56話 決勝戦
「さすがティオ様です!」
「あっという間に決勝戦まで登り詰めちゃったわね」
会場近くのレストレランで昼食を囲みながら、アイリスとベルゼビュートが称賛の言葉を送る。
「ティオは本当に強いわね!」
「ティオさんは無敵です〜!」
リリスはティオの頭の上で、フェリスは同じく彼の膝の上で、キャッキャッとはしゃいでいる。
武闘大会も昼休憩を挟んで、次はいよいよ決勝戦だ。
「でも、決勝戦は心して臨んだ方がいいかもしれないわね」
「案の定、前大会の優勝者が上がってきましたからね……」
少し心配そうな声色で、そんなやり取りを交わすアイリスとベルゼビュート。
決勝戦でティオが相手にするのは、前大会の優勝者であるオーギュストだ。
オーギュストは毎年この大会で何度も優勝している凄腕の傭兵だ。
観客席でその立ち回りを見ていたアイリスたちも、ティオにとって強敵になり得るだろうと思ってしまうほどだった。
「む〜!」
「なんだかあの人は嫌な感じがするのです〜!」
オーギュストの名が出ると、リリスとフェリスがまたもやそんな反応を示す。
彼の何かが、今も妖精族である彼女たちの鋭い勘に警鐘を鳴らしているようだ。
「大丈夫だよ、二人とも。十分に注意して戦いに臨むからね」
ぷりぷりとほっぺを膨らますリリスとフェリスに、ティオは優しい笑みを浮かべながらそんな言葉をかける。
「……そうね! ティオは強いもの!」
「ティオさんが負けるはずありません!」
ティオの言葉を聞くと、リリスとフェリスはそんな風に頷いてみせるのであった。
二人をある程度安心させたところで、注文した料理が運ばれてくる。
美味しい料理の数々を楽しみ、ティオはいよいよ決勝戦へと臨む。
◆
決勝戦を迎えた闘技場の観客席は、これまで以上に興奮と熱気に包まれていた。
年に一度の大イベント、その決勝戦の結果がどうなるのか……誰もが楽しみでたまらないのだ。
「さて、行くとしよう、ベヒーモス」
【ああ、吾輩たちの力を見せつけてやろうぞ!】
パワードスーツ状態になったベヒーモスとそんなやり取りを交わすと、ティオは闘技場へと続く通路を歩き始める。
ティオがゲートから闘技場へと出ると、観客たちが一斉に歓声を上げる。
その後程なくして、反対のゲートから決勝戦の相手であるオーギュストが現れた。
さすがは前大会の優勝者、ティオが現れた時以上に大きな歓声が上がる。
観客席からの歓声に、オーギュストは慣れた様子で手を挙げて応えている。
オーギュストのパフォーマンスに、観客たちがさらに熱狂する。
「確か、ティオといったな? よろしく頼む」
「――こちらこそ、よろしくお願いします」
意外にも礼儀ある挨拶をしてきたオーギュストに、一瞬キョトンとするティオだったが、すぐさま挨拶を返す。
それを確認したところで、審判が「両者構え!」と声を上げる。
ティオが剣と盾を構え、オーギュストは背中の大剣に手を当てる。
「決勝戦、開始……ッ!!」
いよいよ、審判が試合開始を告げた。
ダン――ッッ!
凄まじい踏み込みの音とともにオーギュストがその場から飛び出した。
大剣を背負っているというのに、とんでもないスピードだ。
【ほう、なかなかの速さではないか】
オーギュストのスピードを目の当たりにし、ベヒーモスが面白そうに呟く。
その刹那、ベヒーモスから、キュイィィィン――! と小さな駆動音が上がる。
ドパンッッ!!
会場に激突音が響き渡る。
オーギュストがスピードの勢いと体重を乗せた斬撃を放ち、ティオが左手の盾でそれを受け止めた音だ。
「ふははは! まさか俺の攻撃を片手で受け止めるとはな!」
ティオに攻撃を防がれたことで、面白そうに笑うオーギュスト。
(重い一撃だ。ナイトオブベヒーモスの能力がなかったら、弾き飛ばされていたかもしれないな)
ベヒーモスのフェイスシールド越しにオーギュストを見上げながら、ティオは冷静に今の一撃を分析する。
やはりオーギュストのスピードを見て、ベヒーモスのパワードスーツとしての力を一部開放して正解だったと。
(さぁ、反撃開始だ……!)
ベヒーモスから僅かに駆動音を響かせながら、ティオが動き出す。




