エイプリルフールの嘘
しいなここみさまの「朝起きたら企画」参加作品です。
――朝起きたら、誕生日だった。
私の誕生日は4月1日だ。一番、遅生まれの誕生日。
しかも、大体春休みの真っ只中で迎えるから、祝われることもなかった。新学期に「誕生日いつ?」と聞かれても、次の年にはどうせ忘れられていた。
私は、自分の誕生日が大嫌いだった。
◇ ◇ ◇
深い眠りから覚めた。
深い深い、眠りだ。
もうしばらく動かしていなかった体も、うまく動かない。
そこは、室内だった。
前方のモニターの電源がつく。
――コールドスリープ計画にご協力いただきありがとうございます
――無事貴女は眠りから覚めることができました
……コールドスリープ?
眠りの前の記憶を掘り起こそうとする。
――無駄ですよ 記憶は消去されています
――貴女はコールドスリープ計画に同意されました 記憶消去も同様です
――100年後の誕生日に起きることを条件として
どうやらここは宇宙船らしい。窓から見える銀河がそれを証明していた。
宇宙船内のデジタルカレンダーを見ると、間違いなく今日は4月1日だ。
……うそでしょ?今日はエイプリルフールなんだから。
周りを見ると、人のいなくなったカプセルがたくさんある。
――周りのカプセルは他の計画参加者のものです
――残念ながら原型を留めることができませんでした
っ、原型?
を、留める……?
――えぇ想像の通りです
――貴方の運命は違いそうですが
エイプリルフールに隠された嘘。
それを彼女は知らない。
――コールドスリープ計画には一体だけ"感情搭載型アンドロイド"が含まれている




