魅惑の爆弾魔
爆発の種子――――アドミニストレータの魔法であり、コーンの種がポップコーンに変わる際程度の威力から核爆発まで、威力を好きに調整可能な種子を生み出す魔法。
彼女を語る際、多く挙げられる議題は威力。
しかし、最大の強みはその魔力消費の小ささにある。
魔法が行うのは種子の精製までであり、そこから先威力調整や爆発は種子の特性に過ぎない。
つまり、魔力を一切消費しないのだ。
通常種子一個分につき通常魔力弾一発分の消費。
彼女からすれば数秒で回復する端数以下の話であり、敵対する者からすれば理不尽の権化。
そんな力が振るわれるのは不可視の街――――王権都市ガリヴァー。
空を飛び、日々移動を続け、普段は対魔術結界や対物理結界、不可視の結界などにより護られている。
「見晴らしが良くって、魔法使い放題、何かを巻き込む心配もないし変な足手まといも下がってくれて最高――――これって、私の天職よね」
言いながら目を向けた先、攻め入って来るのは竜種や足場精製が出来る程度には魔力の扱える魔族。
頬を赤らめ下唇を舐めると、手元に魔力を集めた。
「――――爆発の開花」
精製した種子を放る。
敵陣頭上にて炸裂するも、威力はほぼ皆無――――代わりにその内より、千を超える種子が溢れ出した。
「BONっ!」
瞬間、連鎖的に炸裂を――――敵陣の結界を砕き、なお残る種子が甚大な被害を齎し。
だがそんな中を生き残る精鋭も居る様で。
魔王軍将軍、シャルマン。
ミレニアムでの戦いでシフィーと交戦、ほぼ無傷同然で任務を終えた男だ。
「効かぬぞ、そよ風の様だッ!」
「生きが良いのね」
駆け回る子兎を発動――――己で魔力の足場を作って、敵の爆破と攪乱を行う。
二兎がそれぞれ逆方向から飛び込むも、一太刀であしらわれ。
シャルマンから離れた位置で炸裂した。
箒で飛ぶアドミニストレータの元まで一瞬で距離を縮め、首目掛け太刀を振るう。
「爆発の種子」
それは太刀を爆風で押し返すのと同時、アドミニストレータをも巻き込んだ。
白く美しい首筋は無残に焼き爛れ抉れ、傷と口より血が溢れ出す。
これだけならば下手な魔法運用によって行われた自爆に過ぎないが、アドミニストレータはここまで織り込み済み。
普段から魔法の可能性探求に努め、自爆を繰り返した事によって対策案も見出した。
全身皮膚下に刻まれた、自動回復の刻印術。
魔力は多く消費するが、即死しない限りはどんな負傷からも即座に復帰出来る。
「血潮の煙か、普段から血に魔力を混ぜているな?」
「滴る悪意の百足」
真っ赤な煙から飛び出したアドミニストレータがシャルマンの足を叩き。
触れた部分から百足型の種子が発生し、蠢き体を上り始める。
首筋まで登った所で掴み引き剥がそうとするが、触れた瞬間手が離れなくなり。
焦りをあざ笑う様に炸裂した。
「これでおしまい、なんて事もないのでしょう?」
「無論だ――――我らが魔王軍、この程度で沈む軟弱は連れておらん!」
アドミニストレータの頭上、巨大な霧の目が露わる。
試しに種子を投げて炸裂させるが干渉は不可能なようで、一切の変化がなく。
僅かに警戒を向けた事により生まれた隙をついて影から黒い虎が飛び出した。
鋭く腹部左側を食い破り、臓腑が溢れ出し――――それと同時、他魔物が一斉に襲い掛かる。
アドミニストレータを渦中の存在とし、本能で勝利を確信。
直後、自分たちが牙を剥く相手の恐ろしさを知る事となる。
「――――美の祈り手」
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