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新三国志 退廃帝曹叡と賢英帝劉禅  作者: 水源
建興6年(228年)
7/41

曹叡と孔明の陣取りゲーム

 さて諸葛亮の北伐の目標は長安経由での魏の首都である洛陽の制圧だが、それと共に祁山を経由して雍州を制圧し涼州を司隷と分断して孤立させ涼州方面を制圧し、シルクロード経由の西方諸国との交易の利益を手に入れ、異民族の騎兵を手に入れて、戦争の目の資金に加えて馬や兵士などの人的資源を確保することにもあった。


 実際に史実の諸葛亮の第一次北伐と共に、雍州の三郡である天水、安定、南安の三郡が蜀に寝返っているが、隴西では游楚が激しく抵抗し、さらに魏の涼州刺史である徐邈がゲリラ戦を行い、諸葛亮の電撃的な雍州と涼州の制圧という戦略は達成されず、曹叡が魏の名将である張郃に三郡の奪回を命じた。


 演技では司馬懿が街亭攻撃を行っているが史実では張郃が数万の兵と共に街亭へと進軍を開始、諸葛亮はその足止めのため馬謖に街亭を守らせた。


 馬謖は街亭の近くの山頂に陣取ったわけだが、馬謖の読みは魏軍は雍州の再度の制圧のために街亭の部隊を可能な限り早くを撃退したいはずだから、短期決戦の力攻めをしてくるはずなので、それを速攻で撃破するということで山に陣取ったんだろうと思われる。


 実際にその頃游楚や徐邈が必死に頑張ってはいるが彼らは寡兵であるし、速攻で救援したいというのは事実であったろう。


 しかし、張郃は馬謖が短期決戦に備えるばかりで、包囲されることを配慮していないことを看破し、水源を抑えて包囲し、あえて力攻めではない持久戦に持ち込むという方策に出た。


 張郃相手では馬謖は完全に経験や実力が不足していたが、これがたとえば相手が夏侯淵であれば十分その役目を果たしたかもしれなかったし、蜀漢でも派遣する武将を歴戦の魏延か呉懿に任せるべきという諸将の意見を聞いていれば、街亭で簡単には負けなかったかもしれない。


 街亭は深い森林地帯で街道以外から進軍するのがかなり難しい場所でもあったから、非情に守りやすい場所で、あくまでも諸葛亮は馬謖に撃退ではなく防御を求めたのだが、そのあたりを馬謖はわかっていなかった。


 そして、史実では蜀軍の撤退後、天水・南安・安定の3郡は曹真と張郃によりあっという間に平定され、逃げ出した南安と天水の太守は重罰を架された。


 蜀漢による北伐でも第一次のそれは、戦役の規模が雍州から涼州近辺にまで及ぶなど、最も大きいものであったが、魏が蜀に対して備えていなかったこの戦役で祁山一帯を占領できなかった蜀軍は、以後蜀に備えた魏との戦いにおいて苦戦を強いられることになった。


 更に徐邈は涼州統治を的確に行い善政もしいていたのでそて以後の北伐では、涼州は手出しできていない。


 しかし、現状では司馬懿が加わり長安と雍州が分断され雍州や涼州への侵攻はたやすくなっているように思えた。


 だが 鍾繇の息子である鍾毓が、長安ではなくその北を迂回して安定へ入り、徐邈と合流して安定の城を奪回したとの報が入ってきたときには孔明は驚愕した。


「まさか領域外から兵を送るとは」


「普通に考えればありえませんな」


「だが曹叡は普通ではない」


「そして困ったことになりましたな」


 そして隴西も游楚の抵抗で未だに落ちていなかったのだが、安定に引き続いて天水も魏が奪回すると雍州の北部萩が奪回し、長安のある京兆尹は曹叡が幷州で放棄された上郡ともとは涼州で現状は雍州の北地を事実上制圧したことで魏は荊州の南陽・江夏・襄陽・南郷・新城・上庸・魏興の北部7郡を掌握していたから長安はむしろ半包囲されてしまったのである。


「これはまずい事になりましたかな……」


「うむ……」


 涼州へ兵を進めるよりも前の段階で孔明の再度の北伐に暗雲が立ち込めていたのだ。

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