雨天決行
「今すぐ助けに行くわ」
「いかん。諦めよ」
城に戻り次第、ジュエリーの元へ。
すっかり力の戻った体で詰め寄るも、出た結果はこの通り。
それに怒りを燃やしたシフィーはジュエリーの胸倉を掴み壁に背を叩きつけるも、毅然とした態度は変わらない。
「ミリスに付けた追跡の刻印術が反応しない、居場所は魔界って分かってるのよ!」
「残念ではあるが、世界とミリス一人――――天秤に乗せるまでも無かろう」
「助けに行くだけよ! それが何故世界の話になんのよ!」
「戦力も集まり切らん今、無駄に敵に手の内を晒す事――――それ即ち敗北と思うべきじゃ」
「負けやしないわよ!」
「少しでも可能性があるからいかんと言うのが分からんか。ミリスが連れ去られたのはテメェさんのミス――――悔しさは理解するが、受け入れよ」
「無理だと言ったら?」
「暫く大人しくしてもらう事となるのう」
とは言うものの、シフィーが考えを変える様子は無い。
ため息を漏らすとジュエリーは空間に穴を開き、そこに一時的ながらシフィーを封じようと。
瞬間――――霧切によって魔力が散らされ、空間は正常に戻る。
「テメェさんよ、良いから黙って従っとけ」
「断るわ」
壁に押し付けたジュエリーの腹を蹴り、壁を破って野外まで吹っ飛ばす。
上半身と下半身が千切れるも、一瞬でくっ付いた。
「実力行使なら得意よ――――それに、貴女の苦手は知ってる。もう負けないわよ」
「儂に勝てるなどと? 驕るなよ」
「試して見ようじゃないの」
本気の戦闘態勢だ――――互いに互いを屈服させようと戦闘を開始する一瞬手前、二人を巨大な魔力が包む。
「喧しい――――こんな時に仲間同士争ってどうする」
「エルドラ! テメェさん丁度良い所に――――」
「先に言っておくが、我はお前の味方をしに来たわけじゃあ無いぞ。寧ろ小娘寄りと言っても良い」
シフィーの傍に寄り、頭を撫でる。
シフィーの放つ殺気を見るにそのような事をしている場合ではないが、そこは龍の奔放さと言うべきか気にしない。
「だが、ジュエリー側のいう事もよくわかる――――ので、条件を付けてみてはどうか?」
「条件じゃと?」
「ああ。我が同伴し、シフィーは魔法の使用を禁止。敵に見つかってからの滞在時間は三十分とする。どうだ?」
「どうだと言われてものう…………嫌、それならば…………しかし…………」
「本っ当に頭が固いな――――小娘よ、今我が言った条件を守れるか?」
「…………うん」
「だ、そうだぞ」
「ん…………ああもう、面倒くさいッ! 勝手にせい!」
叫ぶと、ジュエリーは城に戻ってしまった。
律儀に蹴破られた壁を空間操作で修復したら、すっかり姿は見えなくなる。
「奴とてこの世のため、人質に取られたメリーを見捨てなければならぬ程には必死なのだ。許してやれ」
「後でちゃんと謝るわ――――でも、今は私にも人を慮る余裕なんてないの」
「分かっている。さて、あやつの気が変わらぬ内に行くぞ、覚悟は出来ているな?」
「ええ、行きましょう」
空間に穴を開き、世界同士を繋げ――――躊躇わずに一歩進んだ先、シフィーは言った。
「――――魔力形式・ 10th」
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