狂気の家庭科の先生の話
中学の家庭科の先生は嫌われていた。でも私は、あの日までは何とも思っていなかった。お母さんみたいな人だなって思ってた。
ちょっとクセッ毛でサザエさんみたいな髪型してた。薄く白いファンデーションを塗ってたけど、当時の私から見たらおばさんだった。たぶん40代半ばくらいかな。
中学生のときの私はただの根暗だったんだけど、家庭科の授業は好きだった。自作のおもちゃを作ったり、料理を作ったり、結構楽しんでいた。男子はチャーハンに良い色を付けるために焦げるまで炒めてたけれど、みんなで作ったその美味しくないチャーハンの味を良く覚えている。
たしかリサイクルの授業だったと思うんだけれど、自分たちで調べて発表しようという日があった。
どうやって調べたか覚えていないけれど、ゴミを回収して、分別して、リサイクルするまでの流れを画用紙に文字で書いて発表した。
「画用紙に文字を書くだけじゃ意味ないでしょ。図にしたりして分かるようにしないと」
そんな指摘をされたのを覚えてる。「そっかぁ、なるほどなぁ」って思ったけど、男子は「くそムカつく」って言ってた。
今思うと、先生はちょっと攻撃的でヒステリックなところがあったのかもしれないとも思う。
あと、栄養の授業の時だったかな「消費期限の意味を知っている人はいる?」って質問があった。
私は「美味しく食べられる期限」ってボソってつぶやいた。
「今言ったの誰?それ!すごいわね!」って先生はちょっとビックリしてて、私は「うわぁ、耳良くて怖い」ってビックリした。
だから、あの事件は驚いた。
あるとき、男子が家庭科準備室に忍び込んで先生の日記のようなものを発見した。そこには、このようなことが箇条書きされていたらしい。
何月何日 ○○君が 「くそムカつく」って言った。
何月何日 ○○君が 「くそババア」って言った。
何月何日 ○○君が 「息が臭い」って言った。
その話でしばらくクラスのヒソヒソ話は絶えなかった。あの先生ヤバいから気をつけろみたいな感じだった。私のつぶやきも結構聞こえてたのかもって寒気がした。
でも、私はそれを聞いて、「まぁ、先生だってそう思うよね」って思った。先生だって普通の人じゃん。お母さんと変わらないかって。だから、それからは何も言わないように気を付けようとだけ思った。
私も日記には正直な気持ちを書いていたけれど、絶対に見せないようにしていたから、そんなところに日記を置いておくなんて、おっちょこちょいっていうか、油断してるっていうか、変な先生だなぁと思った。
思えばこれが、外の大人というのを理解した最初の一歩だったのかもしれない。




