雌餓鬼
美の祈り手――――形状、卵。
他種子と同じく爆発以外に特別な効果は無く、ただ破壊に尽くす献身の力。
効果範囲は半径三十キロ。
アドミニストレータはこれをガリヴァーの移動を確認してから発動すると、自身もろとも敵を地獄へと招き入れた。
「あの爆炎は、アドミニストレータさんか! 相変わらず滅茶苦茶だな!」
ハツラツに言うブルーノ。
魔導鎧も纏わず、守護を任されたミレニアムの正門に立つ。
「何、余所見してんのッ!」
「すまない、気はちゃんと向けているよ!」
「気だけ? 舐めすぎ」
「無論、君も見えているさ」
黒装束に身を包んだ、双子の少女達。
名をメニスとソニア、二人で一軍の将軍を任される、幼きエリートだ。
歪な形のナイフを両手に持ち振るうも、ブルーノは一切警戒する様子もなく刃を指で摘み抑え。
二人を投げると正門の前に立ちふさがり動かない。
「幼い君達を殺してしまうのは憚られる。軍を連れて引くか投降したまえ」
「なぁに格上ぶっちゃってんの? あたし達まだまだ無傷なんですケド?」「同意、まだ余裕」
「そうか、ならば仕方がないな――――尻を叩いてやろう」
普段から装着しているベルトのバックルを二度指で叩くと、その個所から装備が変化。
ブルーノ、フェーロー、合作。
纏式魔導鎧――――円谷。
「何それ、ダッサぁ」「ううん、かっこいいよ」
「俺からは行かないよ。君たちが大人しく下がるならそれでいい。だがもしかかって来るならば――――――」
瞬間、二人がブルーノまでかなりあった距離を潰し、左右から鎧の首関節部分を狙いナイフを振るった。
しかし、振り切るより早く二人の腹には掌が添えられており――――優しく、しかし力強く押し出される。
先ずは生意気な姉のメニスをひとっ跳びで追うと、追いついてすぐ宣言通り尻を叩く。
ソニックウェーブが発生する程の速度で、教育という形では一切の手心を込めない一撃だ。
「痛ったああああああああっ!」
「次っ!」
「ひえぇ…………ご勘弁」
尻を押さえて地面に倒れるメニスから大人しい印象の妹、ソニアへ視線を移し。
逃げずナイフを構える姿を確認次第掌を向けた。
「衝撃収束砲」
言うと、魔力が衝撃となりソニアを襲い。
倒れ込んでしまうと首根っこを掴んで持ち上げ、こちらも薄い尻を叩く。
「っっっっっっ~~~~~!!!」
声にならぬ声を上げ、落とされるとうつ伏せに倒れながら何故か恍惚とした表情を。
何か良くないものに目覚めさせてしまった気がして気まずさを感じながらも、ブルーノは鼻を鳴らす。
「続けるかい? それとも反省したかい?」
「ばっ…………馬っ鹿じゃないのっ! この程度、何てことっ!」「何回叩かれても屈しない。試してみると良い」
二人とも別の意味で目をぎらつかせながら言うから、これはもう仕方がないかと判断して、掌を向け――――心に僅か鬼を宿した。
「拡散型量子崩壊砲」
「防御っ!」「回避~」
メニスの指示で、後方に控えていた魔物の一体が攻撃の前へと。
魔力の炸裂と同時、ブルーノ目掛けて投擲されたナイフが眼前に迫っており――――後方へ飛び回避した瞬間、全身の力がぐんと抜けた。
「誤差一割、魔法かい」
「せいか~い。おにいさん鋭いねぇ」「正しく、一割」
土煙から無傷で出て来た二人は悪戯に嗤う。
キーはナイフ、仕組みは不明。
ここまでは子供の相手をしていたブルーノの心に、初めて警戒が宿る。
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