表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/120

原初

「…………これで何回目よ」


「二十三じゃな」


「馬鹿じゃあないの?」



 けだるげに言うシフィーへ、エルドラが答える。

 ジェネイダーに勝利してからというもの、再度フリートの魔力を探って探索を進めるも、その道中は無限迷宮そのもの。

 転移魔法陣や攻撃性のある罠に行く手を阻まれ続けている。


 

「もう天井とか壁を突き破っちゃだめなの?」


「魔法陣がご丁寧に張り巡らされてるぜ。大体の事は力づくで何とかなるが、ここ魔王城じゃあ危うい」


「ベスターが賢そうなこと言うの、似合わないわ」


「んだとシフィーてめぇ」

 

「…………静かにせよ」



 エルドラが突如、シフィーとベスターを黙らせた。

 それまで馬鹿話をしていた両名が一瞬で真剣な表情となり、耳を澄ます――――細く、軽い足跡が無数接近。

 音の発生源を探るため、シフィー以外の五名が魔力を広げる。

 


「特殊仕様ね」



 サレンが呟いた――――通常、転移の魔法陣はその陣内に魔力を持ったものが触れる事をトリガーとして発動する。

 そうでなければ、魔法陣を描き上げた途端、床やら画材やらを転移させてしまうからだ。

 その対策としてのトリガーだが、今回は別。


 魔法陣を僅かに浮かせる事で、魔力を含まない音ですら魔法陣を通過するのだ。


 それがどういう事か――――周囲を囲う魔法陣、どこから足音の正体が飛び出すかもわからず、場所、タイミング、数と選択肢は無限大。

 囲った敵を圧倒的情報量と質量ですり潰す。

 古いダンジョンなんかでよく見られるトラップである。



「ねえサレン、貴女の魔法で魔法陣全部消せないの?」


「無理ね。魔法がどこかに消されておしまいよ」


「ならいっそ、どこかの魔法陣に飛び込んでみるとか?」

 

「飛んだ先は地平線のずっと向こうかもしれないわよ」


「ならどうするの?」


「こうするのよ」



 サレンの魔法が発動。

 空気が魔力によって、いくらか重くなる。 



「私が先頭を行くわ。皆は私と同じペースで着いて来て――――少しでもズレたら骨になって死ぬわよ」



 魔法は全員の体に合わせて、ぴったりと展開された。

 一人一人の動きに合わせて魔法の形を変化させる、魔力操作の極致とも言える神業――――近づく足音、魔法陣から飛び出す魔物と、同時に剥き出しとなった白骨。

 通路を抜けた先、もう安全と魔法を解いて振り返れば、死骸の山が積み重なっていた。



「金級だけならすぐに全滅する罠ね…………進みましょう」


「…………ここから先は俺が先だ」



 鼻を鳴らしたベスターが言うと、数歩先に進む。

 瞬間、前方に続いていた廊下の景色が消滅した。



「何だい、これは…………!」


「ああ、アンタは知らねえか。他は知ってるな?」



 その脅威をただ一人知らないヘルムが驚愕する。


 この世へ最初に降り立った生物、三つの原初――――ゲネシス(創造)ディアプトラ(破壊)シグマ(結合)

 それが今、群れを成して現れた。



「私も手伝うよ…………この数は一人じゃあ無理だ」


「空気と魔力の体。アンタじゃあ撃ち抜けねえよ」



 一人ベスターは、ディアプトラ(破壊)の消した通路だった瓦礫の山へ飛び降りる。

 首を鳴らし、犬歯を剥き出し、その鋭い眼光で敵を睨み、嗤った。 

 

覚えていてくださりありがとうございます。

もし面白いと思ってくださった方は、レビューや感想、ブクマなどもらえると嬉しいです!


(更新状況とか)

@QkVI9tm2r3NG9we(作者Twitter)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ