各自の動向
(誰……かしら? ロディ中尉? それともシャオ?)
ハナが思い浮かぶのは、この二人だけだった。だが、聞こえて来たのは……。
「ハナか? おれだぁデューイだけどよぉ……ちょい良いか?」
「デューイ……珍しいわね。今開けるわ」
ハナが扉のロックを解除し開けると、少し気まずそうな表情を浮かべたデューイが佇んでいた。彼が任務や訓練以外でハナの元へ訪れるのは珍しい。不思議に思いながら、ハナが声をかけようとした時だった。
デューイが口を開いた。
「ちょいと話を……な? お前はさぁ繊細だし、良い奴だからよぉ。なんか、その……抱え込んでねぇか?」
「そ……れは……」
完全に否定出来ない自分に気づいたハナは、ぎこちなく微笑む。
「ハナ。何が引っかかってんのか、話してくれねぇか?」
「……わかったわ。場所を変えましょう」
「おう」
ハナが部屋から出てきて、扉のロックをかける。今の彼女の服装は隊服ではなく、室内用に配布されている上下グレーのルームウェアだった。
「ルームウェアから、着替えれば良かったわね……」
「いや、そこまで気にならねぇから、安心しろぃ」
デューイの言う通りで、ルームウェアで艦内を歩いている者も多い。通気性が良く、動きやすいのもあるが、デザインがシンプルなのも要因だ。故にそこまで気にしないのは事実なのだが、ハナはそこを気にするタイプらしい。
「不思議そうな顔をして、どうしたのデューイ?」
「いや? なんでもねぇさ。それより、どこで話すつもりでぃ?」
「そうね……艦内のフリースペースでいいかしらね……」
「おう。んじゃ、居住スペース出て、エレベーターで上層部までだなぁ」
「そうね」
こうして、二人は移動する。
微妙な空気に包まれながら――
****
その頃。
ユーリとロディは、フリースペースにいた。
機体の整備の進捗を確認し終えたユーリと、たまたま小休憩でコーヒーを飲みに来たロディが、顔を合わせたため、なんとなく共に休憩する事にした。
紅茶を口に含むユーリと、ブラックコーヒーをゆっくり飲むロディ。
二人の会話内容は……カタストロイについての事だった。
「知性があるというのは納得出来る説だ。だが、だとしたら……狙いはなんだと言うのだ?」
「ロディ中尉、俺もそこが引っかかっている。侵略か? あるいは……破壊か」
「やはりそこに至るか。ここまで読めない相手だが……更に不可解なのは疑似怪獣と信徒の件だ。彼らは何故……?」
「そこだ。破壊するだけなら、信徒にする必要がない。だが、侵略するにしては、破壊行為が目立つ」
その矛盾がどうにも引っかかる二人の視界に、エレベーターから上がって来たデューイとハナの姿が見えた。
「あの二人が、ここに来るなんて珍しいな」
呟くロディにユーリも頷くと、二人は会話を再開する。
果たして――答えは出るのだろうか……。




