司令故の苦悩
その頃。
司令室にて――
トロイメライ戦隊司令、ヴァルターは椅子に座って頭を抱えていた。
その理由は……。
今、レイン達で対策会議を開いていると聞いている。
……トロイメライ・エルプズュンデ、キルヒェンリート、エヴァンゲリウムの合体機構解除の話も。
元々、トロイメライ戦隊自体がカタストロイ本体――大災害の悪魔を倒すために存在している。
単騎だが、役割分担を行う事で機動性を上げようと試みたシュッツ・エンゲル。
単騎では不可と判断し、補助想定で開発されたトーデス・エンゲルとヴュルク・エンゲル。
これらのデータは、量産計画の発案時に公開し、実際世界各地の部隊や軍隊に配備されている。
しかし、それ以前に……そもそも、合体を想定して設計された三機のデータは現在も秘匿している。
その全容を知るヴァルターだからこそ、ある懸念があった。
それは、合体機構のテストではベストな結果が出ていない、つまり、完全な合体成功が出来ていないのだ。
この事実は、実践で行う事へのリスクやデメリットを否が応でも考えさせるに十分だ。
この懸念は、ヴァルターだけではなく総括であるコズモもしている事だ。危険すぎるのではないかという――
(本当に、合体機構は必要なのか? 機体もだが、パイロット達の命にも関わる問題だ……)
兵士は常に最前線で命を懸けて戦っている。
死と常に隣合わせであり、命を失う事も覚悟の上で戦場にいる。
だが。
彼らは人間であり、尊重されるべき命の一つだ。
大昔の大戦で、捨て身の戦略を行った国家もあった。
……捕虜や迫害対象者達へ非人道的行為もあった。
それらは、大戦以降の後世において少しずつ減少していったが、完全に払拭できたわけではない。
カタストロイという脅威を前に、一枚岩になっているかと言えば、そうでもない。
それでも、いや、だからこそ、トロイメライ戦隊は多様な人種で……いや、適正や能力等で判断して編成された組織形態の一つであり、部隊だ。
勿論、部隊内で完全な平等が築かれているかと言われれば、それは理想論としか言いようがなく、小さいながらも対立があったり、衝突したりしてきている。
ヴァルターの事も、気に入らない幹部もいるのは事実だし、それで計略もあった。もっとも、それら全て解決に至っているのが、レインとハリス、二人の若者の恐ろしいところである。
(あの二人と出会ったからこそ、今の立場にいるわけだが……運命に抗う事が本当に可能なのか? いや、そもそも……)
「我々に、赦されるのだろうか……生存し続ける事が」




