94話 テンペストオブベヒーモス
そんな時であった――
【ティオ殿、〝アレ〟をやるぞ!】
「そうだね、ベヒーモス」
ティオとベヒーモスがそんなやり取りを交わす。
「アレをやる? ティオ、いったい何を……」
問いかけるアイラ。
この絶望的な状況でティオは何をしようとしているの……? と。
「起動! 〝テンペストオブベヒーモス〟――!」
高らかに叫ぶティオ。
するとパワードスーツと化したベヒーモスの装飾部分六つが、パーン!! と音を立ててパージしたではないか。
『何をするつもりじゃ!?』
『ふん、何をしようとヨルガムンド様の前では敵ではない!』
バルパトスとアガレスのそんな声が聞こえてくる。
ヨルガムンドも訝しげな表情を浮かべるもブレスを吐く勢いはそのままだ。
「やれ! テンペストオブベヒーモス!」
パージした装飾部品はそのままティオ声に呼応するかのように彼の頭上に飛び上がり、その先端をヨルガムンドたちに向けると――
ズガガガガガガガガガガガッッ!!
凄まじい音を響かせながら先端……否、銃口から一斉に漆黒の〝レーザービーム〟を連続で放った。
『ぐあぁぁぁぁぁ!?』
『な、何だこれは……ッ!』
テンペストオブベヒーモスの攻撃を一斉に受けバルパトスとアガレスが悲鳴を上げる。
『狼狽えるな! スキルで吸収するのだ!!』
自分もテンペストオブベヒーモスの攻撃を受けブレスを吐くのを止めながらも配下二体に指示を飛ばすヨルガムンド。
それに従い魔力鏡でレーザービームを吸収しようと試みるバルパトスとアガレス。
しかし――
ズガガガガガガガッッ!!
『グガァァァァァァーーッ!?』
『き、吸収できないだと……ッッ!?』
悲鳴、そして驚愕の声を上げるバルパトスとアガレス。
そう、テンペストオブベヒーモスが放ったレーザビームは二体の持つ魔力鏡を〝貫通〟したのだ。
「悪いな、その攻撃は魔力を物理属性に変換してあるんだ」
敵どもを見据えながら静かに言うティオ。
彼の言う通り、テンペストオブベヒーモスから放たれたレーザービームは魔力で生成されながらもその性質を物理属性に変換して放たれている。
アガレスたち二体の戦い方を見て魔力鏡が吸収できるのは魔法攻撃だけだとティオは看破した。それもあってこの局面で進化したベヒーモスの新たな力、テンペストオブベヒーモスを解放したのだ。
『ふざけた真似を! そんな武装なぞ俺様が破壊してくれる!!』
怒りで血走った目をして咆哮するヨルガムンド。
その体に纏った鎖が凄まじい勢いでティオの頭上に浮かぶテンペストベヒーモスたちに襲い掛かる……が――
【馬鹿が、そんな攻撃が通用するか】
クツクツと笑うベヒーモス。
すると空中に浮かぶテンペストオブベヒーモスたちは、まるで自分の意志を持っているかのように縦横無尽にヒュンヒュンと風切り音を立てて、ヨルガムンドの鎖を回避する。
そして――
「その鎖、邪魔だな」
ティオがそう言うと六機のテンペストベヒーモスたちは攻撃を避けながらも漆黒のレーザービームを放ち、ヨルガムンドの鎖を次々と破壊していく。
『ば、馬鹿な……』
『ヨルガムンド様の攻撃が完全にいなされている……』
驚愕、あるいは絶望感と言うべきか、そんな表情を浮かべバルパトスとアガレスが呆然と声を漏らす。
「今よ! ラティナス、エイラ!」
「了解です!」
「お返しだー!」
聖剣を手に二体の七魔族の方へと駆け出すアイラ。
その後にラティナスとエイラも続く。
例え魔法攻撃を無力化する能力を持っていようともティオから受けたダメージの蓄積で二体は思うように戦うことはできないだろう。
この好機を逃してなるものかと、アイラたちは判断したのだ。
そんなタイミングであった――
『オノレっ、こうなれば……ッッ』
呪詛のように声を漏らすヨルガムンド、その体から禍々しい紫の光が迸った。




