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転生魔導王は、底辺職の黒魔術士が、実は最強職だと知っている  作者: 銀翼のぞみ
一章

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24話 さらば水の都

「「待ちなさい!」」


 使用人がティオの服に手をかけた――その時だった。


 そんな声が、扉の向こうから響き渡る。

 そしてそのまま、バーンッ! と扉が開け放たれる。


「アイリス! ベル!」


 助かった……っ! とでも言いたげな表情で、ティオが声を漏らす。


「あら? もしかしてダメなパターンだったのでしょうか?」


 キョトンとした表情を浮かべる使用人。


 そんな彼女に、アイリスとベルゼビュートが――


「当たり前です!」


「マスターの貞操は私のものよ!」


 ――と、声を張る。


 ベルゼビュートの言葉に、ティオは「……っ!?」と目を見開くが、今はさておく。


「ビッグファングを余裕で蹴散らすほどのティオ様の子種が欲しくて、侯爵様に許可を得て夜這いにきたのですが……これはダメそうですね」


 ガッカリとした様子で胸元を直すと、使用人は「失礼いたしました」と言いながら、ティオの頬に「ちゅ……っ」と啄ばむようなキスをする。


「「んな……っ!?」」


 アイリスとベルゼビュートが揃って声を上げる。


 そんな二人に、使用人は「くふふ……」と小さく笑いながら、部屋を後にした。


 何が何やら……。


 一連の出来事に、ティオは呆然としてしまう。


「まったく、ティオ様が一人だけ別の部屋にされたので気になって来てみれば……」


「警戒していて正解だったわね。まさか子種を狙われるなんて」


 プリプリと怒りながら、アイリスとベルゼビュートが、ティオの隣に座る。

 そして彼に、二人して寄り添ってくる。


(よくわからないけど、二人がぼくを守るために動いてくれたんだよね……?)


 密着してくる二人に、ティオはどこか安心した気持ちを覚える。


 そしてそのまま二人と一緒に、リリスとフェリスのいる部屋へと行き、みんなで眠りにつくのだった。


 ◆


 翌朝――


「やぁ、ティオくん。昨夜は災難だったようだね」


 屋敷に食堂に呼び出されたティオたちを、ティエルが苦笑しながら出迎える。

 どうやら、昨夜の出来事を使用人づてに知ったようだ。


 とうの使用人はというと、ティエルの後ろに控えて、意味深な笑みを浮かべている。

 そんな使用人を、アイリスとベルゼビュートが鋭い視線で睨むが……本人はどこ吹く風といった様子だ。


 そんなやり取りに、リリスとフェリスが「「……?」」と首を傾げる。


「くくく……お前たちにはまだ早い話だな」


 面白そうに笑いながら、食堂の席でガゼル侯爵が言う。


「侯爵様、勘弁してください……」


 ティオがぐったりした様子で席につく。

 使用人の話を聞いた限りでは、昨夜の出来事はガゼル侯爵がOKを出したから起こったようだ。ティオの言葉ももっともである。


「まぁまぁ、ティオくん。それだけ君が魅力的な男性だったということだよ」


 隣に座ったティエルが、そっと耳打ちをしてくる。


「どういうことですか、ティエル様?」


 小さな声で聞き返すティオ。

 するとティエルから小声で、こんな言葉が返ってきた。


「彼女――エリナは綺麗だろ? 僕は前にアプローチをかけたことがあるんだけど……残念ながら断られてしまってね」


 その言葉を聞き、ティオは「……っ!?」と思わず息を漏らしてしまう。


 ティエルは結構な美青年だ。

 その上、侯爵家の嫡男という立派な地位を持っている。


 そんな彼のことを使用人――エレナというらしい――が振っていたとは……。


「だから、ティオくんはもっと自分に自信を持つべきだと思うよ?」


 そう言って、ティエルはイケメンフェイスでウィンクしてみせるのだった。


「あらあら、ティエルはずいぶんとティオくんと仲良くなったようですわね?」


 侯爵の隣で、リリアナ婦人が「あらあらうふふ」と、機嫌良さそうに笑っている。


 そんなこんなで、ティオたちは朝の食事を終え、身支度を整えるとティエルに港まで案内してもらう。


 いよいよ、ルミルスの大森林がある、バーレイブ王国へと出国するわけである。


 ◆


 港にて――


「これは、すごい船ですね……」


 侯爵たちに別れを告げ、ティエルと護衛の者たちに連れられてきた船の前で、ティオが声を漏らす。


「すご〜い! おっきい〜!」


「これが船というものなのですね〜!」


 リリスとフェリスも、興奮した声を上げる。


 目の前の船は白塗りで、周りに停まっている他の船よりも、明らかに金がかかっているというのがわかる代物だった。


 そして船の側面には、侯爵家の紋章が入っている。

 どうやらただ船を手配したのではなく、侯爵家の持ち物を用意してくれたようだ。


「ティオくん、もしこの都市に来ることがあれば、ぜひ侯爵家に寄ってくれ、歓迎するよ」


「はい、ティエル様。一日と短い間ですが、お世話になりました」


「それはこっちのセリフだよ。何せ命を救ってもらったからね」


 そう言って、ティエルが手を差し出してくる。

 それに応え、ティオも手を差し出し、握手する。


「ティオ様、今度この都市に来る時は、ぜひ二人でデートいたしましょう」


 握手を終えたところで、エリナが近づいてくる。

 そんな彼女に「エ、エリナさん……」と、ティオは戸惑った様子を見せる。


「くふふふっ……今度はアイリスさんとベルさんに見つからないように、ね?」


 戸惑うティオなどお構いなしに、エリナはそう言いながら、昨夜と同じように頬にキスをしてくる。


「あ〜! またそんなことして!」


「行くわよ、マスター!」


 怒った声を上げながら、アイリスとベルゼビュートが、ティオをぐいぐいと船に引っ張っていく。


 そんなティオたちを苦笑しながら、ティエルは見送る。


 こうして、ティオたちは美しい水の都、リューインを旅立つ――


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