96話 決着
「ぷはぁっ! アイラ、ふざけてないで〝アレ〟を何とかしないと!」
アイラの胸から抜け出したティオが言う。
その際にアイラが「あんっ♡」と艶かしい声を漏らすが、今はそれどころではない。
ティオの指差す方向、そこには禍々しい紫をしたゆらめく炎のようなものが。
「さすがは三獣魔といったところかしらね、ティオの力を以ってもやっぱり魂までは滅ぼすことができないなんて」
真剣な表情になりゆらめく炎――ヨルガムンドの魂を見つめるアイラ。
そう、これこそが討伐に成功しても時を経て三獣魔が復活してしまう原因の一つだ。
各国が七大魔王や三獣魔が復活できぬように長い年月をかけて研究を重ねてきてはいるものの、未だにその方法は確立されておらず封印するしか方法がないのが現状である。
そして、その方法というのが――
「アイラ、頼んだよ」
「任せて、ティオ。そのために私たちが来たんだもの」
ティオの言葉に頷きながらヨルガムンドの魂に手をかざすアイラ。
魂が聖なる光に包まれ、その光がどんどん大きくなりあたりを覆い尽くす。
やがて光が止むと……そこには禍々しい形をした十字架を象ったかのような物体が出来上がった。これこそが勇者の権能、魔王やそれに類するものを封印する機能を持つ封印殻である。
「これでようやく封印することに成功しましたね」
「ティオくんがいなかったら無理だったよ〜!」
今度は心から安堵した表情で声を漏らすラティナスとエイル。
二人の援護も今回の戦いにおいて必要不可欠であった。勇者パーティの一員として発展途上の中、強大な相手を前によく頑張ったものだ。
そんなタイミングで――
「ティオ様! よかった、ご無事で!」
そんな声とともにアイリスたちが駆けてくる。
その後ろから「ふむ、どうやら既に終わったようだ」と、サヤたちも歩いてきた。
サヤたちもモンスターの群勢の一掃に成功したようだ。報告に来る途中でアイリスたちと合流し、ともに来たといったところだろう。
「なんと言うべきか、ティオさんの力は計り知れませんね」
ヨルガムンドの封印殻を見ながら感服といった様子で感想を漏らすダリア。
ユリとスズも「やはりティオ殿、そして勇者様はすごいな」「……ん。三獣魔を倒した後なのにケロッとしている」とやり取りを交わす。
「すごかったのはティオよ」
「ほんとですね」
「結局ほとんどティオくんの力でヨルガムンドを倒しちゃったもんね〜」
ユリとスズの言葉に、アイラたちが苦笑しながら返す。
「さすがティオさんです〜!」
「やっぱりティオは最強だわ!」
興奮した声とともに、ガバっ! とフェリスがティオに抱きつき、リリスは頭の上に乗る。
「まったく、この子たちは……マスター、本当にお疲れ様」
相変わらずのリリスとフェリスに呆れた表情を浮かべながらも、ティオに労いの言葉をかけるベルゼビュート。
ティオもフェリスの頭を撫でてやりながら「ありがとう、ベル」と、苦笑するのであった。
「ティオ殿、都市の住人に姿を見られても面倒だ。我らを次元の狭間に帰還させてくれ」
「そうだね、サヤ。それにみんなも、君たちがいなかったらモンスターの大群の相手に追われて、三獣魔……ヨルガムンドの討伐は不可能だった。本当にありがとう」
そう言って、ティオはサヤとその配下に頭を下げる。
「よしてくれ、ティオ殿。我らはあなた様の剣にして盾、戦いで役に立てるのであればそれは無常の喜びだ」
穏やかな声でそう言うと、サヤとその配下たちはその場で膝をつく。
「みんな、本当にありがとう」
改めて礼を言うと、ティオはサヤたちを《ブラックストレージ》で次元の狭間へと帰還させる。
本当はもっとしっかりと感謝を伝えたいところではあるが、これ以上やり取りを続ければアイラたち勇者パーティにサヤと配下がアンデットだとバレてしまう恐がある。だからこそ、サヤも早めに帰還させてくれと進言してくれたのであろう。
「まったく、何から何まで謎が多いんだから……」
サヤたちを帰還させたティオを見つめながらアイラは苦笑するも、その頬はほのかにピンク色に染まっているのであった。




