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深窓の獣

『こちらブルーノ! チームA、所定位置に到着!』


『チームBジュエリー、同じく到着じゃ―――そっち単独、支障は出ておらんか?』


「問題ないわ―――ちゃんと見えてる」



 次の事件発生を待ち構えるため、急遽チームが組まれた。

 チームAはブルーノとミリスが、チームBにはジュエリーとヴィンセントが、それぞれの想定事故発生現場を隠れて見張る。


 そして事故発生現場の中心―――魔力のマーキングが残された位置には、その魔族の魔力に馴染むようにと単身シフィーが隠れ潜んだ。


 連絡は各々配布されたブルーノ製である通信用魔導具にて行われる。


 事件はほぼ毎日、時間の規則性などは無く起こっている―――故に、何故か口笛を吹きながら刀の手入れするジュエリー以外は皆一様に息を殺して隠れ潜んだ。

 そして、配置について二時間が過ぎた頃、事は起きた―――シフィーが待機しているマーキングが残されていた場所は、街の中でも目立つ時計塔の展望台である。

 そこに見るからに怪しい黒ずくめのマントを深く被った者が出現―――その魔力は、まごう事なき魔族のものである。


 すぐに攻撃はしない―――その魔族が少しでも行動を起こしたならば、すぐに動けるようにと戦闘体制を取りながら息は潜めたまま。

 展望台に堂々と陣取る魔族と、壁面に張り付くシフィー。

 側から見れば、どちらが犯罪者か疑われかねない状況だ。

  


「機体番号CE803、侵入開始―――コールオフ、操縦権掌握」



 それを聞いたシフィーは通信用魔導具のスピーカー部分を二度叩く。

 それはこらから墜落する監視用魔導具の機体がチームA側のものだという合図。


 静かに待ち、待ち続け―――動いたのは、魔族が魔力を発したと同時だ。


 その瞬間、三つの物事が同時に起きた。


 飛び出したシフィーに驚いた魔族が咄嗟に逃げ出した事が先ず一つ―――次に、そこから一キロの距離で墜落し始めた監視用魔導具が墜落。

 そして同時に三つ目、その監視用魔導具が地に落ちるより先、空中で撃ち落とされた。



『こちらブルーノ、対処は完了!』


「じゃあ、後は犯人を確保するわね」



 時計塔から飛び降り逃げ出した魔族を置いシフィーも飛び降り。

 側壁をかける事で自由落下以上の速度を出すが、途中放たれた魔導具による閃光が一瞬シフィーの視界を潰し。

 その隙に魔族は着地、遠方へと走り去っていた。


「南西に逃亡したわ―――追跡を続ける」


『ならば、こちらも援護に向かおう!』



 その声が響いてすぐ、魔族の行く末に一つの鎧が立ち塞がる。


 ブルーノ製、纏式魔導鎧まといしきまどうがい ―――八手(やつで)


 赤と黒を基調としたデザインはどこかシフィーの前世の記憶にある特撮ヒーローじみており、それでいてメカメカしく。

 鎧の全身が魔力にて操作されるという性質上、纏うよりも遠方から操縦した方が絶対に良いというロマン重視の在り方は、とてもシフィー好みであった。



「ミレニアムを危険に晒す悪党よ! 今ここで成敗してくれようッ!」



 言うとブルーノは、迫り来る魔族に向かい右掌を向けた。

 そして、掌部分に日々蓄積され続けた魔力弾を発射。


 それはシフィーや他一般魔術師の使う魔力弾の様な、所謂弾とは違い一度打ち出せば長時間放たれっぱなしという代物。

 この世界に存在する概念においてそれは魔力弾以外の名称が存在しないが、シフィーはそれに相応しい名を知っていた。


 長く打ち出され、太く、浪漫的。

 他に類似品の無い、唯一無二の存在である。



「ビームじゃない…………特撮ってよりも、アメリカね」



 呟きながらも、その()()()を回避した魔族の元へ駆ける。

 懐に入り込み、顎を狙い一発の拳を放ち―――だが、回避された。


 技術はなくとも、シフィーの身体能力で放たれる超速の攻撃は回避困難―――今の一瞬でシフィーは理解した。

 この魔族は、シュレディンガー領を襲ったジャマキリよりも強いと。



「逃さぬぞッ!」



 ブルーノが魔族に殴りかかる。

 全ての動作が鎧の関節部分より放たれる魔力加速装置によって不規則な加速状態となり、シフィーの攻撃よりも回避が困難なものとなっており。

 だが、この魔族はそれも全て回避した。



「シフィー君、合わせるんだ!」


「ええ―――魔力形式(マジックフォーム )1st( ファースト)



 ブルーノの不規則的な攻撃に合わせ、ナイフを持ったサフィによる超速攻撃も追加。

 だが魔族はその全てを回避して、僅か一瞬の隙を見つけて飛行魔術でその場を離脱。


 空高く飛び上がり、地上十メートルの位置で止まると指先に魔力弾を生成し始めた。



拡散型量子崩壊砲(メテオバースト)ッ!」


魔力形式(マジックフォーム )2nd( セカンド)!」



 分散ビームと魔力の鎖と、二人それぞれが空中の魔族に対して攻撃を放った。

 だが今度は回避行動すら無くとも命中せず。

 攻撃と魔族の間に、新たに現れた存在が挟まり攻撃を防いだのだ。


 それは見るからに犬の獣人の女―――長い黒髪を靡かせながら、全ての指先から伸びる魔力の爪痕を息で吹き消し、視線を地上の二人へと送る。



「こちらはお任せ下さいまし!」



 新たな敵の登場に驚く間もなく、底抜けに明るいその声が響いた。

 戦闘開始を察知して、周囲の人民の避難誘導に当たっていたミリスが参戦。


 現れた獣人の女に対して魔導銃を撃ち放ち、牽制を行い。

 顔面に直撃しても全く効いていない様子に戦慄する。



「ミリス、逃げなさい」


「いいえ、ここなら(わたくし )戦えますの!」



 言うと、ミリスは三発発砲した後に駆け出した。

 魔導銃は紐で背に掛け、近くにあった民家の壁に飛び乗ると、超低姿勢で家々を駆け抜ける。


 途中、足跡が燃え始める―――摩擦熱などというものでは無い。

 それは、確かに魔力の籠った炎。

 少しずつミリスより漏れ出す、力の残滓だ。



「室内だと、崩壊しかねなくて使えませんの―――初お披露目ですわね」



 燃える足跡の感覚は縮まり、次第に手の跡も混じる様になり―――二足歩行から四足移動への変動を証明している。


 それは人よりも獣の気配―――空飛ぶ獣人ととても良く似た、野生の気配である。



「――――――始祖の獣(モード・ビースト)

油多い肉食べて、その油流すためにコーヒー飲んだら、油とカフェインダブルで胃がやられました


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

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