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ファイナル・コンティニュー  作者: かんな らね
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04 FINAL CONTINUE(その4)

「「はぁ!?」」

 オレと翔太が同時に間抜けな声を上げるが、美空は喉の奥で笑い出した。

「やっぱりぃ、流石ねぇ。天才発明家であり、時空移動装置の生みの親。そして、わたしの大好きで大嫌いなパパ」

「おや、奇遇ですね。僕も貴女の可愛らしい顔はかなり好みなのですが、その曲がった根性は大嫌いですよ」

「未来では、顔はママ似で性格は意外とパパ似って評判だったよぅ」

 優樹と美空が睨み合う。

 でも、妙に納得だ。確かに二人の波長が似ていると思ったことはある。

「……ぐっ……。オレはずっと桜井といたが、お前なんか知らないぞ」

 腹の出血を芹歌に止血されながら仁夜が辛そうに口を開く。

「そりゃあ、そうでしょうねぇ。だって、わたしは颯人おじさまが行方不明になった後に生まれてるんだもの」

「……何だと?」

「やっぱり、仁夜先生の方が颯人おじさまって感じだもんねぇ。折角だからちゃんとお名前で呼ぶねぇ。……おじさまは今から一〇年後から来たんでしょ? わたしは更に一六年後。そう、今から二六年後の未来から来たのぉ。だから、颯人おじさまのことは写真とパパとママの話で知ってるだけ。因みにおじさまはパパが青い薔薇軍に確保される際に用済みだから殺される筈だったんですってぇ」

「成程、目的は芹歌さんの能力を継承した颯人の手助けを借りて、僕に時空移動装置を作らせることだったんですね」

「そうよぉ。やっぱりパパは天才ね。わたしが小さい頃に処刑されてしまったけど、ママはずっとパパは凄いって言ってたもの」

「何気なく救いのない未来を伝えるなんて、ホント我が娘ながら容赦無いですね」

「えへへぇ。褒められちゃった」

 褒めてはないだろう。いや、こいつら二人はよく分からん。でも、確かに性格が悪いところはソックリだな。

「颯人おじさまは、未来は青い薔薇にとって悪いものだと思っているんでしょぉ?」

「……そうだ」

「でもでも、それはおじさまの早とちりなのよぉ」

「何だと?」

「あぅあぅ。怖い顔で睨まないでよぉ。だってね、パパが発明した時空移動装置さえあれば青い薔薇は無敵だもん」

「どういうことなんだよ?」

 オレも思わず翔太に押さえつけられている美空に詰め寄る。

「わたしそんなに説明得意じゃないんだけどなぁ……。あのね、わたしの知っている歴史では、今日芹歌ちゃんが殺されるの。そして、青い薔薇の存在が世間にバレて酷い迫害を受け、屈辱の十年を過ごすの。……颯人おじさまが知っている歴史はここまででしょぉ? でもね、屈辱の十年を迎えた時、天才発明家である桜井優樹が友人の能力を研究して、時空移動装置を完成させるの。それから青い薔薇の大逆転が始まったわ。最初の時空移動装置はパパを青い薔薇軍へ連行する時にどこかに行ってしまったみたいだけど、直ぐに二号機、三号機と作らせたの。その間、パパはママと出会いわたしが産まれた。パパはわたしたちの為に一生懸命働いたわ。歴史を改変しながら、青い薔薇はどんどん強くなった。時空移動装置発明から数年で、形勢は完全に逆転したのぉ。未来では一般人はわたしたち青い薔薇の奴隷なの。人権も何もない。ただ踏みにじられる存在」

「……酷い……」

 芹歌が小さく声を漏らす。

「どぉして? だって、一般人なんて数が多いばっかりで何も役に立たないじゃないぃ。しかも、その数に任せて青い薔薇を迫害したのよぉ。でもね、パパも芹歌ちゃんの考えに近かったみたい。暴走する青い薔薇軍の状況に耐えかねて、ある日タイムマシンに仕掛けをしたの。パパ、どんな仕掛けだと思うぅ?」

「作動させると爆発するとか、そういうバレやすい仕掛けは作らないと思いますが……」

「うん。バレにくい仕掛けだったわ。自分ともう何年も前に行方不明になっていた颯人おじさましか使えないように時空移動装置を改造したの。難しい仕組みはサッパリなんだけど、時空の壁を超える際に人体を守るプロテクトが有ったんだけど、それを自分とおじさま以外に反応しない形に変えちゃったらしいのぉ」

「それは、相当ヤバイ改造なんじゃないか?」

「うん。颯人くんの言うとおりだよぉ。時期を同じくして、全ての始まりである芹歌ちゃんの死亡が確定的なものじゃなくなってきた……。つまり過去が不安定になってきたのぉ。それで、青い薔薇軍の人たちはカンカン。パパに直せって詰め寄ったわ。でも、パパは直さなかった。そして……」

「処刑されたわけですか」

「そうなの。そして、わたしとママは裏切り者の家族ということで一般人コモン落ちになったのぉ……」

「一般人落ち?」

 何となく想像の付く言葉だが、救いを込めて聞き返す。

「青い薔薇の特権を全て剥奪され、一般人たちが暮らす貧民街スラムに追放されたのぉ。……本当に酷いところだった。それに、青い薔薇のわたしたちを歓迎してくれるわけもないしねぇ。多分、今颯人くんたちみんなが思いつく限りの酷いことをされたと思うよぉ。それで、ママは赤ちゃんみたいになっちゃったの」

 自我が崩壊してしまったということか。優樹の顔面からはすっかり血の気が引いている。

「貴女の身の上話には興味ありませんよ」

「パパったらかっこつけてぇ。本当は聞いてられないんでしょ? 妻と娘が自分のせいでどれほどの罪滅ぼしを強いられたのか……」

「美空!」

 気づいたら大声を出してしまっていた。これ以上、優樹に辛い話を垂れ流してもらいたくないし、これ以上、美空に辛かった出来事を思い出してほしくもない。

「なぁに? 颯人くん?」

「何でお前は時間旅行出来たんだ? だって、オレか優樹しか時空移動装置に乗れないんだろ?」

「パパのシステムは遺伝子情報で識別してるのよ。だから、青い薔薇軍はパパと颯人おじさまと遺伝子情報が近いであろう血縁者を探したわ。でも、おじさまやパパの家族はもう何年も前に処刑されていた。生きている血縁者はわたしだけだったの」

「親子だって遺伝子の半分は別物だろ? そんな適当なシステムだったのかよ?」

「そんなわけないでしょぉ。わたしだって本当は乗っちゃダメだったよぉ。でも、桜井優樹と半分程度遺伝子情報が一致しているから、時間旅行時に身体は崩壊しないと分かったの。この時代で芹歌ちゃんの死を確定させればママを青い薔薇の階級に戻してもらえるって言われたのぉ。だから、こうしてここに来た」

「お前は青い薔薇の階級に戻れないのか?」

「颯人くんってば、本当は察しがついているんでしょぉ?」

「…………」

「無理やり時間旅行したわたしの身体はそんなに長くは持たないわよぅ。最初から言われてたんだけど、多分、あと数日が限界だと思う」

「!!」

 じゃあ、仁夜が昔聞いたという美空の遺体は恐らく本物だったというのか……。

「くそっ、結局このままじゃあ誰か不幸になるのかよ!?」

 オレの叫び声がステージ上に虚しくこだまする。

「……しかも自分の死に目に立ち会うなんて最悪だな」

 仁夜が苦しそうに微笑む。

「うるせぇ! ってか、お前、時間跳躍出来るんだろ? もう一度こうならないようにやり直せよ」

「オレだってお前たちと同じタイミングで時間跳躍してるんだ。もうほぼ能力切れだ」

「でもっ!」

「一刻……、オレはもう疲れたんだ。無限ともいえる時間の中。何の保証も希望も無く同じ時を繰り返す。今、穂苅の息の根を止めれば月乃は死なないし、未来が変わるかもしれないぞ」

「ふざけるな! それこそ何の保証もないじゃないか。しかも、お前を見殺しにして美空まで殺して、そんなんでオレたちがこれから普通に生きてけるわけ無いだろ!」

「でも、他に選択肢なんてないだろ! いいから殺せ!」

「ぐっ……」

 握りしめた拳に爪が食い込み、血が滴る。

 これでいいのか?

 これでハッピーエンドなのか?

 誰かの犠牲の上にしか幸せは築けないのか?

 オレは……オレは……

「こんな結末は絶対認めない!」

「颯人?」

 芹歌を始め、みんなが目を丸くする。

「これで良いわけないだろ!」

「でも……」

「そもそも、今日芹歌が死ぬような事件が起こらなきゃ良いんだ」

「え? どういうことなの?」

「あの武道館のコンサートで芹歌が青く光ったから、青い薔薇だってバレて、この学園に転校してきた。そして、能力が最高に高まる文化祭で死亡して、たまたま近くにいたオレに能力を能力搾取された。だから、芹歌がそもそもこの学園に転校してくるような事態にならなきゃいいんだよ!」

「ちょっと待ってよ、それって……」

「そう、あの武道館コンサートまで時間跳躍してやり直そう」

「でも、どの道能力発動時には身体が光っちゃうのよ?」

「芹歌。誰がお前の能力で時間跳躍するって言った? 居るだろ? もう一人同じ能力を持つ奴が……」

 その言葉に、今度は芹歌に抱きかかえられたままの仁夜が口を開く。相変わらず苦しそうだが、痛みに慣れてきたのか幾分最初より落ち着いて見える。だからって腹から流れる血が完全に止まったわけじゃない。このままじゃあ危険なことには変わりない。

「オレに時間跳躍させるってことか? 昨日説明したと思うが、オレは自分の時間跳躍を能力強化して、最大一週間までしかリープできないぞ。それに、時間跳躍を繰り返して能力自体が枯渇しかけけている」

「ああ、だから能力強化すればいいんだろ?」

「……能力強化しても今の状態だとせいぜい半日が限界なんだ」

「もう一人、能力強化出来る奴が居るだろ?」

「あっ……」

「そうだ。オレが仁夜、お前を更に能力強化する。オレもお前も同じ人間だ。だからお前と芹歌の波長も合うはずだ。だったら、時間跳躍で一緒に意識を飛ばせるだろ? それで、オレたちの能力で芹歌を武道館のコンサートに送り届ければ、芹歌自身の能力は使っていないんだから、身体は光らない。光らないということは、この学園に来る理由がなくなる。つまり――」

「歴史が変わるな。だが、危険な賭けだぞ」

「このまま後味悪いエンディングよりマシだろ?」

「若いなぁ」

「実際、お前より一〇歳若いんだ」

 未来の自分に憎まれ口を叩いてから、芹歌に向き直す。

「行こう。一ヶ月前へ」

「うん」

 芹歌は仁夜を抱きかかえたままオレの腕を取る。

「優樹、翔太……それに美空。行ってくる」

「もし上手く行っても僕等にはその記憶が無いんですね」

 優樹と話していると、仁夜が軽く咳払いをする。

「水を指すようなこと言って悪いが、オレの能力で時間跳躍するということは、同一人物である一刻は上手く記憶を継承して普通に時間跳躍出来るだろう。まぁ、一ヶ月も戻れるかはやってみないと分からないがな。だが、芹歌まで上手く記憶を引き継いで時間跳躍出来るのかは本当に分からないぞ」

「例え芹歌が覚えてなくても、オレが守る」

 芹歌の瞳を見ながら強く答える。

「……そうか。じゃあ、これ以上言うことはない。行くぞ」

 仁夜はどうにか起き上がり、芹歌とオレの手を取る。オレも芹歌と仁夜の手を強く握り締める。三人で丸くなると、仁夜が意識を集中し始めた。

「今だ! 能力強化しろ!」

 仁夜の声でオレも力を集約させる。同じ場所で同じ人間が一緒に能力を使う。そんなあり得ない事態に空気が大きく歪んでいく。まるで、凄い重力に押しつぶされてしまいそうだ。手放しそうになる意識を、舌を噛むことでどうにか引き戻し、より一層集中する。

「これで、最後だ!!!!!」


 世界は暗転した。


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