20話 ランクアップ
「なるほど、迷宮での異変の原因はその妖精たちだったわけですか……」
ティオが経緯を説明し終えると、受付嬢は納得といった感じで言葉を漏らす。
被害に遭ったアイリスは複雑そうな表情を浮かべたが、無邪気にティオに甘えるリリスとフェリスを見ると、毒気を抜かれてしまったように小さく笑う。
「では、クエスト達成ということでいいですか?」
「はい。高ランクモンスターの死体をあれだけ持ち帰ってきましたし、妖精たちの証言もありますから、これにてクエスト達成とさせていただきます」
ティオの問いに、受付嬢が頷く。
持ち帰ったモンスターの死体の買い取り金と合わせて、今回の報酬を支払うから、少し待機していて欲しいと言われたので、ティオたちはギルドの酒場に移動することとする。
「そうだ。せっかくだし、ベルも呼んであげるか」
受付嬢が歩き出したところで、ティオがEXスキル《ブラックサモン・魔》を発動する。
漆黒の魔法陣の中から、ベルゼビュートが「うふふっ……会いたかったわ、マスター」と言って現れる。
ベルゼビュートの声に、受付嬢が振り返り、ギョッとした表情を浮かべる。
突如として人が現れれば当然である。
「ぼくのスキルで呼んだだけなので、気にしないでください」
「スキルで人を召喚する……!? 本当にあなたはいったい……」
ティオの適当な説明に、受付嬢はさらに目を見開く。
何か特別な力を持っているということを匂わせるには、実に効果的だ。
「すごいすごい! ティオは何でもできるのね!」
「綺麗な人です〜!」
魔法陣の中から現れたベルゼビュートを見て、リリスとフェリスは大興奮だ。
「あら? マスター、この子たちは?」
「ベル、この子たちのことは後で説明するよ。ひとまず酒場に移動しよう」
「うふふっ……お昼からアルコールなんて素敵ね。それじゃあ行きましょう?」
そう言って、フェリスを抱っこするティオの腕に軽く手を触れさせて、ベルゼビュートが寄り添ってくる。
「ず、ずるいです!」
慌てた様子で、アイリスもティオの反対側に寄り添う。
「あははは! ティオってばモテモテね!」
「でも抱っこは代わってあげないのです〜!」
頭の上でリリスが、そしてティオの腕の中でフェリスがさらに盛り上がる。
こうなっては仕方ないと諦め、皆を連れてティオがギルドの中へと歩き出す。
それを呆然とした様子で、受付嬢が見送るのだった。
◆
「なるほど、それじゃあ、その子たちを故郷に送り届けるための旅に出るわけね?」
「ああ。かわいそうだし、放っておけないだろう? 魔族の話も気になるし……」
酒場でグラスを傾けながら、問いかけてくるベルゼビュートに、ティオが頷く。
「ティオ様がそういうなら、一緒に行きましょう。救世の旅の始まりですね!」
リリスとフェリスを、故郷であるルミルスの大樹海に送り届ける旅に出ることを、アイリスは了承してくれるようだ。
「やった〜!」
「これで帰ることができます〜!」
リリスはティオの肩の上で、そしてフェリスは同じくティオの膝の上で、諸手を挙げて喜びを露わにする。
話の内容は詳しく聞こえなかったが、二人の無邪気な様子に、周りの冒険者たちも微笑ましげな表情を浮かべている。
「ティオさん、鑑定が終わりましたので、報酬をお支払いします。」
受付嬢が革袋を持ってティオのもとへと歩いてくる。
今回のクエスト報酬と、モンスター別の買い取り金額の内訳を聞きながら、アイリスたちとともに革袋の中を確認する。
なかなかに……というか、今回もかなりの金額となった。
これなら旅をするのにしばらく困ることはないだろう。
「それと……ティオさん、こちらをどうぞ」
そう言って、受付嬢が手のひらサイズの小さな箱を差し出してくる。
ティオは「何だろう……?」と、首を傾げながら、中を開ける。
すると、そこには白金色の冒険者タグが入っていた。
「これは、Aランクの冒険者タグ……?」
「はい、ギルドはティオさんの実力を認め、ランクアップを決定しました」
ティオの質問に、普段はあまり笑わない受付嬢が微笑みを浮かべる。
「おめでとうございます、ティオ様!」
「うふふっ、私のマスターなら当然よね?」
アイリスが興奮した様子でティオを祝福し、ベルゼビュートは妖艶に笑う。
「よくわからないけど、ティオはやっぱりすごいのね!」
「強くて優しくてすごいのです〜!」
意味はわからずとも、ティオが何かを成し遂げたことを理解したようだ。
リリスとフェリスも興奮した声を上げる。
「う、嘘だろ!?」
「黒魔術士がAランク冒険者だと……ッ!?」
周りで話を聞いていた冒険者たちが驚愕の声を上げる。
まぁ、底辺職と馬鹿にされる黒魔術士がAランクとして認められれば、その反応も当然かもしれない。
周りの反応に、何だか照れくさくなり、頬をぽりぽりと掻くティオ。
それとは反対に、アイリスとベルゼビュートが「「ふふんっ♪」」得意げな様子で胸を張る。
その拍子に、二人の豊満なバストが、ぷるるん……っ! と揺れ、それを見た冒険者たちが「「おうふっ!?」」と前屈みになってしまう。
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