61話 正直者の妖精たち
エントランスで挨拶を交わすこと少し、ティオたちはさっそく食堂へと通された。
ナツイロ公爵の一番近くの席に座らされたティオは緊張でガチガチだ。
その上、その隣にはなぜかダリアが座ってくるものだから、余計に緊張してしまう。
武闘大会とは違って、ダリアは背中と胸もとが大きく開いた大胆なドレスを着ている。
彼女の健康的な薄い褐色の肌と、程よく育った胸の谷間が非常に眩しい。
程なくして、使用人のメイドたちが魚介のカルパッチョを使った前菜を運んできた。
ナツイロ公爵がリリスとフェリスに気を使ってくれたらしく、彼女たちには子どもでも食べやすそうなスープが運ばれてくる。
「ところでティオよ、貴殿に質問がある」
「……なんでしょうか、公爵様?」
前菜を食べながら話を振ってくる公爵に、ティオが聞き返す。
何となく質問の内容は想像できるが……。
「貴殿はいったい何者なのだ? この我が娘、ナツイロ騎士団の一番隊隊長であるダリアだけでなく、前武闘大会の優勝者、オーギュストまで圧倒してしまったと聞いたぞ」
やはりティオが想像したとおりの質問をしてきたナツイロ公爵。
このような質問をされるだろうと、ティオはあらかじめアイリスたちと答えを用意していた。
「ぼくは旅の冒険者です。しかし、ぼくの持つ強さには秘密があります」
「ほう、秘密とは……聞いても良いか?」
「ぼくは冒険者活動を続ける中で、ベヒーモスという名のアーティファクトを手に入れました。武闘大会で着ていた鎧のことです。ベヒーモスには身体能力を大幅に強化してくれる効果があります。それを使いこなすことで、ぼくは拳闘士としての力を格段に強化することに成功したのです」
ベヒーモスの力については一部本当のことを。
それ以外についてはダリアがティオのことを拳闘士だと勘違いしていることを利用し、それっぽい答えを作り上げた。
ティオが元勇者パーティのメンバーだったことや、魔導王の生まれ変わりであること、そして七大魔王であるベルゼビュートやその関係者であるベヒーモスのことを正直に話せば、面倒なことになると判断したからである。
「ほう、アーティファクトか! それであればその強さにも納得であるな」
「しかし、いくらアーティファクトと言えど、ティオ殿の戦闘センスは凄まじいものでした。アーティファクトを使いこなすために、想像を絶する訓練を積んだのでしょう」
ティオの答えを聞き、興奮した様子のナツイロ公爵。
そしてティオを称賛するような言葉を口にするダリア。
どうやら納得させることには成功したようだ。
「それにしても、アーティファクトを使いこなすだけでなく、こんなに可愛い妖精さんたちを連れているなんて、いったいどんな関係なのかしら?」
今度はイライザ夫人がそんな質問をしてくる。
「それに関しては――」
ティオが当たり障りのない説明をしようとした……のだが――
「ティオは私たちを救ってくれたのよ!」
「私たちの住んでた森を支配しようとしてた、七魔族の一人をやっつけてくれたのです〜!」
――リリスとフェリスがスープを飲みながらそんなことを口走ってしまった。
「な、七魔族の一柱を倒しただと!?」
「そのようなことがあり得るのでしょうか!?」
「で、でも……妖精族は嘘を言わないという伝承もありますわよね……?」
リリスとフェリスの言葉を聞き、ナツイロ公爵、ダリア、それにイライザ夫人が心の底から驚いた様子を見せる。
周囲にいたメイドたちも、皆揃ってどよめいている。
(あー……、リリスたちに口止めするのを忘れていたな……)
正直者の妖精である彼女たちが、さらにおしゃべりでもあることをティオたちは失念していた。
ティオはどうしたものかと、顔に手を当て途方に暮れるのであった。




