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ダンジョン都市の再設計1


 魔大陸北部の町から、仲間のループ爺さんが家にお金を送金していた。活人拳を使うソーコは慈善活動をしながら、その町の人達と交流をしている。それが一番楽しいらしい。


 死霊術師のナギは、昼頃起き出して眠そうに俺についてくる。


「どこ行くの?」

「ダンジョン都市……だった場所だな。中央の首都の裏に山脈があったろ? その反対側に都市があったらしい。ダンジョンは攻略されて、すっかり寂れているって聞いたから行ってみようと思って。しかも、巨大な廃ダンジョンを探索してもいいっていうお墨付きも貰った」

「おおっ。行くの?」

「行くよ。それが俺の仕事だ。……なんだ? 一緒に行くか?」

「行くけど……。あのさ……。金が……」

「なに?」

「貯まりすぎてる。冒険者ギルドが払えないかもしれないって」

 基本的にそれほど稼いでいるつもりはないが、滞在費くらいしか支出はない。冒険者ギルドの宿に泊まれば、使う場所は食くらいなものだ。

「ええ? また? 冒険者ギルドが払わなくても勝手にやっていくよ」

「そうなんだけどさ」

「また、仕事を作れってことか?」

「その通り」

「とりあえず、向かいながら考えよう」


 馬車を乗り継ぎ、山へと向かう。ループ爺さんもソーコも後から来るらしい。どうせ巨大な廃ダンジョンだから時間はかかるだろうとナギは言っている。


「まぁ、早くなるようなことはないな。そもそも価値がある物が出るかどうかもわからないしな」

「出るから困っているんじゃないか。どうするんだ?」

「それは現地にいかないとわからないよ」


 なんで廃ダンジョンを探索しているだけで起業家みたいなことをしないといけないのかわけがわからないが、前にも同じ事があった。


 稼ぎすぎるとその地域の経済が壊れるという話だ。


「魔大陸での動きが制限されるぞ」

「そんなに!?」


 魔大陸では、通常の冒険者には自由業としてほとんど税金はかけていない。よほどの高ランク冒険者であれば税金をかけてくるが、それも固定資産税のようなものだという。

 俺もそうだしパーティーメンバーは全員ランクなど上げたことがない。今まで見つかっていなかったのに、唐突に高額の報酬を支払う必要が出てきて調べてみたら、とんでもない額を稼いでいる集団だったというのが冒険者ギルドの見方だ。

 理由は簡単。まずダンジョンから量を採ってくる。さらにダンジョンを空っぽにするから、再利用できる不動産、宗教的地域、採掘場、災害時の避難所としての価値も出てくる。地域に認知され経済が潤えば、ダンジョンを使おうとする商人も出てくる。

 

「できれば、北方の町に数年滞在していては貰えないかと私も言われていた」

「ナギの場合は俺の仕事を見てきた上に、商才があるからな」

「ないよ。そんなものは必要ないし。つながりがわかるだけで、別に……」

「それが商売には重要なんだろ。さて、そろそろか」


 俺は商売なんかより廃ダンジョンの方が重要だ。

 馬車は街に入り、駅で降ろされた。確かに、市街に入ったというのに閑散としていて革製品の店や小さなパン屋などがあるものの活気はない。

「新鮮な食品の店は午前中で終わってる。品物がないんだ……」

 『クローズ』と描かれた看板を見てナギが呟いて、少し呆然と立ち尽くしていた。記憶を聞いているのかも知れない。


「なにか聞こえたか」

「うん。本当に活気のある街だったんだね。今は見る影もないけど、そこ左。冒険者たちがいるはず」

 通りを左に曲がると、確かに冒険者ギルドがあった。


 宿を取って荷物を起き、早速、受付を済ませる。


「鍵は別にないんですか?」

「ないね。勝手に入って勝手に持っていっていい。もしなにかあればだけど……」

 ギルドの職員もやる気はない。そもそもギルドの建物自体は大きすぎるのに、冒険者はほとんど見かけない。冒険者かと思ったら、酒場の従業員だった。

「一応、記録だけは取るように言われているから」

 おそらく他の地域ともそれほど連絡を取れていないのだろう。職員には廃ダンジョンに向かうとだけ伝えて、とっととナギと一緒に外に出た。


「やる気はないね」

「ないだろうね。全盛期を知っている人たちからすれば、仕事はまったくないと言っていいんだ」

「じゃあ、残り物も多いと思うんだけど」

「それが、たぶん魔物の皮なんだよ。だから、まだ革製品の店はあるでしょ?」

「確かに……。商売があるならどうにかなるんじゃないのか?」

「なればいいけど、山屋に依頼が来たということは、後どれくらいあるのか知りたいってことじゃない? 銀行が革職人たちにどれくらいお金を貸せるか品定めしているんだよ」

「ああ、なるほどね」

 そういう調査依頼もある。


「じゃあ、私は革職人たちに話を聞いてみる。通りを真っすぐ行けばダンジョンだ」

「わかった。ありがと」

 ナギと分かれて、夕日が沈む中、俺は廃ダンジョンへと潜る。

 ランプに明かりを灯し、中に入っていく。確かに獣臭はするものの低階層では死骸はすべて地上に持っていかれているらしい。


 コンコン……ガン。


 通路脇に、侵入者を押しつぶす壁の罠があり、大量の骨が落ちている。罠を解除して、骨を麻袋に詰めていく。誰が誰の骨かなんてわからないだろうが、ここに在るより地上が見える場所に移してやろう。ドッグタグも多いし、潰された武器や防具などもある。銀や金も含まれているかも知れないので、固まりをちゃんと持ち帰る。落とし穴はほとんど埋まっているが土をかけただけで、中は探索されていないから金属探知機が鳴り響いた。


「罠に入っているのに、罠を理解していないというのはどういうことなんだろうな」

 世の冒険者は、ダンジョンという巨大な罠には興味はあるが、落とし穴には興味がないらしい。


 階段を下りていくと、竜の皮が乱雑に積み重ねられていた。剥ぎ取ったはいいが、持ち帰ることができていないのか。


「そりゃ革職人が必要なわけだ。仕事が終わらないだろ」


 竜の皮に骨もある。どうするつもりで残していたのかさっぱりわからない。ただ、その倉庫部屋の前の通路にはかなり罠が張られていた。


「ん? これ、正規ルートじゃないのか?」

 一度階層を上がり、ちゃんと一階層ごとにくまなく探索してみると、他にも階段がいくつかあった。迷路状になっていたらしい。

 階層ごとに倉庫部屋があり、厳重に罠が仕掛けられているものの、それなり価値のある品物が保管されていた。なぜか盗賊が入っていないのが不思議だった。

 明け方頃まで探索して、一度外に出る。


「どうだった?」

 ナギが出てきた俺を待ってくれていた。朝飯のサンドイッチまで用意してくれている。珍しく気が利く。


「誰も持ち出せていないだけで物が溢れている。罠がある通路が邪魔していたんだと思うよ。階層ごとに、ボスが違ったのかな。これで街が寂れるとは思えないんだけど。呪いでもあるのか?」

「いや、街の再建をしている役所には黙っているだけなんだと思うよ。役所に全部持っていかれるより、冒険者ギルドで小さく捌いていく方を選んだんだ」

「なるほどね。じゃあ、冒険者ギルドに報告すればいいだけか?」

「ん~、私も皮職人たちの聞き込み調査で、大量に竜の皮がダンジョンに残っているってことだけ知ったんだけど、その職員が行方不明になっているみたい……」

「ええ? 面倒なことを……」

 田舎の力関係は大変だ。


「皮職人たちは、そろそろ在庫がなくなるから竜の皮だけでも持ってこられないかって言っていたけど……」

「ちょっとだけ持ってきたよ。あんな量あったら一生かかっても仕事が終わらないさ」

「ああ、そうなんだ。山屋、この案件、冒険者ギルドを通さないほうがいいかもしれないね」

「そうするか」

 俺とナギはサンドイッチを食べながら、朝日が差す街を見下ろしていた。


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