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奥の手は届き……

(さて。レインの奥の手が届くまで、どう致しましょうかね?)


 こうしている間にも、小型の疑似怪獣(ハイ・カタストロイ)となった者達に襲撃されている上、グシオンからの攻撃も止まないままだ。凌いでいられるのも、時間の問題だろう。


(時間稼ぎにしかなりませんが……やらないよりはマシですね)


「デューイ少尉、ハナ少尉。こちらも障壁(バリア)を張りましょう」


『えっ!? ですがあれはこの()()だけでは!!』


 声をあげるデューイに対し、ハリスは冷静だ。いつも通りの口調で返す。


「凌ぐ事が最優先です!」


『りょ、了解ですぜ! 隊長! ハナ、やるぞ!』


『わかったわ、デューイ! シュッツ・エンゲル、エネルギー置換! 障壁(バリア)モードへ移行します!』


 シュッツ・エンゲルの持つ十字架小型兵装フライハイト・クロイツの周囲に、障壁(バリア)が生成される。それをデューイとハナ、二人の操作で()()された。シュッツ・エンゲルとエヴァンゲリウムの周囲を守るように展開された障壁(バリア)。その効果により、一時的ではあるが小型の疑似怪獣(ハイ・カタストロイ)とグシオンの攻撃を防げるようにはなった。

 その間に、ハリスが座標を指定しレインの手札を待つ。


「到着まであと三十秒ですか。ほぼ賭けですね……」


『その賭けだけど~! 成功率高いよぉ! はい、到着ー!』


 レインの楽しげな声が通信越しに響く。到着したのは、純白の棺だった。エヴァンゲリウムは棺に触れると、起動させる。


「行きますよ! ベフライウング=シャイン!」


 純白の棺から光が放射され、見る見るうちに小型の疑似怪獣(ハイ・カタストロイ)となっていた隊員達が元の姿……人へ戻って行く。もっとも全員意識がないのか、次々と倒れて行くが。

 その様子を確認したハリスは、シュッツ・エンゲルに通信を入れる。


「お二人は、彼らの保護を! 僕がグシオンと対峙している間に早く!」


『了解ですぁ隊長! ハナ、解析データを隊長に!』


『ハリス隊長に送りました! 我々は()()して保護にあたります!』


 シュッツ・エンゲルが二機に分離する。上半身がデューイ、下半身がハナが搭乗している。その状態で変形し、飛行モードになった二機は次々と隊員達を救護して行く。その間にも、グシオンとハリスの駆るエヴァンゲリウムは対峙していた。

 互いにけん制し合う。


(時間稼ぎをするには、かなりキツくなって来ましたね……そろそろ()()を起動させますか)


 ハリスがコンソールを操作し、呼び出すのは十字架型複合兵装(クロイツ・クリンゲ)だ。座標を指定するとグシオンの攻撃を避け、かわしながら到着を待つ。空から降りて来た十字架型複合兵装(クロイツ・クリンゲ)を手に持つと、素早く動く。

 ――標的(ターゲット)に向かって……。

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