#9 『Rock Downing？』
俺は順調に岩山を降りて行った。
降りる、と言っても比喩的な意味ではない。
文字通り山の、と言うより崖を伝って降りて行っていた。
そもそも道らしき道が無いのだ。
巌猿との戦いの後、周りを見て回った結果、俺が最初にいた場所は切り立った崖に囲まれた、山の上と思われる所だと判明した。
これでは山と言うよりも超巨大な岩柱と言う方が妥当かもしれない。
人工のものか天然のものかは知らないが、山肌から時々突き出る小さな岩場や少し窪んだ場所が唯一の足場だ。
高すぎて地上も見えない。
まるで最初に塔が出来た瞬間のようだ。
とても不安定な足場だが、さっき獲得した【歩行術[初]】のお陰か足を踏み外しそうになったりすることは無かった。
てっきり戦う時のステップが上手くなるとかそういうものかと思っていたが、汎用性が高いようだ。
だがしかし、足場が無いところは勿論ロッククライミングの真似事をしなければならない。
降りてるからクライムじゃないか。
それはいいとして。
落ちたら終わりだ。
高所恐怖症とかだったらほんとに最悪だな。
俺はどっちかと言えば、高いところは好きかな。
こんな状況ではあれだが、とても助かった。
てか何処まで降りればいいんだ？
ずっとこれやるのはメンタル的につらい。
まだ全然地上が見えないし。
5000mくらいあるんじゃねぇの？
5000mの切り立った崖と云うのも変だがな。
それにしても全然落ちないな。
俺が掴むところだけ石が劣化してたりすると思ったんだが。
全然崩れたり手が滑ったりもしない。
それどころか足場と足場の間に渡るのに都合がいい掴みやすい石があまりにも多い。
そういえば俺の悪運は解消されたんだった。
このままなんも起きなければいいがな。
そういえば、この足場も鑑定してみるか。
【鑑定】
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〖岩〗
備考：転移魔法陣を使用出来ない石猿が、移動用の為に作った足場
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鑑定は間接的でも接触してれば使えるんだな。
靴越しでも問題無いみたいだ。
この足場は人工じゃなくて猿工だったんだな。
というか
この文章から推測するに
もしかして
もしかしてだけど
頂上に移動用の魔法陣があったんじゃないか？
もしそうだったら最悪だ
だがここまで降りてきてしまったからには、もう上がることは厳しい。
はぁ…最悪だな。
いや、これは仮定の話だ。
だって頂上に転移魔法陣はなかっ…
いや、俺がきた魔法陣はあった。
もしかして俺が転移した時に出てきた魔法陣が、下への転移魔法陣だったのか！？
«スキル【予測Lv：2】がスキル【予測Lv：3】にレベルアップしました»
最も聞きたくなかった天の声(仮)だな。
しかし、つまりはランダム転移はランダムの「階層」に飛ぶんじゃなくてランダムの「転移魔法陣」に飛ぶのか？
てか絶対下に行く魔法陣見つけさせる気ないだろ
そんなの分かるかよ…
このダンジョン作った奴絶対性根曲がってるだろ……。
イラついて思わず壁を叩く。
カチッ
ん？
壁を叩いた手元を見ると、まるでスイッチを押したかのように正方形に凹んでいた。
おっと
これは
なんか起きますね。
はい
………
……
…
いやなんも起きないんかい。
なんやねん。
エセ関西弁がでてまうやろーが。
ほんとなんなんだよ。
なんのためにこんなスイッチがあるんだ？
意味が無いわけはない。
だが、考えてても仕方ないな。
さっさと壁を伝って次の足場に…。
足場がない！？
俺が今たってる足場で終わりなのか？
なんなんだよ……ちゃんと完璧にしろよ……。
おいクソ猿。
手抜き工事は許されねぇぞ。
てめぇの[ピーー]を[ピーー]してやろうか？
あ゛ぁ？
(；・ω・)ハッ!つい汚い言葉が出てしまったようですわ
おほほほほ
でもこれじゃあ猿も降りれない筈だが。
どうするんだ？
もう一度みるか。
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〖岩〗
備考：転移魔法陣を使用出来ない石猿が、移動用の為に作った足場
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うーん
さっきと同じだ
もうちょっと情報得られないかな。
うーん
«【虚偽ノ判定】が自動発動しました»
ん？なんだ？
魔神眼の能力が勝手に発動したのか？
あれ？鑑定結果がバグって…
！？
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〖岩〗
備考：足場に偽装された罠 管理者により認識阻害及び隠蔽済みであり多くの人が次も足場があると思い込み、そして落ちてゆく
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は？
え？罠だったの？
ツッコミどころ満載なんだけど。
その罠しょぼくね？
てか俺どうすればいいの？
【鑑定】を欺けちゃうの？
手の込んだ偽装の割に罠しょぼくない(2回目)！？
普通落ちるか？
騙されるやつ居ないだろ。
じゃあ猿は足場なしに上り下りできんの？
羨ましいわクソが。
はぁはぁ…一気にツッコミしすぎた。
しょうがないから1個前の足場に戻るか。
………………
…………
……
俺は今、岩山の中にいる。
遂に気が狂ったかって？
そんなまさか。
俺は大発見をしたのだ。
ツッコミの後、俺は他の足場の所に戻り壁を色々叩いてみた
そうしたら他にもスイッチがあったのだ。
それを繰り返すこと13段。
最後のスイッチを押したら地響きがして岩山が回転しだしたのだ。
5、6回ほど高速回転した後に足場が岩山から突き出て来て、伸びた足場の根元に階段があったのだ。
と、今までの状況を説明した(誰に？)訳だが。
状況がカオスで草www
ネットの民に教えられた「草に草を生やすな」という言いつけを破ってしまうほどのカオスっぷりである。
何がどうしてこうなった。
猿が作ったんじゃ無かったのかよ。
あんま意味ないミスリード誘うなし。
と、まぁどうでもいいことは置いといて。
只今階段を降りている。
現在進行形ingなう。
それにしても何をどうしてこんなものを作ったんだ？
そんなことを考えてるうちに、階段の一番下に辿り着いた。
長い戦い(？)だったぜ…。
降りた先には大きな扉が1つ。
なんじゃこれ？
入るしか選択肢はないが、神秘的な雰囲気がぷんぷんするぜ。
というわけで開けマース。
ガチャ
普通に開きましたね
そして足を中に踏み入れる
«おめでとうございます！»
«貴方は神の予測を超えました»
«称号〘特異者〙を獲得しました»
«称号〘特異者〙の効果により、貴方のシステムは神の管理下から逸脱しました »
…？
神の予測超えたの？
なんか予測してたの？
え、何？罠に引っかかるとか思ってた訳？
んなわけあるか。
バカにすんなし。
まぁだが、このアナウンスのおかけで、
・システムが神として認識しているものが存在すること
・その神は俺を見ていたこと
・そしてシステムは個人個人で存在し、神の管理下にあるものだが完全に神に支配されては無いもので、現に抜け出せた
・システムは、俺が支配下から抜け出せたことに悪感情を抱いていない
ということが分かった
最後の方はあまりあてにならないが、かなり的確な考察である筈だ。
システムに感情はあるのか？そこに心はあるんか？
まぁええや。
俺は目を凝らしながら、暗い部屋を進んでいく。
程なくして、俺は少しSFじみたエレベーターを見つけた。
え？エレベーターあるんすか？
ファンタジーな世界観は何処に行った。
まぁいい。
じゃあ乗るか。
どうせこれしか無いし。
でも一応見とくか。
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〖覚醒の祭壇〗
備考：己の才能や潜在能力、種子状態のスキルの覚醒及びLv上限の解放を行う祭壇
覚醒後には覚醒者を同じ階の他フィールドに転送する
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エレベーターじゃないんかいっ。
いや、まぁエレベーター的役割もあるんだろうけど！
思ってたんと違う！！
てか名前も名前だよ。
絶対今出てくるべきじゃないでしょ。
もっと後に出てくるハズだったでしょ。
ラスダンの前の前でダンジョン探索イベとかで見つけるやつでしょ。
まぁいっか。
じゃあ乗ってみよっかな。
