Proofs of the age of the gods
シフィーは考える――――今目の前で起きている戦いに参戦するべきかと。
現状見た限りではエルドラとフリートは互角。
決して劣勢というわけではない。
だがもし万が一があればエルドラという大きな戦力を失うに飽き足らず、シフィー自身が元の世界に戻れなくなる。
これが明らかに勝っていれば安心して観戦できた。
明らかに劣勢でも迷わず参戦出来た。
だが僅かな要因で均衡の崩れかけない互角はまずいのだ。
フリートはその思考を読んでか、シフィーの存在を脅威としていないのか、エルドラとの戦いで手一杯なのか、シフィーに対してのアクションは一切起こさない。
「バルムンク、障壁」
言いながら双剣の柄同士を当てると、フリートの前方に魔力の壁が生成され。
迫るエルドラの火炎弾を防いだ。
岩が溶けて溶岩と変わる温度だ、直撃すればただでは済まないであろう。
火炎弾を全て防ぎきると、魔力の壁は光の槍と姿を変えて発射――――空間に開いた穴へと吸い込まれて消えた先、何かにぶつかり大爆発を起こした。
「流石は七星竜か、容易くは行かないな」
「そう気負うな、気安くしていればすぐさま焼き殺してくれる」
エルドラが地面に対してブレスを放つが、何も焼かずに炎が魔法陣の形を作る。
「天文よ、槍を与えよ!」
魔法陣に対抗すべく選んだ魔法陣は空より降り注ぐ光の槍。
互いに放たれ相殺し合い、凄まじい魔力爆発を産む。
シフィーとエルドラの想定ではこの攻撃が止んだと同時に再び衝突が起きる――――しかし、フリートは違った。
光の槍と共にフリートは降下しエルドラに対してバルムンクを振い、完全に不意をついた一撃を作り出す。
エルドラが反応したのは直撃の一瞬前――――。
「仕留めた」
「驕るな、莫迦者が」
直撃の瞬間、エルドラを凄まじい光が包む。
気づけばバルムンクによる攻撃は空振っており、フリートの腹には人間の手が添えられていた。
人の体へと変身したエルドラによる全力の突き飛ばし――――フリートは腹部が破裂し即座に再生しながら箒星の様に空を流れる。
「帰るぞシフィーよ、勝ち目がない」
「アイツも別世界に穴を開けられるわ、直ぐに追ってくるわよ」
「細工はした、暫くは安泰よ」
シフィーの元へ戻ると元居た城へと繋がる穴を開く。
天と地の魔法が降り止まぬ世界に背を向け、元の世界へと帰還し――――エルドラは小さなため息を漏らした。
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世界樹頂上、往日の庭――――そこに一通の手紙が訪れる。
「ジュエリー? 彼女からの手紙だなんて珍しいことがあるものね」
小さな手で手紙をつかみ取り開くと、すぐさま読み終わって小さなため息を一つ。
手紙をくしゃくしゃに丸め手の内に収めると、次の瞬間風化した。
「面倒なことになったわね…………」
美しい金髪を揺らしながら座っていた枝に触れる。
枝は突然伸び始め、一見幼い体を地上へと運ぶ。
彼女こそが世にも名高きエルフの女王にして始祖、サレン・メノスティアだ。
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深い砂塵の中、群れを引いて歩く獅子の獣人が居た。
腰のベルトにはくしゃりと一枚の手紙が挟まれ、読まれた形跡が残っている。
「長よ、此度はどこへ向かわれておいでなのですか?」
「ちと、昔馴染みに合いにな――――悪いが置いてくぜ」
言うと、後続の群れを残して砂塵の中を独走。
深く刻まれた足跡には、白い炎の様な魔力が残されていた。
彼こそは百獣の王にして獣人の始祖、ベスター・バックスだ。
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上質な鉄の実がなる包鉄樹の森にある小さな工房の中、一人鉄を打つ男がいた。
野太い腕に濃いひげと、ゴーグル越しの鋭い眼光。
握られ槌はすっかり年季が入って輝かず、されどそれによって作られる剣はその一本で戦争が起きかねない価値がある。
彼こそが鍛冶師の神であり始祖のドワーフ、フェーロー・ハグリットマンだ。
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