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古強者

「おーい、これ以上粘るな。儂もこれ以上粘りとうないんじゃから~!」



 片田舎、固く閉ざされた一軒家の前にてジュエリーが叫ぶ。

 表札は無い、だが気配、魔力の証拠はある。


 彼女がこのような行為を初めて今日で七日目――――カイエンの説得は自分の正体を明かしてまで一日で終了したにもかかわらず、ここでこれ程の時間をかけるのは、全体戦力底上げのため。


 この家から出なくなって久しい刻印術(エンチャント)の第一人者、エリオスが次の戦いには必要だと判断した。



「あんたら冠級が出張るんだ、俺みてえな出戻りの力なんざ要らねえだろうさ。頼む、帰ってくれ」


「いや、必要じゃから来ておるんじゃが…………今回は儂の知る実力者を総当たりで呼び付けるつもりでのう。テメェさんの心に刻まれた傷がまだ癒えてないのはよ~く分かる。じゃが慮ってもおられんのよなこれが」


「帰ってくれ」


「ああまた話を聞かないターンに入ってもうたか。しゃあないのう」



 諦めた様にため息を漏らすと、目を瞑って魔力操作を行う。

 形状は人型、性別は女――――指紋を一本一本記憶だけで再現する様緻密に、魔力のクセを意図的に作り出す。


 3Dプリンターが樹脂で様々な形を作り出す様に、魔力で喉に偽の声帯を生成。

 空間操作魔法で空気を送り込む。



「――――――――開けて、ヘリオス」


「お前…………ッ!!!」



 瞬間、無精ひげを生やしやつれたヘリオスが槍を振るいながら飛び出す。

 威力速度正確さの全てが冒険者時代に比べ大きく劣るが、殺意は充分――――それもその筈だろう。

 ジュエリーが魔力で再現したのは、ミレニアムの戦いにてヘリオスを庇って死んだアイアスの情報そのものなのだから。



「やっとツラを拝めたのう」


「お前がアイアスの声を使うな…………!」


「あの女の名はアイアスと言ったか――――悪いすっかり忘れておった。弱いのには興味が薄くてのう」


「愚弄するかッ!」


「弱い弱い。あの女もこんなへっぽこ助けるために死ぬとは馬鹿なことをしたわい」



 槍の連撃を躱し続け、言葉でヘリオスの逆鱗を逆撫で。

 加減は無い――――可能な限り怒らせる。


 

「刻印解放――――その汚い口を閉じろ!」


「閉じてほしけりゃ威を示せ。テメェさんの意思はその程度か!」



 次第にヘリオスの魔力が荒立つ。

 刻印術の効果も少しずつ剥がれ、攻撃の手は弱まり始める。

 

 それに拍車をかけるよう、ジュエリーが反撃を開始。

 直撃は避け、武器の刻印術だけを魔力でそぎ落とす。


 武器から削れた刻印術の痕跡と言えよう魔力が繊維の様に溢れ出す。


 溢れ、紡ぎ、解れ、破綻――――そして砕けた刻印術が元居た場所に帰ろうと槍に纏わりつく。

 そして、新たな刻印術として形を成した。



「思い人を失ったとくよくよしよってからに――――同じ冒険者として情けなく、眩暈がするわい!!!」



 ヘリオスの胴を蹴り飛ばし――――その先でクッションとなった家が倒壊する。


 

 「テメェさんは何故護られた、何を思われた! 儂に怒るより早く、やるべき事があるじゃろう!!!」



 倒壊した民家の奥、聞いているであろうヘリオスに向かい怒鳴った。

 これで駄目ならヘリオスは捨てて行くか、心の隙間に付け込まれ寝返る可能性を考慮して殺すか。


 後者と決め、太刀に手を添え次の行動を待つ――――見えた答えは、今日一番冴えた槍の投擲であった。



「祭りの会場を教えろ――――土産を持って行く」


「決まりじゃな。気は晴れたか?」


「ボチボチだ」 

読んでくださりありがとうございます!

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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