脅威は伝播して行き敵となる
「さて、彼女達はどういう性能なのでしょうね?」
疑似怪獣グシオンをモニター越しに見つめながら、ハリスはエヴァンゲリウムを駆る。
それに気づいたらしく、グシオンが二対の口から同時に光線を放った。ハリスはギリギリでかわしながら近づいて行く。
「銃剣起動、モード切替完了。エネルギー砲、射出!」
エヴァンゲリウムが銃剣を構えて放った攻撃は、確かにグシオンへ命中した。
だが……。
『ダメです、隊長! 障壁で防がれました!』
「そうですね、デューイ少尉。ハナ少尉、あの障壁の解析は可能ですか?」
『りょ、了解です隊長! 解析してみます!』
「お願いします。デューイ少尉は引き続き、援護を頼みます」
『承知です!』
会話している最中も、グシオンからの攻撃は止まない。二対の口から、ランダムで放たれる光線をかわしながら、二機は動く。
ハナが解析している間の時間稼ぎも含めて、デューイとハリスは連携で動いて相手をかく乱させる。
その時だった。
『は、ハリス隊長! 伝播を受けた者達が変異し始めているようです! 個体としては小さいですが……厄介かと!! どうされますか!?』
ハナの緊張感に包まれた声が響く。ハリスは思考を瞬時に巡らせる。
(困りましたね……グシオンだけでも厄介だというのに、他の者達も変異しているとなると……)
そうしている間にも、変異した小さい疑似怪獣が迫って来る。完全に囲まれた形となったエヴァンゲリウムとシュッツ・エンゲルは、動きを一旦止めざるを得なくなる。
『隊長! コイツはやべぇぜ!? 基地にいたほとんどがって事ですよね、これ!?』
デューイの焦った声に、ハリスはなるべく冷静な声で返す。そうしなければ士気に影響するからだ。
「落ち着きましょう? 疑似怪獣グシオンと化したコールフィールド姉妹はともかく、隊員達はまだ日が浅い。元に戻せればあるいは……」
もっとも、その元に戻す方法は確立されていないのだが……それでも手を打たないよりはマシだと判断したハリスは通信をかける。宛先はレインだ。
「聴こえていましたね、レイン?」
『あぁ、勿論だとも! ボクだからね!』
自信に満ちた若い男性の声が響く。レインはこの状況だというのに、愉しげだ。普通なら咎める所だが、ハリスは気にせず話を続ける。
「貴方の事です。何か手を用意しているでしょう? いますぐそれをお願いします」
『流石はハリスだねー! ボクを良く理解している! それじゃあ近くに投下するから、頑張っておくれよ~!』
あっさりと解決策を出すレインに、デューイとハナの驚く声が響くが気にせずハリスは、手札が来るのを待つのだった――。




