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アイクとシャオ

 あれ以降、不気味な事にカタストロイは出現しなくなった。

 それがより、緊張感と違和感を抱かせる。

 アイクもまた、その一人だ――


 ****


 自室にて。

 アイクは、拭いきれない違和感の正体を探るため、ベッドに横たわりながら思考を巡らせていた。

 

(カタストロイ本体と遭遇するのは、データと()()の経験を合わせると、三回目。二回目までは、行動パターンは同じだった。なのに……何故、三回目は違う行動を取った? どうして唐突に姿を消した?)


 ――まるで、こちらの動きを確認していたかのように。


(まさか……意志を持って、観察でもしていたってぇのか? カタストロイにそこまでの知性があると?)


 今まで、カタストロイには知性が無いという見解が一般的であり、流布されている情報だ。

 理由は、出現しては街を破壊し命を奪う。

 その行動以外を示さないからだ。

 だが、今回はどうだろうか? まるで、敵情視察のような動きに、トロイメライ戦隊が対峙した、疑似怪獣(ハイ・カタストロイ)のデータを反映させたかのような動作。

 明らかに、知性を感じる。


(そういや、レイン博士はカタストロイ本体の知性について、懐疑的だったっけ? それが的中したっつーわけか?)


 どうにも煮え切らない思考の中、自室の通信端末からの呼び出し音で我に返ったアイクは、身体を起こす。アイクの元に人が来るのは珍しい。

 不信感を抱きつつ、アイクは扉に備え付けられている通信端末を確認すると、そのモニター越しにはシャオの姿があった。


(珍しいっつーか……どうしたってんだ?)


 アイクは、後ろめたさを心の奥に隠し、何事もないように通信端末の音声出力ボタンを押す。すぐに、シャオの声が響いて来た。


『アイクー? 来たぞー!』


「来たのは分かってますよ? 何のようです?」


『んー? そうだなー……気になったからだぞー!』


 シャオが自分を気にかけていた……その事実に、衝撃を受けた。

 自分のエゴで彼を遠ざけ、そのエゴが間違いであった事を認識したばかりだというのに。


(責めに来たっつーわけではねぇだろうし……何が気になったんだ?)


「とりあえず……室内に。どうぞ」


 シャオを室内に招き入れると、彼はアイクをまっすぐ見つめる。そして、はっきりと聞き取れる声でシャオが告げた。


「アイクが、いつも以上になんかしんどそうだったから! 来たぞ!」


 その言葉に、アイクは思わず目を丸くするしかなかった。いつもという事は、シャオ本人に気づかれているという事。

 それがまた、アイクの心に影を落とす。

 だが……それを覆すのもまた、シャオの言葉だった。


「アイク! オレのこと、気にしてくれてるだろー? ありがとうなー!」


 そう告げたシャオは、照れ臭そうに笑うが、アイクの心を晴らすのに充分だった――

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