84話 キョクトウ料理
町を歩くこと少し、ティオたちは風情がある一軒の酒場を見つけそこに入ることにした。
さすがは港町、酒場だというのに昼から営業している。
「いらっしゃいませ……って妖精さん!?」
ティオたちが店に入ると、これまたこの国の伝統的な服、ジンベエに前掛けをした給仕の娘が出迎えるも、リリスとフェリスの姿を見て驚いた様子を見せる。
「八人なのですが、空いてますか?」
「え、あ、もちろん空いてます! 奥の席へ……ってAランク冒険者様!?」
ティオに問われ給仕の娘が席に案内しようとするも、今度はティオたちの首から下がった冒険者タグを見て、またもや仰天といった様子だ。
とりあえず席へと通してもらい、いくつかの料理を注文するティオたち。
どんな異国の料理が出てくるのかと、リリスとフェリスはワクワクした様子だ。
「さて、このあとはどうしましょうか……?」
「とりあえず三獣魔が復活する場所がわかるまで、体を休めるのは必須ですね」
「あとはどの場所に復活しても動きやすいように、この国の中央部、首都に移動しておくのもいいわね」
アイリスの質問に、それぞれ答えるティオとベルゼビュート。
ただ休むだけではリリスとフェリスが退屈だろうと、観光もいいかもしれないとう話も出る。
このような余裕があるのも、ベルゼビュートが三獣魔の動きをある程度察知できるお陰である。
ある程度話がまとまったタイミングで、給仕の娘が「お待たせしました!」と料理を運んでくる。
「おおすごい、本当に生の魚がきましたね!」
珍しく興奮した声を上げるティオ。
その視線の先には生の魚の切り身が綺麗に並べられた刺身という料理が乗った皿が。
あまり生で魚を食べる文化がないティオたちにとっては衝撃の料理である。
「お刺身はこちらの醤油とお皿の上に乗ったワサビを使って食べてくださいね♪」
サシミに興奮するティオたちを見て笑顔になりながら、給仕の娘がそんなふうに説明してくれる。
サシミの他にも焼き魚や、豚肉の角煮など、この国特有の料理がテーブルの上に置かれていく。
恐る恐るといった様子で、醤油と少量のワサビをつけて白身魚の刺身を口に運ぶティオたち。
「おお、不思議な食感ですが美味しいですね!」
「お魚のも新鮮ですし、醤油の味も好みです!」
ティオに続いてアイリスも刺身が気に入ったようだ。
ワサビは辛いのでリリスとフェリスには醤油のみで刺身をあげてみたものの、二人は「う〜ん?」「なんか不思議な感じです〜?」と、刺身の良さはあまりわからなかったようだ。
ユリとスズはキョクトウの血が流れているからか、刺身も焼き魚をこれでもかと気に入ったようだ。
リリスとフェリスの二人は豚の角煮が特に気に入ったらしい。
ベルゼビュートとダリアはどれもバランスよく楽しんでいる様子だ。
最後に、給仕の娘が店からのサービスだと言って、あら汁というものを運んできてくれた。
「うわ、いい香りですね」
「それに落ち着く味です……」
あら汁をフーフーと冷ましながら口に運んだティオとアイリスが、ほっこりした表情で感想を漏らす。
リリスとフェリスはあら汁に浮かんだ魚や野菜などの具材の方が気に入ったようで、二人してもきゅもきゅと頬張っている。
「いいな〜」
「妖精さん可愛いな〜」
リリスとフェリスが料理を頬張る姿を見て、給仕の娘たちがデレデレとした様子で呟いている。
それが聞こえたのか、リリスとフェリスはテレテレとした様子で「「えへへ〜」」と二人して声を漏らすのであった。
食事も終え、ある程度落ち着いたところで、ティオたちは店を後にする。




