81話 出航
翌朝――
「さて、それじゃあ行きましょう」
上着に袖を通しながらティオが言う。
アイリスたちもそれぞれ返事をし、身支度を完了させるとティオを先頭に宿を出る。
都市の人々の視線を浴びながら、ティオたちは港へとたどり着く。
昨日のうちにサヤとやり取りを終え、魔導列車インペリアルを呼び出せばいつでも海の上を走行可能だ。
「行くのね、ティオくん」
桟橋へと歩いていくティオたちの後ろから声がする。
振り返るとそこにはマリサ伯爵と護衛たちの姿が……
どうやらティオたちを見送りに来てくれたらしい。
「はい、予定通りキョクトウ法国へと向かいます」
「気をつけてね、これまで以上に熾烈な戦いになるだろうから……」
心配そうな表情でティオを見つめるマリサ伯爵。
それにティオは「はい」と小さく頷く。
「ユリ、スズ、ティオくんのサポートを任せたわよ。そして、気をつけてね」
「了解です。伯爵様」
「……うん、必ずティオくんの力になってみせる」
伯爵の言葉に、改めて気持ちを引き締めるユリとスズ。
二人にとってもこれはこれまでで一番の過酷な旅になることだろう。
今まで都市のために尽力した二人の旅立ち、マリサ伯爵が心配するのも無理もない。
「マスター、そろそろ」
「そうだね、ベル。……《ブラックストレージ》、発動」
ベルの声に応え、ティオがE Xスキルを発動する。
桟橋から先の海面を漆黒色の霧が覆い――
「な、なんだアレは!?」
「モンスターか!?」
「いや、巨大な……金属の塊、か?」
霧の中から現れた魔導列車インペリアルの姿を見て、港の漁師やティオを出送りに来た都市の住人たちが驚きを露わにする。
「ティ、ティオくん……それはいったい!?」
「伯爵様、これはぼくが新たに習得したスキルで作り出した特殊船アーティファクトで、通常の船よりも優れた速度で航行が可能です」
マリサ伯爵の質問に、昨日のうちに決めていた答えで返すティオ。
彼の言葉を聞き「と、特殊船……アーティファクト? そんなものをスキルで召喚するなんて……」と、もはやドン引きしている。
周囲の人々も「アレが船!?」「さ、さすがはティオ様だ」などと引きつつもどこか興奮した様子だ。
「わ〜い! インペリアルでの旅!」
「楽しみです〜!」
周囲の反応などお構いなしに、きゃっきゃっとはしゃぎながらインペリアルの元へと突撃するリリスとフェリス。
彼女たちの存在を感知して、インペリアルのドアが自動で開き迎え入れる。
「それでは伯爵様、行ってきます」
「き、気をつけてね……!」
ティオの別れの挨拶に、まだ引き攣った表情を浮かべながら応えるマリサ伯爵。
ユリを始めとした女性陣たちもそれぞれマリサ伯爵と挨拶を交わし、インペリアルへと乗り込んでいく。
「待っていたぞ、ティオ殿」
「ありがとうサヤ、早速出発してほしい」
「了解だ。……ジャック、出発だ!!」
ティオの言葉に頷くと、サヤはエントランスの天井に向け声を張り上げる。
すると――
『ふほほほ! 了解ですぞ!』
エントランスの中に楽しげな声が響き渡った。
それと同時に、窓から見える外の景色が流れ出す。
どうやらインペリアルが港を出発したようだ。
「サヤ、今の声は?」
「ティオ殿、アレはジャックという我の配下のアンデッドのうちの一体のものだ。このインペリアルの操縦士とメカニック、そして我らアンデッド部隊……ウロボロスの幹部でもある」
ティオの質問に少し嬉しげな雰囲気で答えるサヤ。
その言葉を聞きベルゼビュートとアイリスが「なるほど、操縦士にメカニック」「乗り物ですもんね」と、やり取りを交わす。
煌びやかで広大な内装のせいで忘れそうになるが、インペリアルは移動型巨大兵器である。
操縦士やメカニックがいて当然なのである。
「それにしてもアンデッド部隊ウロボロス……」
「改めてどういうものなのか」
「……気になる」
ダリア、それにユリとスズはそんな疑問を浮かべるのであった。




