76話 魔導列車
「我が主よ、さっそく見てもらいたいものがある」
「見てもらいたいもの?」
「ああ、転生前のあなた様の命令で、我らアンデッドの軍勢――〝ウロボロス〟はとあるものを開発していたのだ」
そう言って奥へと歩き出すサヤ。
よくわからないが彼の先ほどまでの話は本当なのだろう……ティオはそう判断し、後に続く。
奥を見れば先ほどと同じように巨大な扉がある。どうやらサヤは底に向かおうとしているらしい。
扉の前に着くと、サヤは静かに腰から刀を抜く。
漆黒色の美しい刀だ。その刀身からは何か不思議なエネルギーのようなものを感じる。
「我が主よ、この刀が気になるか?」
「うん、その刀を見ていると、なんだか懐かしいような気分になるんだ……」
「そうであろう、これの名は妖刀〝闇時雨〟――。転生前のあなた様より賜った宝具だ」
「転生前のぼくから……なるほど、その刀身から感じるパワーは黒魔術によるものなのかな?」
「ああ、正解だ」
ティオの言葉に小さく頷くと、サヤは妖刀――闇時雨の切っ先を扉へと向ける。
するとどうだろうか、扉に先ほどと同じ漆黒色の紋様が浮かび上がり、左右へと開いていく。
するとその向こうには巨大な漆黒の影が――
「あれは……〝機関車〟、かしら?」
巨大な影を見て声を漏らすベルゼビュート。
そんな彼女にサヤは大きく頷きながら……
「ああ、あれの名は〝魔導列車インペリアル〟という。陸海空、どこでも走ることができる機関車型の移動兵器だ」
と言う。
機関車――バイク同様に神話に登場する乗り物の名前だ。
ティオが呼び出したベヒーモスがバイクの形をしていたのと同様に、ティオ――シュヴァルツの配下を名乗るサヤが開発していたものが機関車だったことを考えると、やはり彼が言っていることは本当なのであろう。
「サヤ、移動兵器……ということは、この機関車……インペリアルに乗り込むことができるのかな?」
「ああ。その通りだ、我が主よ。ここにいるアンデッド全てを乗り込ませてもまだ余裕があるほどの容量を用意した。我らを連れて、世界中どこへでも移動することができるぞ!」
「それはすごいな……って、アンデッド全てをってことは、君たちもこれからぼくらの旅についてくるってこと?」
「無論、そのつもりだ。そのために我らはここであなた様の帰還を待っていたのだからな。我らはあなた様の剣、そして盾なのだ。……まだ転生前の記憶が戻りきっていないようなので、細かい説明は省くがな」
そう言って、サヤは満足そうに頷くのであった。
「ティオ殿が魔導王シュヴァルツ様の転生体……」
「しかもこのアンデッドの軍勢が全て配下みたいなもの……?」
「お、おまけに神話に登場する宝具まで目の前に現れるとは……」
圧倒された……というか、もはやドン引きといった様子で、ユリにスズ、そしてダリアが言葉を漏らす。
リリスとフェリスに至ってはよく理解してはいないものの、「なんだか面白そうね!」「さっそく乗ってみるです〜!」とはしゃぎだし、魔導列車インペリアルに向かって突撃する始末だ。
「今世でもここまで妖精に懐かれているとは、転生しても変わらないな、我が主は」
どこか懐かしむような様子でクツクツと笑うサヤ。
そのままティオたちを連れ、魔導列車インペリアルの中へと案内を始めるのであった。
明日、2月7日(火)に本作のコミック4巻が発売となります。
ぜひお手に取っていただけると幸いです!




