【22】
「おら、違うだろ、もっと気合入れろ!」
「ひゃ、ひゃい!」
鬼教官の怒声に、瑠衣はからだを縮こまらせた。
そして、うーん、と眉間の辺りに意識を集中させる。
…………頭が痛くなるだけだった。
「や、やっぱり無理ぃー!」
「うるさい弱音を吐くな! いいか、せっかくデス子が中央霊庁に使い魔の登録までしてくれたんだ、実体化くらいできるようにしろ!」
「いや、なんか、幽霊暮らしが長かったせいで、いざひとに見られると思うと……」
「今更なにビビってんだ! 実体化もできない使い魔は使い魔とは言わない! 俺の使い魔なら虫けらにでも猫にでもなんでもなってみせろ!」
「ううううう……!」
涙目になりながら、必死に集中する瑠衣。
――あれから、密は何事もなかったかのようにもとの俺様鬼教官に戻っていた。いや、もとの、どころではない。以前にもまして訓練はきつくなっていた。
ひょっとして、あの告白、なかったことになってるのかな……?
などと、恐ろしい考えが瑠衣の頭をよぎる。
ありうる。瑠衣はなかったことになんてする気はないが、密はどうだろうか。
不安でいっぱいになっている状態で集中なんて無理な話だった。
雑念まみれの瑠衣の心情を察したのか、密の怒声が飛ぶ。
「よそ事考えてんじゃねえ!……ったく、こんなんじゃデートもできないじゃねえか……!」
ぽそり、いら立ち紛れにつぶやいた一言は、しっかりと瑠衣の耳にも届いていた。
デート。好きなひと同士がするというアレだ。
それを目標に、密は瑠衣を育成しようとしている……?
なかったことになんてしないつもりのようだ。
ぱあっと瑠衣の表情が明るくなる。
「おい、なに笑ってんだ! さっさと集中しろ!」
「イエッサー!」
しゅばっと敬礼をして、瑠衣は今までよりもさらに熱を入れて眉間にちからを入れる。
密とデート、密とデート、密とデート…………
「……お?」
ぼふん、と瑠衣の姿が煙に包まれた。密の表情が一瞬だけ明るくなる。
その煙の向こう側から出てきたのは……
「……ワンっ! ワンっ!」
なにか言おうとするとなぜかそんな鳴き声になる。視線もかなり低い。
「……コーギー……なのか、これ?」
密がしゃがみ込んで、小さくなった瑠衣のからだを抱え上げて姿見の前までやってくる。
そこに映っていたのは、胴長短足、しかもかなり不細工な犬の姿だった。小学生が描くような、そんな適当さが漂う不細工加減だ。
密が深々とため息をつく。
「……これは……デートっつうよりは散歩だな……」
「ワンっ!? ワンワン! クゥーン……」
面目ない、とばかりにしゅんと耳を垂らす瑠犬。
道のりはまだまだ遠そうだ。
まずは、いっしょにデートすること。
普通の恋人同士ならなんてことないことも、普通ではないふたりにとっては高いハードルだ。
……でも、必ず乗り越えてやる。
決意を込めて、瑠犬はぺろりと密の鼻の頭を舐めた。
「……まあ、これはこれでかわいいけどな……」
苦笑して頭をなでる密に、瑠犬は声高に返事をした。
「ワンっ!」
仰せのままに、王子様!
これにて完結です!
長い間お付き合いいただきありがとうございました
喪女のモテないゆえんって自己肯定感の低さにあると思うんですよね
私も喪女だったのでよくわかります(笑)
どうせ私なんか……
恋愛なんておこがましすぎる……
そんなしり込みがあるから恋ができないんだと思います。
恋だけに限らず、人生なんだってそうです
自己肯定感があって、自分ならできる!と思いこめば、たいていのことはできます
本作品はそんなしり込みしているひとたちの背中を押したくて書きました
続編はまだ考えていませんが、恋人同士になったあとの瑠衣と密のあれこれや、バケモノのその後などを考えてます
使い魔ってか瑠犬の扱いも
次回作はちょっとなろうとは毛色が違う気がするのでノベプラ辺りで連載しようと思います
そちらもぜひよろしくお願いします
最後になりましたが、今までお付き合いいただきありがとうございました!
今後ともよろしくお願いします!




