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狼な奴ら


 都会の博物館で、魔族にはウェアウルフという頭部が狼になる呪いを持った民族がいると聞いた。実際に骨格標本を見せてもらいながら説明を受けて、偽物とは思えなかった。

 案外、その民族は地域に馴染んで暮らしているらしく、ダンジョンのマスターだったこともあるらしい。俺は「だった」という点に食いついて、今は廃ダンジョンになっているのかと聞いてみると「わからない」と学者は言っていた。

 魔王から貰った地図で確認してみると、確かに印がつけられている。


「俺は、行くけど、3人はどうする?」

「行くよ。私は人混みが苦手だから」

「私も疲れてしまいました。報酬はたくさん受け取りましたし」

「自分も何故か、旅の剣士としてコロシアムで十分に稼がせてもらいましたから、付いていきますよ」

 何故か、活人拳のソーコとループ爺さんはたんまり稼いだようだ。山奥で使うつもりだろうか。


 とにかく俺たちは馬車を貸し切りにして、その山奥へと向かった。



「あ、どうも」

 馬車を降りると、ウェアウルフと呼ばれるような頭部が狼の魔族が普通に村で暮らしていた。別に暴れるような者もいなければ、冒険者のように武器を持っているものもいない。

 むしろ、皆、農具を持って畑仕事をしている。


「この辺りにダンジョンがあると聞いたのですが……」

「ああ、あるよ。もうすっかり廃れてしまったけど」

 麦わら帽子をかぶったウェアウルフは、警戒もせずに答えてくれた。

「それを求めているのですが、場所を伺ってもよろしいですか?」

「おう。いいよ。向こうの杉林の中さ。なんか見つかったら、教えてくれよ。子供の頃は中に入って遊んでいたんだけど、ここ最近は誰も中には入らなくなっちまった。熊だとか魔物が出るかもしれないから気をつけて」

「ありがとうございます」


 場所を教えてもらって、早速ダンジョンへと向かうと、口を開けた狼のモニュメントがあった。


「こんなわかりやすいダンジョンがあるんだね」

 ダンジョンはモニュメントの口から中に入るらしい。

「じゃ、早速、いいかな」

 逸る気持ちを抑えながら、俺はいつものピッケルとランプを取り出した。

「じゃあ、我々は農作業を手伝いに行きます」

「あ、私も? 肩こりや腰痛を治してきます」

 ループ爺さんとソーコはウェアウルフたちと交流するつもりらしい。


「私は、ここで焚き火をしてる。たくさん声が聞こえるから、麻袋は多めに持っていったほうがいい」

「了解」


 俺は鞄に麻袋を詰め込んで、ダンジョンの中に入っていった。

 入口から入ってすぐに壊れたトロッコがあり、子どもたちが落書きした壁があった。いい感じの廃ダンジョンだ。


 序盤は本当に子どもの遊び場だったようで、罠も隠し扉もない。通路の扉に板が張られ、通行止めになっている。


 バコ、ベキ!


 ピッケルで扉を外し、奥へと向かう。すぐに獣臭が漂ってきた。

 鉄格子の扉がいくつもあり、大きな獣を飼っていたような跡があった。


「魔物使いか?」

 

 トラバサミや落とし穴などの罠も見つかった。落とし穴には冒険者らしき男の骨が埋まっている。麻袋に入れて、装備類は回収。安物ばかりなので全然もとは取れないが、気にしない。


 コンコン……ボコ。


 隠し部屋も見つかる。

 宝箱には、どこかで見たようなローブと指輪が入っていた。

 その後も毒矢の罠やトゲだらけの天井が下がってくる大掛かりな罠なども見つかった。もちろん、それだけ白骨化した魔族の遺体も見つかった。どの死体も安物ではあるが、武器を携えている者が多いようだ。


「戦士たちか? いや、闘技場?」


 最奥のボス部屋は円形闘技場になっていて、ウェアウルフの骨がいくつも観客席に座っていた。皆、それぞれ足元に自分の剣や槍を突き刺している。集団で死んだのかとも思ったが、それぞれ死んだ時期が違うようで、装備の劣化具合が違った。

 闘技場の中にもいくつもの使い古した武器が突き刺さっていた。


 その武器の中にひときわ大きなウェアウルフの骨が壁により掛かるようにして座っていた。ボスのようだが、この骨だけ武器は持っていなかった。

 代わりに割れたレンガがあった。

 傍らにランプを置いて、レンガを組み直してみると『来たるべき時のために……』と書かれていたらしい。

 

「来たるべき時が来なかったのか?」


 ボスの骨の後ろにある壁を叩いてみると、積石の一つが外れた。中からポータルのかけらのような模様の石片が出てきた。


「この一族は戦いの準備をしてきたのか」


 俺は、石片を持って入口へと戻った。


「骨が大量だよ」

「みたいだね。なにを持ってるの?」

 ナギは俺の膨らんだポケットを指さした。


「たぶん、ポータルの一部だな」

「本当だ。この幾何学模様、どこかで見たことある?」

「あるような気がするんだけどね。忘れた。でも、このダンジョンがウェアウルフたちの準備のためにあったことはわかったよ」

「準備? 戦いの?」

「どこかで戦争でもあったのかな」

「ああ、魔法戦争の準備兵だったのかもね」

「あ、それはありうるな」


 紅葉島のドーナツダンジョンで、ポータルの一部を見たのかもしれない。


 村に行くと、広場でループ爺さんとソーコが村のウェアウルフたちをマッサージしていた。広場には真ん中の一部がかけた小さなオベリスクがある。おそらく、そのオベリスクがポータルだったのだろう。ただ、村人に触られすぎたのか表面の魔法陣は見る影もない。


「この柱はなんです?」

 近くにいたウェアウルフの婆さんに聞いてみた。


「ああ、強くなれますように、と願う村のシンボルさ」


 ダンジョンで見た願いの果てを見た気がした。


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