89話 露払い
剣や槍、ハンマーを巧みに使い次々と敵を駆逐していくアンデッドたち。
その中でもサヤの強さは異常だ。
刀一本しか武器を持っていないというのに一振りで複数のモンスターどもをバッタバッタ! と薙ぎ倒していく。
その強さ、まさに鬼神の如きだ。
◆
その頃、街道を大きく外れた場所で――
「う、嘘だろ……あの鬼仮面の男……」
「刀一本でとんでもないスピードで敵を駆逐していく……」
「最初の一撃だけでもびっくりしましたのに……」
遠目にもわかるサヤの活躍に、ユリ、スズ、そしてダリアが引きつった表情で声を漏らしている。
ティオ自身も(近接戦だったらサヤには勝てないかもしれないな……)と、その戦闘力に感服している。
おかげで迷宮の三獣魔に集中することができるというものである。
「ね、ねぇ、ティオくんって七魔族ヴァサーゴを倒せちゃうくらい強いのに……」
「あれほどまでに強い配下がいるなんて……」
以前にティオの力を目の当たりにしたエイルとラティナスに至っては、もはやドン引きといった様子だ。
(さ、さすが私よりも前の代のマスターの配下ね……)
魔導王シュヴァルツに仕えていたベルゼビュートからしても、サヤの戦闘力は想像以上のようで僅かに動揺が見られる始末である。
◆
街道を大きく迂回して進むことしばらく――
ティオたちは大穴……迷宮への入り口へと辿り着いた。
さすがは氾濫を起こした後だ。
まばらであるものの、すでに入り口付近にミノタウロスなどのモンスターの姿が見受けられる。
「ティオ殿」
「……ここからは私たちに任せて」
そう言って、それぞれ妖刀と魔剣を抜くユリとスズ。
クラリスでの宣言通り、露払いを買って出てくれるつもりのようだ。
「私もみなさんの盾となります」
ダリアもハルバードと大盾を構え、気概を見せる。
アイリス、リリスにフェリスも同様だ。
基本的にはティオと、勇者であるアイラとそのパーティのラティナスとエイルは力を温存。
それ以外のメンバーで道中のモンスターを駆逐していく方針だ。
「さぁ、いくわよ。《ベルゼギフト》《ベルゼプロテクション》!」
「ぼくからもみんなに力を授けます。《ブラッククレスト》!」
ベルゼビュート、そしてティオのスキルにより戦闘力を大幅にアップするアイリスたち。
漆黒の力に身を包まれるとアイリスたちはモンスターどもに向け駆け出していく。
「先手必勝よ! 《ライトニングスナイプ》!」
「私もいくです〜! 《ライトニングウィップ》〜!」
アイリスたち前衛がモンスターどもにたどり着く前にリリスとフェリスが漆黒の光弾と鞭を放つ。
アイリスたちを相手に斧やハンマーを構えていたミノタウロスどもは不意を突かれ、二人の攻撃をモロに喰らい生き絶える。
「ブ……」
「ブモ……ッ」
わけもわからぬうちに仲間をやられ、動揺する他のミノタウロスを始めとしたモンスターども、その隙をアイリスたちが逃すはずもない。
アイリスは大きく踏み込むと一気に敵たちの懐に飛び込み――
「《円月斬》ッ!」
体を半回転しその名の通り円を描くような斬撃を放つ。
漆黒の刀身による攻撃を受けミノタウロスとオークが悲鳴を上げその場に崩れ落ちる。
その横ではダリアが大盾によるチャージアタックを一際体格の良いミノタウロスに――ドパンッ!! と叩きつける。
彼女の大盾もティオの闇魔力を纏っているのでチャージアタックによる衝撃との合わせ技で敵は戦闘不能に陥る。
「私たちも負けてはいられない!」
「……うん、ねえさん!」
ユリとスズは連携し、こちらも闇魔力を纏った妖刀と魔剣を手に連携して次々と敵の数を減らしていく。
さすがにサヤのような馬鹿げた戦闘力ではないにしろ、少しでも力を温存しておきたいティオたちにとってはありがたい限りだ。




