曹叡と諸葛亮は戦場にて対峙する
孫権が合肥新城攻撃を諦め、その他の荊州や徐州方面の兵も引かせて、それが偽装退却でないことを確認した曹叡は取って返して、五丈原へと兵を向かわせていた。
諸葛亮の目的は五丈原そのものや長安ではなく、五丈原を抑えることにより長安と陳倉との連絡を遮断し、司馬懿によって雍州西部や涼州を制圧してしまうことであった。
「今のところはうまく行っていますね」
これは第一次北伐と同じで当時の諸葛亮は趙雲を箕谷に布陣させて囮にし、諸葛亮は自ら涼州方面に進撃しているが、今度は自らが囮となって司馬懿に雍州西部や領収の制圧を任せたのであり、電撃戦を得意とする司馬懿は郭淮を撃破して、それに応じ天水は寝返った。
一方その報告を聞いた曹叡は顔をしかめざるを得なかった。
「ふむ、予想より涼州西部への侵攻が早かったか」
かといって呉の孫権が狙っていた合肥や襄陽、淮陰を落とされた場合のダメージは雍州や涼州陥落の比ではなかったから、こればかりは仕方のないところであった。
「かくなる上はまず五丈原の諸葛亮を早急に撃破せなばなるまい。
もっとも我らと戦うこともなく孫権が逃げ帰ったから諸葛亮は愕然としていることだろうがな」
事実諸葛亮は孫権が曹叡の近衛軍と戦うこともなく撤退したことに歯噛みしていた。
「孫権は闘いに持ち込んで時間を稼ぐ程度もしないのか。
致し方ない、我々でなんとかせば」
とは言え呉軍が撤退してしまうと、蜀漢と魏の兵力の差は絶望的なものとならざるを得ないのではあったのだが。
こうして曹叡の近衛軍は諸葛亮の主力軍と五丈原で相対した。
「わざわざここまで朕に足を運ばせたからには少しは楽しませてもらわねばな」
一方に諸葛亮も悲壮な決意を固めていた。
「魏の皇帝自らを戦場に引きずりさせた以上、その首を落とせば魏は崩壊する。
窮地ではあるがこれは最大最期の好機でもあるのだ」
こうして五丈原の戦いが始まる。




