
「だが・・・怜彬は・・・」
「雷覇殿を好きとでも?姉がそんな事を言ってたんですか?」
「いや・・・・」
ちょっと待って!どうしてそんな話になるの!
確かにわたしはまだ好きだって言ってないけど・・・・。
怜秋がここまで強引な話をしてくるなんて!
「怜秋殿。今日来て、今日解消というのはいささ強引ではないですか?最初は怜彬殿も反対だったかもしれませんが、今はとても仲睦まじい姿を見ています。もう少し様子を見ていただけませんか?」
居ても立っても居られなかったのか、水覇殿が助け舟を出してくれた。
「そんな事をして、また姉に何かあったらどう責任を取るおつもりですか?」
「怜秋殿。今度は万全の体制をとらせて頂く!どうかもう一度だけ、信頼回復の機会を頂けないだろうか!」
「わたしからもお願い!怜秋!もう少し時間を頂戴!」
わたしと雷覇がほぼ同時に怜秋に対して懇願した。
しかし、怜秋の態度は変わることはなかった。
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