#11『第一次世界改変』
11話
俺がこのジャングルに入ってから約10時間が経過した。
眼のお陰か、時間には敏感になってきている。
ここではあまり時間は関係ないが。
◇
…更に時間が過ぎた。
美咲はどうしているだろうか。
俺みたいなことに巻き込まれてなければいいな。
◇
…とても長い時間が経った。
いや、実際は大した時間では無いのだろう。
メンタルがやられてきたのかもしれない。
ちょっと焦りすぎている。
全身を酷使しながら岩山に向かっているが、距離が縮まる気配が全くない。
───ふぅ
1度冷静になろう。
落ち着け。
そう思い、足を止める。
落ち着け、俺。
焦って闇雲に進んでも出れる訳では無い。
考えろ。
なぜ、こんなに進んだのに、距離が縮まらない?
なぜ、木の上から見た時に認識出来ないスペースがあった?
なぜ、認識できなかったスペースから強烈な気配を感じる?
良く考えればベタなものだ。
ゲームでも進むにはエリアボスを倒さなきゃだろう。
つまりそういうことだ。
«行動経験値が一定に達しました»
«スキル【冷静】を獲得しました»
«異常状態:焦燥が回復します»
やっぱり焦っていたのか。
というか焦りも異常状態にカウントされるんだ…。
少し休むか。
息をつき、上を見上げた。
生い茂る鬱蒼な樹林から広がる枝の隙間。
覗いた空のような蒼は神秘的であり不気味だった。
何がの予兆のように木々がざわめく。
ちょっと待てよ、なんか変だぞ…。
木の上から認識出来なかったスペースはせいぜい1平方キロメートルほどだった。
しかし俺が迷って歩いた距離は確実に10kmを超えている。
そしてエリアの周りは印的に1回しか回っていない。
そのうえ、認識阻害があったからと言っても、空間自体に異常はない。
いや違う。
空間が歪んでいるんじゃなくて。
拡張してる!?
そしてその瞬間、世界は激変した。
«全ての核迷宮が完全体となりました»
«ダンジョンの周囲1kmに魔物生息圏が延長されます»
なんだ!?地面がッ、めっちゃ揺れて、でも地震って感じじゃない揺さぶられるのでは無く自ら揺れているようなっ…。
「うおっ!?」
また1度激しく揺れる。
何とか倒れずに体勢を立て直し、少しの間警戒していたが更なる揺れは無さそうだ。
十中八九原因はアナウンスの言ったことだろう。
魔物生息圏が拡大したらしい。
ふむ。分からん。塔の外ならまだしも、中だと何が変わったのかまったく情報が得られない。困った困った。
いやまてよ、もしかしたらそんなに楽観視できるものでもないかもしれない。塔の中は最初から全域に魔物がいたと思う。だって形成途中でさえドンパチしてたんだから。
つまり、今のアナウンスはもしかして…塔の外にも魔物が発生したってことじゃ……。
早く出ないと美咲が危ないかもしれない。それはまずい。とてもまずい。ゆっくりしてる場合じゃないぞ……。
再び焦りが頭に浮かんでくる。早く出なければ……。
俺は美咲を守るために、全力でここから脱出すると決意した。
◇
「ハァ、ハァ」
全力で中央の認識阻害がかかっていた場所に走る。
【神眼:空刻】の空間把握能力と【魔神眼:虚欺】の虚偽ノ判定で強引に認識阻害を破壊する。
そうして現れた空間の中央には、今までの猿と比べ物にならない非常に大きな猿が鎮座していた。
寝ていたのだろうか?俺が入って来たものの動き出しは非常にゆっくりだ。
のっそりと起き上がろうとしてくるのを待つことはしない。
美咲の為にも、最初からフルスロットルで行くぞ!!
「化現せよ!」
発動鍵を詠唱し、『剣』を召喚する。
手元に発生した剣を握り、猿に向かって全力ダッシュ。
戦いは既に始まっているのだ。今先手を取れる状況で、最も効果的な攻撃を入れる!
ここは開けた場所だからまずはこいつの機動力を削いで翻弄することにしよう。
腰を上げた猿の足に斬りつける!
───ガァァァァア!!!
唐突に発生した脚の痛みに悶え、体勢が崩れて尻もちを着く大猿。
これで右脚の健を削いだ。
「最初から畳み掛けるぞ大猿!」
ヒットアンドアウェイやゲリラ戦は弱者の戦い方の基本だ。昨日までの俺ならただ何も出来ずに死ぬだけだろうが、今は力も冷静さもある!
座ったまま腕を振り回す大猿。ブン!と遠心力が乗った攻撃が飛んでくる。
「そんなものに当たるわけが無いだろ!最初の猿の方が手強かったぜ!!」
挑発しながらジャンプで回避。そしてそのまま腕の内側を斬り裂く。
あの猿の記憶や技術を【強欲】で強奪した影響だろうか?大猿の動きの癖が手を取るように分かる。これなら余裕だ!
更にギアを上げるぞ大猿!
「総剣術の壱!『阻み空断ち』!!」
初めて持つ剣だが、体の一部のように手に馴染むのはスキルのお陰だな。多分【武術ノ極】もめっちゃ強いんだろう。
離れて避け、近ずいて斬るの繰り返し。命のやり取りをする緊迫感はあるが、もはや作業に近くなっている。
〘極剣〙の能力の1つ、総剣術[極]を攻撃に入れ込むことで、更なるダメージが入っていくな。
やっぱこの剣めっちゃ強い!ありがたいな……。サンキュー剣聖たち。
全身に切り傷がつき、血を流しまくっている。もはや多量出血で死ぬんじゃねぇか?ってくらいだ。
このまま余裕で─────────ッ!?
グオオオオオオォォと咆哮する大猿。その大声量に一瞬体が硬直した。
「ヤバい!動けな……!!」
その隙を突かれ、大猿のパンチが命中してしまう。なんと身を捩って逆方向に飛んだが、受け身をしても有り余るほどの威力だ。
大幅に吹っ飛び地面に倒れる。
ああ、イッテェ。全身の骨が軋んでいる。それだけで済んでいるのが奇跡だ。油断大敵だな。
「くっそ、ここからが本番ってか!?」
俺が地面から起き上がるのと同時に、大猿も地面から起き上がる。全身から血を流しているが、能力由来であろう赤いオーラを纏って動き始めた。
「チッ、ここで速攻決めた弊害が出るのか!」
超解析も使わずに攻撃をしに行ったから、大猿の能力が分かんねぇ……とりあえず視るか!
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〖森大猿主〗
Lv:57
性別:♂
種族:森大猿主
職業:森大猿統率者
ステータス:
STR:3000
AGI:700
VIT:500
INT:50
DEX:90
通常スキル:【体術[極]】【道具作成術[達]】【歩行術[達]】【咆哮[熟]】
特殊スキル:【死闘】
称号︰〘統率者〙〘一騎打ち王者〙
sp:570
備考:森に生息する魔猿の一種である森大猿の長
群れの中のオス同士で一騎打ちをし、その勝者が〖森大猿主〗となり群れを統率する
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【死闘】
Lv︰─
タイプ︰特殊
レアリティ︰特殊
効果︰自身の生命力を継続的に消費し、それに応じステータス上昇と発動時間延長が発生する
取得条件︰一対一の死闘を300回行う
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«【超学習】を発動しました»
«【超学習】の効果により【死闘】を獲得»
なるほど、猿たちは命懸けんのが好きなんだな。大猿の赤いオーラは【死闘】によるものだろう。
「ッ!ゆっくり見させてはくれねぇか!!」
使えない右脚を引き摺りながらもなお脅威的な速度で接近してくる大猿。
ここからが本番だ。
ちょっとずつ伸びてるので書きました。あとローファンもの読んでモチベが出ました。めっちゃいいすね今のローファン上位
後で描写付け足します




