大会決勝
女性の部決勝まで勝ち進んだアジューリアだった。決勝での相手は案の定ブリジット族の女性だった。
「あんたも…、ウチと同じブリジット族かい?」
「いえ…、ニュートラルよ。」
「ニュートラル…!待てよ…、女性はウチらブリジット族でもない限りちょっとやそっとの鍛え方でこんな身体になる筈がない!あんた…、一体どうやって鍛えたんだ?」
「他のブリジット族の女性の方に鍛えて貰ったの。マッスルアーマーの訓練でね。」
「なる程…、どうりでその身体ってわけね…。じゃあ、あんたの訓練の成果…、この決勝で確かめさせて貰うよ!」
「望むところよ。」
アジューリアと対戦相手は対戦前に言葉を交わした。
(アジューリアの方はどうなってるんだ…?)
「おお、坊主。決勝に勝ち進めのうて残念じゃったのう。じゃがぬしはまだ若い。まだまだこれからじゃ。」
女性の部の観戦に来たケントに例の小柄で屈強の老人の一人がケントに声をかけた。
「そちらは…、いかがでしたか?」
「二人共予選敗退じゃ…。でも、あんたの連れの青い姐ちゃんがもうすぐ決勝に出るぞい!」
「そうでしたか…。(何!?アジューリアが決勝に…!?)」
ケントは例の二人と一緒に観戦する事にした。
間もなく、アジューリアと対戦相手のブリジット族の女性がステージに登場した。
「女性の部決勝戦の課題は…、これです!」
二人の前に出て来たのは同じ長さの二本の蝋燭だった。
「二人には同じ材質、同じ重さの弓矢かつ同じ距離からこの蝋燭の火を消して貰います!双方消えた場合は蝋燭のダメージが小さい方、一方が消えた場合は消えた方を勝者とし、双方消えなかった場合は延長戦に移行します。」
二人に弓矢が渡された。
「それでは…、構え…、始め!」
双方弓に矢を番え、弓を引いた。お互い15s後に矢を放った。双方蝋燭の火を消すに至ったが、一方の蝋燭が欠けていた。欠けていたのはブリジット族の方だった。よってアジューリアが栄えある優勝に輝いたのだ。
「あんた…、結構な身体ながら気品もあるんだな…。白き女傑の人がやって来たような感じだったよ。」
「わたしがここまで至れたのもブリジット族の女性の方々のおかげです…。有難う…。」
アジューリアと対戦相手は抱擁した。この光景に会場は拍手喝采の嵐だった。
「何と、ニュートラルの姐ちゃんの方に軍配が上がったぞ!」
「これは明らかに番狂わせじゃな。余程の流れでも無い限りブリジット族の女性に勝てる見込みはないからの。」
「ブリジット族の女性ってそんなに強いんですか?」
ケントは例の二人にブリジット族の女性の強さについて尋ねた。レッドガルドで彼女達のフィジカル面の強さは承知している筈だが、彼女達の強さの秘密が気になるが故の事だ。
「ああ、詳しくはわからぬが、彼女達の身体の中にアミノイドを増幅させる何かがある。それが彼女達を屈強たらしめておるのじゃ。」
「なる程…、それであなた方の種族は何でしょうか?見た限りニュートラルではない感じですが…。」
今度は例の二人に自分達の種族が何かを尋ねた。小柄で屈強の老人はニュートラルではまずいない筈と踏んでの事だ。
「良くぞ聞いてくれた!わしらは『ドワーフ』じゃ!鍛冶等の力仕事ならわしらにお任せあれ!」
二人の種族はドワーフだった。
「有難うございました。」
マッスルゴーレムコンテストもいよいよ閉会式が行われる事となった。
本編のスピンオフ、短編小説『黒き将軍王』は将軍王ヨシトルがその異名を世界に誇示したら…を体現したifパラレルです。
ご愛顧頂けたら嬉しい限りです。




