ソロモン
「やっべえのう…………カイエンよ、立てるか」
「行くぞ」
「行くって…………あそこに突っ込めるのか?」
「なんだ、怖気付いたか?」
「テメェさんを気遣ったんじゃ、ドアホが」
ジュエリーとカイエンは王城を眺めながら言う。
魔力の余波が街全体へと広がっている――――視線の先、玉座の間では逢魔によってナイフの雨が降る。
ソロモンがメイジスタッフで床を打つと、ナイフは一斉に別方向へと逸れる。
魔力の操作をジャックし、乱す魔術だ。
床に転がるナイフより、ジャックした際に付着した魔力を抽出。
それらを簡易的な魔力弾として放ち牽制――――その魔力弾の中に一筋、魔力の流れを紛れ込ませ、それに乗ることで逢魔の元まで高速で接近。
懐に掌を添えて魔力弾を放つが逢魔はそれを払う事すらせず直撃し、同じく魔力弾を撃ち返す。
「余の顔面を狙うか――――身の程を知れ」
「傲慢だな」
ソロモンは肌に沿う形で五重の結界を普段から展開しており――――体の動きに合わせてミリ単位で形を変え続け、常に攻撃に備えている。
今回の魔力弾は一撃で結界の四層を破壊。
急ぎ再生する事もなく、平然の様子でソロモンは笑った。
「――――封」
言うと先程放たれ、逢魔の体に張り付き残っていた魔力弾が変形。
全身を包み込んで、簡易的な封印を施した。
「さて、素直に答えよ――――貴様は何故余の命を欲する?」
「俺が俺の夢たる為に」
「面白味がない、道化以下だな」
ソロモンは王座へ戻ると呆れた様な目付きで封を眺め――――メイジスタッフを逢魔へと向ける。
「僅かな時ではあったが、この余と繰り広げた攻防で無傷を保った事は褒めてやろう――――褒美だ、魔法で殺してやる」
魔力束が収束、うずまき、細かく編み込まれ一筋の光として放たれた。
速度は正に光速――――だがその放たれた先、既に逢魔は居らず。
魔力の発散によって封を破壊してソロモンへと襲いかかっていた。
今度ば関心した様にその姿を見ながら、ソロモンは再度攻撃準備をして、その矛先を逢魔へと。
放つ一瞬手前、駆ける逢魔がふらついた。
それに合わせてソロモンは攻撃を放つ――――そのとき、魔力の質が変化する。
「こっちが本来だな、魅せてみよ…………!」
言いながら攻撃を発射。
光速の魔力に対し取った行動は抜刀――――シフィーは、霧切にて攻撃を切り裂いた。
「……………………何事よ」
「さて、改めて聞くとしよう――――貴様、名は?」
「? シフィー…………シフィー・シルルフルよ」
「そうか、貴様か」
ソロモンが王座の横より一歩も動いていなかったシャンティーへと目線を向けると、その通りだと小さく頷かれる。
シフィー・シルルフル――――ソロモンがここアトランティスへ移動中、暇つぶしに何か話せと言って出てきた名と同じだ。
「余を楽しませた褒美だ、名乗ってやろう」
メイジスタッフをシャンティーに持たせると、傲慢な態度で足を組み頬杖を突き。
だが表情は楽しそうに、己が名を再び明かす。
「余の名はソロモン――――この世界に君臨する、絶対の王である」
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