合体訓練
数日後。
演習場に集まった、ハリス、ロディ、ユーリは、それぞれの機体の中にいた。
本番での合体の成功率を上げるため、実戦を想定しての訓練を行うからだ。
アイク、シャオ、デューイとハナは、格納庫内で待機している。
『さて、準備は整ったかな? それじゃあ始めようか!』
レインの声が、通信越しに響く。その声色は、いつも通り楽しそうだ。
そんなレインに、ロディが珍しく声をかけた。
「レイン博士。楽しむのは結構だが、合体機構の確認は何度行う予定だ?」
『そうだねぇ、状況に応じてかな?』
「……承知した」
納得していないのが分かる声で、ロディが返答する。
そんな彼女の反応に、ハリスは苦笑し、ユーリは静かに頷いていた。
もっとも、それは音声通信のため見えていないのだが。
『カウントダウンに入ります。ハリストフォル・ハクルート大尉、ブローディア・フォン・エルフシュタイン中尉、ユリシーズ・バーレイ准尉。タイミングを合わせて下さい』
エッダの声を合図に、カウントが始まる。
ハリス、ロディ、ユーリはそれぞれの機体を操作し、変形体勢に移行する。
三機による合体は、実に複雑で繊細だ。
少しでもズレが生じると合体は成功しない。
そのため、張り詰めた空気……緊張感が関わる者達全員に広がる中、訓練が開始された――
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それから――数か月が経過した。
その間、訓練は何度も実施されたが、完全な合体には至らなかった。
原因究明のため、機体の確認や調整が現在最優先で行われている。そのため、合体機構を有しているハリスのエヴァンゲリウム、ロディのキルヒェンリート、ユーリのエルプズュンデは出撃出来ない状態となり、必然的に疑似怪獣への対応は残りの合体機構が無い三機が行う事となっており、アイク、シャオ、デューイとハナの不在が増えた。
その状況を快く思ってはいない。少なくとも、ロディとユーリはそうだ。
ハリスは、隊長という立場もあってか、レインと打ち合わせている事が増えており、そもそも考えている事が共有出来ていないのだが。
それでも、現状が良いとは誰も思っていないのだけは、事実だ。
だからこそ、歯がゆい想いを抱きながら、ロディとユーリは援護を積極的に行っている。
アルプ機関にも協力を要請しているため、支援体制は整って来てはいるが……それでも、現状打破の一手にまでは、まだ遠く。
それがまた、隊員達含めた皆を焦燥させるのだった――
但し。
レイン・エンジェルという男だけが、いつも通りであったが……。




