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56 牧場計画2

 すぐに宰相もやってきたので、まとめて話をさせてもらった。王様も宰相も少しやつれたような気がするのは気のせいだろうか。


 美味しいステーキでも食べて元気になってもらいたい。目の前で焼かれたステーキを緊張した面持ちで見ているだけの二人。


 もう少しテンションを上げてもらいたいところだけど、ドラゴン肉を食べれば少しはやる気も出るだろうか。


「あ、あのー、牧場の件はかしこまりました。王宮御用達牧場としてすぐに許可を出します。問題は実際に飼う動物でしょうか」


「何か大型の珍しいモンスターは知らないか?」


 誰かが食べたことのあるモンスター肉だと違う肉だとバレてしまう。


「王都近郊では大型のモンスターはおりませんから、私どもで用意するのは難しいかと。宰相、何か良い案はないのか?」


「大きな家畜といったら牛ぐらいしか思い浮かびませんが、牛では普通すぎますよね……」


 牛肉とドラゴン肉では、その美味しさに天と地ほどの差があるので説明に無理が出てくる。


「とりあえず、これがそのステーキだ。試しに食べてみるといい」


 美味しい匂いが漂っているものの、よくわからないドラゴン肉を食べさせられるということに少なからず恐怖を抱いているのだろう。


 恐る恐る口に運ばれると、その表情は一変する。夢中でナイフとフォークで切り分けてはすぐに口の中へと放りこんでいく。とても貴族とは思えない食べ方だ。


 何か実験でもさせられるのではないかという恐怖から解放されるが如く、もりもりと食べていく。


「ご満足いただけたようだな。量的には少なくない数を王都へ用意することができる」


「こ、この肉を定期的に食べられるのですか……」

「す、素晴らしい。この荒々しくも濃厚な肉質、まさに最高の素材でございますな」


「どこかにこの肉ということにしても大丈夫なモンスターとか知らないか?」


「それでしたら、山岳に生息するモンスターバフォメットなどいかがでしょうか」


 宰相が何か思いついたかのように口にしたのは大型の黒山羊のモンスター。大きさとしては申し分ないか。


「ほお、バフォメットは近くにいるのか?」


「今もいるのかは不明ですが、以前勇者パーティに依頼をして討伐してもらったことがあります。その時は死闘だったこともあって食材肉の素材提供はありませんでした」


 なるほど、肉を食べられていない大型のモンスターで、勇者パーティが苦労しなければ倒せない実力であるならば申し分ない。あとは話し合いが出来るモンスターかどうかだろう。


「わかった。ではドラゴン肉は、そのバフォメットということにしよう。交渉して何頭かを牧場で育てているように見せかける」


「し、神獣様、そ、その、バフォメットを飼い慣らすことなど可能なのでしょうか?」


「問題ない。飼育場所も王都から離れたルミナス村であればそう問題にもならないだろう」


「そ、それはそうでございますが……」


 話し合いが難しい場合、戦闘からのテイムになるだろうか。最悪の場合、ユリイカに頼んで恐怖で押さえつけることになるのだけど、まあ何とかなるだろう。


「宰相、バフォメットを討伐したという場所の地図を用意してくれ。すぐに確保にとりかかる」


「は、ははっー。す、すぐにお持ちします」


「それでは準備が出来たらすぐに向かおうか」


「あ、あのー、神獣様」


 申し訳なさげに王様が右手を挙手している。


「何だ?」


「勇者アシュレイのことなのですが……」


 そういえば、いろいろあって勇者のことをすっかり忘れていた。



 どうやら、王都で闇ギルドが壊滅した爆発騒動の後に勇者アシュレイが王宮へと乗り込んできたのだそうだ。


 内容としては闇ギルドに依頼してレティを殺害しようとしたのは何故だ。こちらは捕らえた犯罪者から全て話を聞かせてもらっているんだ! といった感じ。


「もちろん証拠は残っておりませんので言われた通りに知らぬ存ぜぬで追い返してはいるのですが、アシュレイもしつこく、王宮との関係性が悪化してしまっているのです」


 自業自得とはいえ、王様としてもテレシア姫と結婚させたいだけにこれ以上関係性が悪化するのは複雑なのだろう。


 僕としても王宮と良好な関係を築いていきたいので、面倒くさくはあるものの上手く対応していかなければならない。


「それでは先に勇者アシュレイの方から片付けよう。今から勇者を呼び出せ。王様は私の言う通りに話を進めるように」


「は、はあ……」


「悪いようにはしないから安心しろ。テレシア姫との関係も深められるように話をする」


「そ、それは誠でございますか! ありがとうございます」


 王様の疲れきった顔が少しだけ和らいだように思える。


 さて、どのように話を持っていこうか。

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