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斬り伏せませい

「私が確認した数の何倍よ、これ」

 


 魔王城を眺められる崖の上、目下に広がるは無限に思える軍勢だ。

 それに相対する六人はどうするかというと、先ず手始めに突っ込もうとするシフィーをベスターが停めた。



「おいシフィーテメェ、話を聞いてなかったのか?」


「聞いてたけれど、この程度を殲滅したとして魔力の一割も使わないわよ」


「うぬぼれてんじゃねえ。今回は毛ほどの魔力を節約する戦いだ。テメェはフリートの元にたどり着くまで魔力弾の一発でもケチれ」



 諦めた様にため息を漏らすと、シフィーはその場に座り込み。

 話が決まるのを大人しく待つと決めた。



「さて、コイツが痺れ切らす前に決めるぞ――――敵方もすぐこっちに気づく」



 地上より、ワイバーンに乗った騎兵が人界戦力を捜索している。

 見つかって敵全勢力と衝突すれば消耗は免れない。



「シフィーよ、蜃を出すのに魔力は使うか?」


「? いえ、蜃は自分の魔力だけで霧切からサポートしてくれているから、出るのにも私は一切消耗しないわ」


「そうか――――ならば我とカザリームと蜃の七星龍で先ずは狼煙を上げよう。良いな?」


「俺はそれで良い。君主よ、蜃の奴はなんと?」


「賛成しているわ。エルドラの案で行きましょう」



 言うと、霧切を地面に突き立て霧を完全放出。

 無形の霧を通して蜃は完全顕現し、エルドラとカザリームも龍の姿へ。


 特に言葉を交わす事無く、口に魔力を溜める。


 莫大な量の魔力を溜めれば流石に魔王軍側も気づき、一斉に攻撃態勢と防御陣形を整え。

 十層の単純結界と五層の反射結界を張る。


 その内側からは魔術や魔法、ワイバーン騎兵隊によるブレスの弾幕が結界を素通りして放たれ。

 ただ三体のブレスを食い止めるだけに総力を尽くした。


 だがしかし、所詮は烏合の衆――――放たれた三本のブレスは他全てを飲み込んで結界を砕き。

 反射された己らのブレスすらも後続するブレスで相殺する。



「壁は砕いた。これより進撃を開始するぞ」



 蜃は霧切に戻り、他は再び人の姿へ。


 初撃は優勢――――戦いの火ぶたが切って落とされた。

 



 ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘ ⌘



 

「楽しいなァ、こりゃあよお」



 王権都市アルカディア近郊、台地と空を埋め尽くす魔王軍を見て鬼は嗤った。

 この地に派遣された戦力はそう多くない――――主力のカイエンと他殆どが防衛用魔導士。


 身体強化以外の魔術魔法など使えないカイエンが主力という事で他の地よりも殲滅力には欠けるが、無限に一対一を繰り返せば軈て勝る。



「言っとくが、気なんぞ払わねェからな」


「ハハっ、勘弁願います」



 唯一援護として参加を許された男、元金級冒険者であり現ジュエリーちゃん係であるシェリン・タラニフォカス。

 胃は相変わらず痛む様だが、出鱈目な者の相手を任せるならばこれ以上の適任は居ない。



「さぁて、祭りだなこりゃあ」


「周りへの被害はどうか最小限に」


「知るか、そっちでガンバレ」



 それだけ告げると、上空のワイバーン騎兵隊目掛けて跳び。

 ハエでも叩き落とす様に先ずは一騎を斬り伏せる。


 斬った相手を踏み台にして上空に留まり、二騎三騎と戦績を伸ばして行く。



「いやあ、恐ろしい――――あれが足場も作れない人間の動きですか」


「武器ッ!」


「ハイハイ、私は私の仕事を果たしますよ」



 浮遊魔術の応用で刀を飛ばし、カイエンの手元まで。

 今回使われる武器は全てフェーロー製でエリオスの刻印術によって耐久力を強化済み。

 しかしカイエンの下手な魔力の通し方と出鱈目な量の前では数振りで刃元がブレてしまい使い物にならなくなり。

 こうしてとっかえひっかえするしかなくなる。


 戦闘開始から五分二十八秒、ワイバーン騎兵隊壊滅。

 これが冠級の出る戦いだ。

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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