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魔女と傭兵  作者: 超法規的かえる


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14

朝早くから起きた二人は宿で朝食を済ませるとギルドに向かった

早めに来たというのにそれなりに人が来て依頼を吟味している


「ではあとで」


シアーシャもその中に入っていき今日の仕事をもぎ取りに行く

ジグはその喧騒に背を向けると受付に向かった

先日とは別の受付嬢がジグに気づいて対応する


先日シアーシャが部外者は同行できるのか質問した際に申請をすれば可能とのことなのでその手続きのためだ

手続き自体は非常に簡単なものだそうだ

この制度を使うものはそれなりにいるらしい

主には荷物持ちだが、魔獣生態研究の学者などが使うこともあるとか



「同行者申請をしたい」

「初めてでしょうか?まずはこちらの書類にご記入ください」


冒険者の登録に比べるとずいぶん簡単なそれを手早く記入して渡す

書類を確認して説明を受ける


「同行者には特に制限がかかりませんが、その分ギルドからの保証もないので十分注意して同行するようにして下さい。また、他の冒険者との諍いにギルドは一切干渉いたしません」

「襲われた場合はどう対処すればいい」

「憲兵に被害届を出してください」

「素晴らしい対応だ。ありがたすぎて涙が出てくる」

「恐れ入ります」


顔色一つ変えずに営業用スマイルを保つ

同行は許可するが、何があっても責任は取らない

あくまで国民としてこの国の法律に従って裁かれるだけというわけだ

死人に口があれば、だが


申請が終わると依頼板の方に戻る

シアーシャは先に依頼を選び終わっていたようだが、一人ではなかった

両隣にいかつい男が二人座っていた


「まったく」


彼女の容姿を考えれば当然かもしれないが、男が寄ってくる

下手をすれば普通の護衛より面倒かもしれないが、そうも言ってられない

ジグはため息をつきながら近づく

しかし聞こえてくる会話から彼の予想とはずいぶん状況が違うようであった


「なるほど。それで魔術を簡略化しているんですね」

「そういうことよ。シアーシャちゃんは覚えがいいなぁ!」

「教え方がいいおかげですよ」

「そう褒められるとオジサン嬉しいな!」


いかつい男が照れくさそうにしている

想定外のその光景に思わずジグの足が止まる


こちらに気づいたシアーシャが手招きした


「ジグさん、こちらベテラン冒険者のベイツさんとグロウさんです。二人に冒険者のこと色々教えてもらってました」


男二人がこちらを見る

シアーシャと話していた方がベイツ、黙って聞いていた方がグロウというらしい


「おう兄ちゃん、駄目じゃねえか。こんなかわいい娘ほったらかしにしてちゃあ」


ベイツが周囲を見る

睨みのきいた一瞥にこちらを遠巻きに見ていた冒険者が慌てて視線を逸らす

そのほとんどが若い男だ


「盛りのついたガキがわんさかいるんだからよぉ」


どうやら下心満載の男共をブロックしてくれていたようだ

ジグの認識が甘かったようで、想像以上に狙われていたらしい


「すまない、連れが世話になったようだな」

「気にする、な。新人フォローするの、経験者の仕事」


グロウと呼ばれた男がたどたどしく喋る


「そういうこった。まあいつか出世したらその時の新人に返してくれや」

「そうやって回していくんですね。わかりました」


熟達者のお手本のような発言に二人は感心する


「組む相手を紹介してやってもよかったんだが、そいつは必要なさそうだしなぁ?」


意味ありげにジグを見るベイツ

ジグはその顔に見覚えがあった

先日睨みを利かせた実力者のなかに彼の顔があったことを思い出す


「兄ちゃんは冒険者じゃないんだろう」

「ああ。護衛兼荷物持ちだ」

「ならいい。手を出しすぎるなよ?」


本当に面倒見のいい男たちだ

改めて礼を言うと二人は自分たちのパーティーのところへ戻っていった


それを見送った後シアーシャが選んできた依頼を聞く


「今回受けたのは袋狼の討伐です。袋狼はなんと卵生でお腹の袋に沢山の卵を入れて孵化させるんですって」

「それも確かに興味深いが、できれば危険度や習性などを聞きたいな」

「そうでしたそうでした」


研究肌なのか興味をひかれたことを調べたくなるタイプらしい


「この魔獣は繁殖力が強くて定期的に討伐依頼が出てるんです。数が増えてくると食料を求めて森の奥から出てくるのでそのあたりが目安ですね。危険度としては普通の狼と大差ないようです」


つまり群れると厄介ということだ

統率の取れた狼の群れは手慣れた傭兵でも手を焼くことがある

だからこそ定期的に討伐依頼が出るのだろうが


「とても初心者向けの依頼ではなさそうだな」

「今受けられる中で一番難しそうなの選んできましたからね」


ギルドで若い男がシアーシャを気にしていたのはこれのせいもあるだろう

無論下心も大いにあっただろうが、初心者がいきなり無茶をしようとすれば止めるのは当然だ

とはいえ彼女は冒険者としては初心者だが、戦闘能力に関しては折り紙付きなのでいらぬ心配である


「ずいぶん飛ばすな。上を目指すつもりか?」

「ある程度は。冒険者って等級があがるといろんなところで恩恵が得られるんですよ。等級が上がらないと開示されない魔術書もいっぱいあるんです。ひとまずはそれ目当てです」

「こう言っては何だが、魔女に人間の魔術書が役に立つのか?」


実力が違いすぎて役に立たないのではないか

当然の疑問だが、彼女はかぶりを振る


「とんでもない!さわりだけ見た程度ですが、はっきり言って魔力の効率的な扱い方では圧倒的に負けてますよ」

「なんだと?」


まさかの返答だ


「人間は少ない魔力をうまく使って最善の結果を出すことに工夫を重ねています。それこそ無数の人が、何百年もかけて。たかだか二百年程度独学で学んできた私が勝てるわけありませんよ。魔力が大きいがゆえに多少の効率の悪さは気にも留めないんです」


力のない者の方が、少ない力を有効活用しようと努力する

魔女にここまで言わしめるとはこの地の人間も大したものだと、ジグは驚いた


「それにどうやら、魔術を誰にでも使えるようにした道具など私の知らないものも沢山あるようなんです。私はそれが知りたい」


恐らく初めてなのだろう、何かを求めて野心を燃やすというのは

今の彼女は様々な欲求に飢えている


「目的ができたようで何よりだ。ではそろそろ行くか。現地まではどのくらいだ?」

「徒歩で七日です、が…とある手段を使えば一瞬です」

「は?」


七日かかる距離を一瞬?

ジグは言っている意味が分からずに首をかしげる


「まあまあ、ついてきてくださいよ」


彼女はそう言って左手の部屋に行く

そこには冒険者が列をなしていて、受付にカードを見せて奥に入っていった

列はスムーズに進み彼らの番になるまでさして時間はかからない

シアーシャがカードを見せて二、三言話すと奥に通された


「カードを」


促され同行許可カードを見せる

そのカードを確認して視線で入るように示される


部屋の中には光る文字を書き込まれた石板らしきものが敷き詰めてあった

中にはすでにシアーシャがいて興味深そうに石板に刻まれた文字を見ている


「中央に立ってください」


部屋にいたローブを着た男に言われて二人は石板の真ん中に立つ

男はそれを確認すると手をかざして詠唱を始める

それに合わせて石板が光る

光はどんどんと大きくなり、視界を埋め尽くしていった


「っ!」


とても目を開けていられないほどの光に二人は包まれた


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― 新着の感想 ―
うーん、200歳w
[気になる点] >さわりだけ見た程度ですが 細かいですが…さわりの使い方を間違えているかと思います。 本来のさわりは「要点」なので、さわりだけ見た「程度」という表現に違和感を感じました。
[良い点] 卵は羽化ではなく孵化では?
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