怪しき二人
ケイブガルドを抜け、サンドガルドに足を踏み入れたケントAU団一行は目の前に広がる砂漠にワクワクした。
「ここがサンドガルドか……。」
「とっても暑いわね……。」
「燦燦と照り付ける陽が眩い限りよ……。」
「光属性の為、闇属性が不利なガルドです。」
「ユリアの肌……、青白くなってる……。」
太陽の光でELアビリティ『サイコカムフラージュ』が解け、ユリアの肌が青白く戻っていった。暫くして、一行はオアシスの街を見つけた。
「皆、この街で一休みしよう。」
「ええ。」
「うむ。」
「ついでに情報収集もしましょう。(……また誰かに後をつけられているような気が……)」
「うん。」
一行が街に向かう中、ジジョッタは何者かに後をつけられているような気配を感じた。
街に着いた一行は噴水のある中央広場を拠点に宿を探そうとした際、一人の黒装束で片眼鏡に紳士帽の男性が一行に声をかけてきた。
「初めまして。あなた方がケントAU団ですか?」
「そうで……っ!」
「お待ちください。そもそも何故あなたがそのAU団をご存じなのですか?」
ケントは男性の問いに答えようとしたがジジョッタが制止し、男性に何故ケントAU団を知っているのか尋ねた。
「下半身が馬の人を連れていて、団長が『志』の刺繍のマントをしているAU団と聞いてケントAU団が浮かばない人はいませんよ。ロードガルドのマッスルゴーレムコンテストで二人が入賞した事でケントAU団の名声もうなぎ上りじゃないですか。」
男性はケントAU団は巷で有名であると語り、その名声をとことん褒め称えた。
「おお、流石かなりの身体をしていらっしゃる男性ですね。更に流石な事に連れの女性の方は力強さと美しさを兼ね備えていらっしゃる。あと、シュバリア族の男性も結構筋が良い感じでいらっしゃいますね。」
続け様に男性はケントとアジューリアの身体を褒め称える一方、ムスタンの右手が全く動かない事を不自然に感じ、握手する形で彼の右手を調べた。
「これは……、義手ですね。見た限り欠損のカムフラージュな程度しか機能していないようです。うちのとこなら最高の義手が造れます。それだけではありませんよ。あなた方にも損のない話がございます。いかがですか?」
男性は一行に損の無い話を持ちかけようとした。
「お気持ちは有難いですが……、ご遠慮させて頂きます……。」
ケントは遠回しに拒否した。
「そんな固い事おっしゃらずに!損のない話を聞かない事程の損はないですよ!」
男性は無理強いにも等しい催促をした。
「そう言われたら尚更遠慮……、いや……、拒否させて貰います!」
ケントは相手には遠回しの表現は駄目だと踏み、断固拒否の姿勢を見せた。
「……そうですか……、わかりました……。」
男性は指を鳴らした。すると、鉄仮面に手袋等で肌全体が隠れている黒装束の大柄かつ屈強の執事の男性が突如現れるやいなや、ユリアを捕らえた。
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ユリアが悲鳴を上げた。
「……どういうつもりだ!」
ケントは男性に問いただした。
「わたくし共は何が何でも話を聞いて貰いたいのですよ。拒むなら……、この娘の安全は保障出来ませんね。」
男性は本性を現し、ユリアを人質に取って慇懃無礼に脅しをかけた。
「……わかった……。一応話は聞こう……。」
ケントは承諾した。男性はニヤリとした。
男性はユリアを抱えた連れの大男と共にケントAU団一行を郊外の空き家に連れ出した。果たして、彼らは一体何者なのだろうか?
本編に登場する主要キャラの一人『戦の申し子ベム』のラピス山脈での訓練の一幕を描いた短編外伝『ラピスラズリの夏の夜』を投稿しました。
ご愛顧頂けたら嬉しい限りです。




